出産
子を孕む事に意味など無く、命を創る事にも意味など無い。
私は甘やかな温度で手のひらを上に向け、ゆるりと指先を折り、皿を作った。
柔い温度に誘われて、シャボン玉のように儚いそれが皿の上に着床する。
微かな胎動を孕む手のひらを自覚を始めた母性に任せ、私は年相応にきゃっきゃとはしゃぎ回っていた。
おかーさん、おかーさん。
無邪気に全身に笑みを纏い、衣服が汚れる事も厭わずに母を呼んだ。
おかーさん。
小さな手の平がボールを抱き、小さなその身を無邪気に転がす。
土が私の全身を汚し、私はここに居場所を見出した。
その腹のうちで、静かに胎動が、少女の子宮の闇を見据えた。
お母さん。
少女の円い瞳に影が差した。
大きな影が、少女を包んだ。
少女の細い身体が、ふわりと浮く。
何倍もの大きさに膨れ上がった命は、絶えず胎動を刻んでいた。
人形が、床にバラバラと落ちていく、音が響く。
お父さんが。
少女は目を閉じて、命は目を剥いた。
退けと、無慈悲に、少女の道を食い破り、ずるりと命は這い出てくる。
-------------------------------------------------
ここまでで飽きた。