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双白の月夜に

目の前が白く染まる。何もかもが…

やがて、白い光の奔流は収まり、目の前には白い扉が現れた。小さな曇りガラスの窓の下に、『面会謝絶』のプレート。辺りを照らす無機質な蛍光灯。微かに、だけど確実に鼻腔の奥を刺す薬品の匂い。此処は…

「そう、病院…それも集中治療室。」

心なしかマキねえちゃんの声に、変な響きが含まれてるような気がする…これは怒り?いや、悲しみ…?

「部屋に入る前に決めて?私と逝く?それとも戻ることにする?」

えっ!?いきなり究極の選択になるの!?別に、もう少し後でも…

「自分を見てからでもいいんじゃ…」

「ダメなのよ。」

妙にきっぱりとした答え。一体なんで?

「身体が治る保証なんてないの。わかる?痛みくらいならまだいいけど、後遺症…障害が残るかもしれないのよ。」

まあ、そりゃそうだけど…それなら尚更、身体を見てからの方が…

「身体がヤバいから死ぬ、大丈夫だから生きる、なんて都合のいい話は無いの。結果として、一度身体に戻るけど、かなり苦しむコトになるわね…」

うーん、それが『ルール』らしいけど…

「でも、今逝くなら、身体には戻らないで、身体がその機能を止めるだけ。苦しまずに済むわね。」

そうか…って、なんか僕を『一緒に逝く』ように誘導してる?

「………決めた。戻ることにする。苦しむかもしれないけど、まだまだやりたい事もあるし。」

僕は、答えを出した。もう少し“人生”ってやつを過ごしたい。そして、白い扉に手をかけた。

「入るよ、ねえちゃん…」

振り向いたら、ねえちゃんは居なかった。まさか、もう『逝って』しまったのかなぁ?取り敢えず、僕は部屋に入ってみた。

「!?な、何してるの?」

部屋の中にはねえちゃんが既に入っていて、僕の身体に繋がれた管や機械を外そうとしていた。

「…許さない」

ねえちゃんの声は低く、怒りに満ちていた。

「ここで帰したら、全部が無駄になるの…」

えっ?許さない?それに、無駄になるって…?

なんだか、ねえちゃんの動きがおかしい。周りには誰もいないのに、身動きがとれないみたい…

「ジャマするなああぁっ!私は、私は…ッ!」

『ダメだよ…マキ。タクちゃんはまだ私たちとは逝けないの。だから、タクちゃんは私が守る…』

同じ声が、でも、ずっと穏やかで優しい声がねえちゃんから聞こえた。

「誰?…もう一人誰か居るの?」

僕の質問に、声が応えてくれた。

『私は“まゆき”。あなたのおねえちゃん。』

えっ!?だって、お姉ちゃんなら此処に…

『そうね。でも、今タクちゃんの前に居るのはマキでしょう?』

そういえば…そうだ。じゃあ、マキはお姉ちゃんじゃ無いってコト!?

『マキもまゆきもタクちゃんの姉。同じ人物。でも、違うの…』

何かよく分かんないけど…どういうこと?


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