お人形さん
血だまりが広がっていた。
地平線のように広がる紅い景色の真ん中で、ぐったりと重い身体を横たえる。
空も薄赤く、灰色がかっているそれは、夕立の中で無理矢理に輝こうとする夕焼けのようだった。
ぴちゃりと浸る右頬、口端を舐めると、薄い鉄の味がした。
虚ろな目でぼんやりと視界を据える、全身が心臓になったかのように脈打つ拍動に、ぴくぴくと指先が動く。
起きようとも思わない、どうせ痛いし。
唾液を飲もうとも思わない、どうせ痛いし。
瞬きしようとも思わない、どうせ痛いし。
女の子一人にここまでのことをされるのだから、全く世の中というのは理不尽である。
無様にぺたんと床に座り込み、怯えた目で眼前の少女を見上げる俺はきっとその少女よりも素晴らしくか弱い女の子でいただろう。
そのか弱さに応えるように、欲に任せギラつかせた目で右手を振りかぶる少女は、素晴らしく力の象徴をその細い身に呈していた。
何を馬鹿なことをしていたのだろう、立ち上がれば良かったのだ、立ち上がって、自分も右手を振り上げれば良かった。
少女は、これから始まるであろう恍惚の宴に獣のように胸を躍らせているのが見た目だけで嫌でもわかった。
俺は、愛されたかった、子供がその時、甲高い声を上げて泣き出した。
俺は目を瞑った。