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亡霊の騎士



 グスタフは重い痛みと共に目覚めた。

 既に甲冑は外されていて見ると肩が真っ赤に腫れ上がっている。

「動いてはいけません、ローゼンマイヤー卿」

 そう云った救護員の背後から闘技場が見え、あの銀の騎士が目に入った。

「あれは……」

「ですから、動いてはなりません」

 もう救護員の声など耳に入らない。何故ならグスタフは、あの甲冑が誰のものなのか思い出してしまったのだ。

「誰じゃ、誰があの甲冑を着けている?」

 その場に居るものは皆判らず首を横に振る。

「あれは……若き日のべリアル王が竜討伐に行く際身に付けていた甲冑じゃ! 何故そのような禍々しいものを……」

 その場に居たものは全て亡霊を見るような目で闘技場を見る。

 あの銀の騎士は若き日のべリアルの亡霊?

 不老不死となった我が身を滅ぼそうとしているのか?

 誰もがそう思った。


 蒼白となり、力が抜けたべリアルは事もあろうに剣を手離してその場に崩れ落ち、銀の騎士は一時剣を離すが、べリアルに馬乗りになり再度剣をあてがう。

「助太刀の騎士、名乗りをあげよ」

 エルヴィンが云うが、騎士は黙ったままだ。

 やがて我に返ったべリアルが必死にもがき、銀の冑に手をかけた。

「そんな筈は……この甲冑が無傷で此処にある筈が無い。胴は裂け、冑は捨て置いた。あの竜の亡骸と共に」

 必死に冑の留め金を外そうとするが、恐怖と混乱で手が震え、うまく行かない。

 不老不死の王がこのように狼狽えるとは。エルヴィンは千載一遇の好機にも関わらず、その場に立ち尽くすしかない。

「おのれ、その正体、余が暴いてくれる」

 やっとの思いで冑の留め金が外れ、震える手でそれを押し開くと、べリアルにだけその者の顔が見えた。

 暫し一段と驚きの表情を張り付かせ、一段と混乱していた様子だったが、我に返りこう云った。

「そなたであったか、よい、余を一番恨んでいるのはそなたであろう。さあ、余の首を斬るがよい」 

 エルヴィンは気付いた。

 その甲冑の中に誰が居るのかを。

 しかし、あり得ない。

 その者が此処にこうして居るのはあり得ないのだ。

 白銀の騎士は冑の留め金が外れて居るのもいとわずに、高々と剣をかかげ、そしてそれを降り下ろした。

 その衝撃で自らの冑は外れ、露になった素顔には返り血を浴び、そしてそのまま気を失ったらしく、その場に倒れた。

 

 

 

 

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