第1話『鳥かごの中で』
初めましての方は初めまして、それ以外の方はこんにちは、甘味屋です。
今作はオマージュ臭がプンプンしますが、暖かい目で見守っていただけたらな、と思います。
「あ、手が……」
始まりは、その一声だった。
俺の第一声は、あまりにも落ち着いていた。
問題は、『その後』だが。
「手ガァァァァァ!!」
「おいおい、そんなに暴れるな」
「暴れないわけねぇよ! ……ってか誰だよお前!」
「そうだな……寄人とでも名乗っておこうか」
「出てけ! 俺の手から! どこかに消えろ! バケモノ!」
「おいおい、落ち着けよ。ほら、深呼吸だ」
俺は、まるで阿部○ダヲの声がしそうな見た目の、寄人と名乗ったそいつに言われるがままに深呼吸……
「スー……ハー……ってできるか!」
「ほら、次は状況整理だ。今、何があった」
「あ、あぁ……」
……えっと……寝ていて、そしたら、急に目が覚めて……俺の手の中に、何かが潜り込んだ。
……そうか。
……俺、寄生されました。
第1話『鳥かごの中で』
「とりあえずお前、人間の言葉はわかるんだな?」
「ああ、日常的な会話をする分には問題ない。それなりに長生きしてるから、それ相応の知識もあるぞ?」
「そんなんいいから、とりあえず、俺の腕から出てけ」
「断る」
寄人と名乗ったそいつは、断固拒否といった様子で、俺の提案(?)を拒否する。
「は? じゃあ、俺は腕、切断するよ?」
「無駄だ。お前が腕を切るなら、俺は今度こそお前の脳に寄生する」
……つまり俺、これから一生バケモノと共に過ごさなきゃいけないのか?
それだけは、本当、嫌なんだけど。
「何とかなんねぇかなぁ……」
俺は、そう言って右手で頭を……かけなかった。
「おい、右手は不便なんだが……」
「諦めろ。俺が支配している間は、この腕は使わせない」
「なんでだよ……」
しかもこいつ、やたら頑固だ。
もう、本当嫌だ。
出来ることなら、いつもの生活に戻って欲しい。
「おい、遅刻するぞ?」
俺の右手は、呑気にそう言った。
……マジかッ!
「やっべ! 遅刻する!」
俺はそう言って、扉をガタンと開ける。
しばらくして気づいたが、鍵、開けっ放しだ……。
不定期更新になりそうです。
よろしくお願いします。
注:この作品は短編ですw