眠る君
透き通る色は黒に満ちる。
無駄な息を吸い、吸えず、吐く。
吐いて、ごぽりと鼓膜を揺さぶる音を、陰鬱にくぐもらせ、響かせる。
動く気にもなれない、指先一つ動かすことも億劫だ、ただただ表せる世界の全ては、「億劫」だった。
何時しか息も忘れて、おれと云う事すら忘れて、眠りに藁を見る。
それでも一つだけ、億劫を凌駕して見せるおれの意地が、この懐に在る。
ドロドロに混ざり、蜷局を巻いて、絶えず毒の様な息をふしゅうと吐き出し続ける、何とも取れない雑音、混濁。
それがぐるるるると威嚇の様な呻きを漏らす度に、おれは心臓に抱いた其れを、強く強く抱きしめ、呑み込んだ。
抱きしめれば抱きしめる程に心臓に食い込み、締められ、抉られ、ぶしゅうと血やら何やらがおれから漏れる。
おれはその飛び出す自分さえも夢中で腕を掻き、懐に取戻し、慌てふためいて眠りを続けるのだ。
嗚呼なんて滑稽だろうか、この嘆きは一体何度目だ。
嗚呼、この無様な地獄は一体何時終わるのだろうか、いや終わらなくていい、終わらなければ、おれは永遠にこの無様な繰り返しを夢に落ちることができる、落ちてていいんだ、おれは救われる。
それはどんな我が儘か、偽善に似せた醜悪か、それはおれが一番よくわかっていて、おれが一番ひねくれている。
うるさいな、放っておいてくれよ、おれは今とても幸せなんだ。




