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拾
「・・・・・・ただいま」
と言ってみても家族からの返事は無い。
電気の点いていない廊下。唯一電気が点いているリビングからは微かに声が聞こえている。
それらを無視して自分の部屋に行くために2階への階段を登ろうとすると、再び玄関の開く音が聞こえてきた。その音に反応して玄関へ視線を向けると、塾帰りであろう朔良がいた。
朔良は一瞬俺を見たあと、何もなかったかのようにリビングへのドアを開けた。
「ただいま。母さん、父さん」
「おかえり朔良」
「おら、おかえりなさい朔良。塾はどうだったの?」
「いつも通りだよ、母さん」
「そう、良かったわ。夕飯温め直すわね、座って待ってなさい」
“家族”の会話をしている両親と朔良の声をドア越しに耳に入れながら、俺は音を立てないよう自分の部屋に戻った。




