4-e.ここまでの解説
この章、切りがいいのとちょっと長くなりすぎてきたので、ここらで一回仕切り直したいと思います。という訳で、ちょっと中途半端に感じるかもしれませんが、ここまでの人物紹介/用語集/解説などの追記分です。
例によって、本文だけで十分という人は次の話に進んで下さい。
●アカシア【神名/世界名】
アカシアとは、この世界そのものを意味している言葉であり、この世界に存在している様々な法則や摂理、現象やルールなどの集合体を表現した言葉であるとされており、そういった自然や世界そのものを表現した言葉でもあるとされている。ゆえに、この世界を表現する際には、人々は世界と呼ぶ事になる。
そんなアカシアは世界を創ったとされる創造神という定義付けもされており、そのアカシアが記憶しているのだろう様々な自然界のルールは別名で『アカシアの記憶』とも呼ばれており、様々な教典の中で『アカシアの書』と名付けられている。
そういった神なんだか、書物なんだか、単なる情報やルールの集合体なんだか、今ひとつよく分からない曖昧で漠然とした存在として定義されてしまっているアカシアであるのだが、定義そのものも漠然としており、どこかあやふやで説明不能な存在のためか、決まった形として定義することも叶わず、結果として至高の存在としての実在は人々が認識しているにも関わらず特に神殿や教会などで信仰などはされておらず、教典なども存在していない。
その代わり、この世界そのものがアカシアであるという根本的な部分の共通認識を基本の教義としており、日々の祈りの際に己の信じる神と供に、世界そのものへ感謝の祈りを捧げるという行為が一般的にはアカシア信仰のあるべき姿だと認知されており、その教義も難しい事は何一つ定まっていないために、ただ他の信仰の教義と同じく『共に手を携え、助け合って生きよ』というただ一文のみとなっている。
●魔王クリムゾンアイ【名前】
厳密にいえば名前などではなく通り名ということになるのだろうが、人々は魔王のことを真紅の瞳と呼んでおり、その別名のとおり極めて珍しい真紅の瞳が最大の特徴だったとされている。
クリムゾンアイはかつて大陸を支配していた魔族の頂点に立っていた存在であり、その絶対的な力による支配は、他のあらゆる種族の抵抗を許さず、大陸史に長い暗黒の時代を刻み込んだとされている。だが、その一方で大陸の中央……。現在は死の荒野と化してしまっているが、大陸の中央部に自らの居城を構え、その場所にきらびやかな魔法文明を誇る大都市を築き上げていたとされている。
その王都ノーザンクロスは、現在の王都であるクロスロードなど足元にも及ばないレベルの文明と繁栄を誇っていたとされているのだが、人魔大戦末期の魔王率いる魔族軍と人類との最終決戦の場となったことで、最後には追い詰められた魔王が街ごと反乱軍(人間軍のこと)を道連れにして跡形もなく吹き飛ばしたとされており、その跡地には戦いの傷跡というべきか、草木の生えることすらない死の荒野だけが残されている。
●共通魔法【スキル名】
一般的に四大属性の魔法を使える者が魔法使いと呼ばれるが、それら属性魔法に含まれない特殊な日常生活に役立つ魔法の数々は共通魔法と呼ばれており、別名で生活魔法とも呼ばれる事になる。属性魔法の行使には素質が求められるが、共通魔法の行使には最低限の魔力と、それを操る能力だけが求められ、属性魔法が使えない者でも共通魔法を使いこなす者は多い。
エルクが迷宮内で大コオモリ相手に使っていた魔物の死体の残留魔力を体内の魔石に吸収させる魔法である分解加速も共通魔法の一つであり、他にも対象に明かりを灯したり、遠方にある物を引き寄せたりといった四大属性に当てはまらない系統の魔法として定義されている。
さて。そんな共通魔法だが、これに唯一分類されている攻撃魔法としては魔力矢が有名である。だが、これは純粋に魔力を束ねて形成した矢を対象に向かって飛ばすといった魔法であり、総じてコモンはこのような純粋な魔力を行使する形の魔法が多いのだが、各種属性魔法のように消費魔力と得られる火力の変換効率が極めて高い魔法がほとんど存在していないため、好き好んで共通魔法で戦おうとする物好きは居なかったりする。
●黒い血【別名】
魔族の血を引いていることを、多くの場合に『黒い血を引いている』と表現されるため、意味としては魔族の血が混じっていることを揶揄する言葉となる。黒い血を引いている亜人は魔人と呼ばれ、特別に強い肉体や強大な魔力を宿す事が多いのだが、その血がもたらす力は時として器である肉体に必要以上の負荷をかけることになり、その結果として魔力が器に収まりきらなくなって暴走状態に陥る魔力暴走を引き起こす原因にもなっている。
●悪魔憑き【症状名】
亜人、特に魔族の血を引く魔人系の亜人に多い特徴なのだが、先祖から受け継いでしまった魔族の力に、混血によって薄まってしまった魔族の血のせいで脆弱になった肉体が耐え切れなくなり、結果として魔族の力が暴走状態に陥る事がある。多くの場合に、その状態に陥った魔人は理性をなくして本能のままに暴れまわってしまうので、その獣のようになってしまった姿を指す言葉として、悪魔が宿った……。すなわち悪魔憑きと表現するようになった。
この大陸では悪魔を絶対悪と定義し、これを討つ事を国民の義務と定めている。そのため、魔族の血を原因とする“悪魔憑き”が出た場合には、古来より戦う力を持った者達が無償で協力し合い、速やかにそれを討ち取って事態を収集するという事が『悪魔狩りの義務』の一環として国法によって義務化されていた時代が長かったのだが、最近は叩きのめすだけに止めて無力化し、命までは取らずにエレナの司祭による茨の輪冠を施して魔力を封印し、その力を世のために役立てるために再教育するという制度が実施されており、悪魔憑きだからといってすぐに殺されることは少なくなっている。
●獣人族【種族名】
獣系の魔族の血を引く魔人の一種で、いわゆる獣の力を宿した亜人という扱いになる。
比較的大人しい猫や、高い索敵能力を秘める犬、それに加えて高い戦闘力を持つ狼の他にも、存在そのものが凶悪なレベルの戦闘力と特殊能力を併せ持つ虎などの獣人族が確認されており、それぞれの獣の特徴(猫なら夜目と高い隠密性、犬や狼なら鋭い嗅覚による探知・探索能力と高い戦闘力、虎は猫の隠密性に加えて凶悪な筋力と威圧などの特殊能力など)を生かした能力を発揮する事になる。
獣人族は『人の形をした獣』と表現するのが分かりやすい外見をしており、人の姿と人の形をした獣の姿を行き来する形で変態を行う事で知られている。また、人の姿から獣の姿に近づけば近づくほどに戦闘力が高くなることでも知られており、二足歩行する獣の姿に完全に戻ってしまった時には極めて危険な力を発揮することになる。逆に、その姿に変態仕切るには多少なりとも時間がかかるので、そうなる前に仕留めてしまうのが獣人族と戦う時のセオリーだとされている。
各種族の力関係としては猫の上位種族が虎、犬の上位種族が狼となっておりぞれぞれの群れにはリーダーも居ることから、そういった個体は族長などと呼ばれる事がある。
●ナイツ【チーム名】
かつてクロスロードのみならず大陸史上で最強とされていた冒険者達のグループであり、主なメンバーは五名で構成されていたとされている。
銀剣のエルリックと魔槍士アーノルドの最高ランク冒険者二名を筆頭に、王都の盾の別名で呼ばれていた騎士団所属の重騎士ハインツ、クロスロード東区のヘレネ教会の次期司祭と目されていた筆頭修士アリオス、そして知識の神マギの寵愛を受けていると噂される魔導師ギルドの主席魔導師ロアといった、そうそうたるメンバーが名前を連ねていた。
そんな最強のチームは、ある日突然、メンバーが散り散りになり二度と一同に会する事はなかったとされており、その日がチーム『ナイツ』の解散となった日だとされている。その日に何があったのかは誰も知らないが、アーノルドが言うには痩せぎすの無表情な能面女に負けて土下座する羽目になったことが原因らしいのだが……。
●エレノア【人物名】
契約を司る茨の王エレナに使える司祭で、エレナの象徴である契約と制約を示すかの如く、細めの黒鉄の鎖を無数にぶら下げた独特の司祭服を身につけており、その鎖でもって対象者にエレナの封印を施し、茨の刺青を刻む事になる。黒鉄は別名で『契約の鉄』とも呼ばれており、魔力の込められていない状態では軽く、脆いといった性質を持つのだが、エレナの司祭によって制約の魔力を込められると、その名の通り黒くて重くてひどく硬い重金属に変質してしまう。その魔力の込められた黒鉄の鎖を巻き付ける事で対象に茨の刺青を刻み込み、制約による呪いをかけることになる。
この呪いを解除出来るのはエレナの司祭だけであり、呪いを付けたり外したりするのがエレナの司祭の主な仕事であり、仕える神の性質によるものか司祭の中では唯一、治療魔法を不得意とする司祭でもある。