5-16.降り注ぐ横槍
やはり決め手にかけるな。
コツンとペン立てに羽ペンを放り込みながら、男の口からため息混じりの声が漏れる。
「やっぱ、十年がキーワードなんだよな……。ってことは、だ……。あの事件絡みってことは確定って事になるんだよなぁ……」
それは約十年ほど前の出来事だった。
大陸の東の果て。人類支配領域の東端にあるイーストレイク湖のほとりに広がっている最前線にして最果ての街イーストレイクでのこと。
そこで一晩の間に、実に数百人もの住人が、突如として行方をくらませてしまうという怪事件が発生したのだ。
何故、突然、行方をくらませてしまったのか。
それを説明できる者は誰もおらず、手がかりすらも残すことなく、その日の夜までごく普通に生活していたはずの人々が、前兆や予兆、痕跡や手がかりすらも残さぬままに。……ある日、いきなり、全員が姿を消してしまったのだ。
だからこそ、その事件は、こう呼ばれていたのだろう。
「失踪事件、か」
その事件における被害者という表現が正しいのかどうかすらも未だに分からないままに、その怪事件の犠牲者は数百人にのぼるとされており、失踪者達は何故か犠牲者と呼ばれてしまっていたのも、何かを暗示しているようにも思えてしまっていたのかもしれない。
そんな事件の中で姿を消した失踪者の数は、一節には三百数十人にも及んだとされており、未だに正確な数が把握出来ていないと言われている。
それでも、その事件での失踪者の中には老人や赤子、女子供までもが含まれている事から、無差別に対象が選ばれた可能性が高いと考えられていた。
そして、これは未だ未確認な情報ではあったが、その事件の中で、普通の手段では身柄を拘束することすら出来ないであろう超級レベルの腕利きの剣士……。人類種族から生まれた数少ない剣聖位の認定を受けていた戦士までもが、その夜を境に姿をくらませてしまっており、もしかすると事件に巻き込まれて失踪者の仲間入りをしてしまったのではないかとも、一節には噂されていたのだという。
「……全てがあやふやで、まともな情報が殆ど残されておらず、確実な手がかりは、たった一つという有り様で。確定情報も、また一つだけってか」
突然、姿を消してしまった住人達に共通する点などは特に見当たらず、ただ単に、住人の失踪事件が発生した地域に全員が住んでいただけらしいという、たったそれだけしかない“事実”だけが、唯一といっていい曖昧でない確定された情報、あるいは揺るぎない事実として存在しており、それらしい共通点もそれだけだったために、被害者は住んでいた場所によって選ばれたのだろうと一般的には考えられていた。
だからこそ、そこから予測が立つ部分もあったのだろう。
その日の夜、その地域一帯の全ての人間を対象とした“何か”が偶発的に発生して、それに巻き込まれた事によって人々は姿を消してしまったのだ、と。
……そう、考えざるえない状況ではあったのだ。
「種族を区別せず、善悪も問わず、老若男女すらも関係なく。ただ、全員を容赦なく“失踪”させた“何か”がおきた、か……」
その結果、人は誰も残らなかったが、何故か家畜は全て生き残っていて、民家で飼われていた鳥や犬といった動物達も残されたままだったという。
そんな奇っ怪な怪現象なり怪事件が発生したのは、比較的夜遅い時間帯であったらしく、失踪者の多くは夕食の最中に家を出て、そのまま行方が分からなくなってしまっていた。
多くの家に、まだ食事中だったのだろうと思われる中途半端に中身の残った食器類などの食事の痕跡が残されたままになっていたらしいのだ。
「つまり日が沈んでしばらく経ったあたりで、何かがあって、失踪者達は全員が家を出て行ったまま帰ってこなかったって訳だ」
果たして、そんな食事をとっていた最中にも関わらず、数百人もの人数に及ぶ、広い範囲に点在していた人間達を全員、屋外におびき出して、そこから連れ去るような非常識な真似が、本当に出来たと言うのだろうか……。
「もし、そんな事が本当に出来たのだとすると、それを実際にやらかして住人達を連れ去ったのは、悪魔か神に違いない……。ねぇ」
そんな、全力でさじを投げながら全面降伏している姿が見えすぎてしまう結論に至ってしまった当時の捜査員達の気持ちも分からないでもなかったのだろう。
当時には分からずとも、十年経った今なら分かってしまっている事もあったのだ。
それは、例えば数百人という大規模な人数が、まとめて何処かへ連れ去られたと言うのなら、必ず道中に、それらしき痕跡が残るはずなのに、そういった物が何一つ残されていないといった情報などの事だった。
これほどの大人数が移動していったはずなのに、その姿を誰も見ていないし、足跡などの痕跡などが何処にも残されていなかったという点もおかしかったし、この事件のあった後に、周囲の村々でも、そういった大人数の移住や移動などが確認出来ていなかったのだから。
……では、この村から消えた数百人もの人間は何処にいってしまったというのか。
「報告書には、当時、酷い扱いをされていたらしい亜人の奴隷達を森に連れ戻しにきた大森林の向こう側の連中に、報復として全員が連れ去られた可能性があるのではないか、とかロクに根拠もなく書かれてたりするが……」
──うん。ないな。
それは単なる直感ではあったが、男は、その意見を『単なる邪推、あるいは被害妄想』と切って捨ててしまっていた。なぜなら……。
「亜人奴隷の奪還が主目的だったなら、それ以外の人間は単なる足手まといだったはずだ。あるいは、障害物同然の邪魔物扱いか。……仮に、報復に重石を置いた奪還作戦で、一部の人間を報復手段として拉致するのが目的だったとしても、やっぱり老人や幼すぎる子供まで、まとめて浚っていくというのは色々と理屈に合わない気がする」
ろくに言葉も通じないような相手を何百人も拉致して連れ去るなど、その凄まじい労力に対する旨味としての利益はいくらなんでも薄すぎるだろう、と。だから、ありえないと断じてしまっていた。なぜなら、連れ去る価値が薄い人間が含まれ過ぎていたからだ。
──これじゃあ、いくらなんでも理屈に合わない部分が多すぎるし、他所への移動の痕跡が全く残されていない時点で連れ去りが本当にあったとはどうしても考えにくいからな。……だからこそ、どれだけ不条理に思えても、本当に“失踪”したんだろうと考えてしまうのが、あるいは最も理屈にあっていて矛盾が少ないって事になってしまっているんだろう。
最終的には、そう結論付けていた。
「もっとも、ちょっと考えただけでも無理があるのが分かるような説を声高に唱えて、それを上からたしなめられなかった辺り、この地域の亜人への敵愾心の高さってヤツが分かるな」
──だけど、それは現実問題としては、やっぱりありえなかったんだろうし……。仮にありえたとしても、やはり、当時の王国にとっては、あってはいけなかったはずなんだ。
だからこその、その結論であったのだから。
「真実がどっだったにせよ、答えは『ありえない』にしかならなかったって訳だ」
人魔大戦末期に起きた旧王都ノーザンクロスの崩壊と消滅から、ようやく人々は立ち直り、大陸第二の都市だったサザンクロスに王都を移し終え、そこをクロスロードと改名までして、どうにかこうにか新しい国を立ち上げようとしている真っ最中だった。
そんな大戦末期から新王国建国へと続く混迷期の終わりと、新しい時代の始まりを迎えようとしていた矢先の出来事だったのだ。
ようやく建国が成ったとはいえ、未だ王都の周辺エリアでさえ混乱と狂騒から未だ立ち直りきってはいなかったし、そんな混乱期の真っ只中に起きた出来事であったのだし、ましてや王都から遠く離れた大陸の東端……。亜人との小競り合いが未だに続いていたとされている対亜人種族戦線における最前線地帯となるのであろう大陸の東部エリア。しかも大森林に程近い街で起きた事件だった。
ようやく魔人種族との大規模な戦争が終結し、人類の王国再建への道が開きかけていたというのに、ここで数百人という大人数が亜人の手によって強奪され、森の向こう側に連れ去られたとなったなら、ようやく鎮まりかけていた戦の火が再燃しかねない……。いや、絶対に勝てないと思っていた魔人種族を打ち倒した直後だったからこそ、ここで戦火を再び興してはいけなかったのかもしれない。
「言いがかりをつけて戦を仕掛けたかったのならともかくとして、何としてでも戦火の再燃を避けたかった王国としては、この事件の犯人を亜人と決め付ける訳にはいかなかったのだろうし、仮に犯人が亜人であったとしても、それを突き止める訳にもいかなかったんだ。だから、まともに調べさせなかった可能性もあるってことか……」
これを亜人種族の仕業だと短絡的に決め付けるには状況が変過ぎたし、色々と説明できない部分も多すぎた。それこそ『突然、失踪したんだよ! 数百人全員が!』と無理やりにでも納得して結論ずけてしまった方が、よほど理屈に合ってしまうような、そんな奇妙な居なくなり方をした事件であったのだから。
こんな薄気味の悪い出来事など、まともな神経をしていれば、自分から関わり合いになりたい等とは、決して考えないはずだった。
それなのに住人達の不安を解消するのも騎士の仕事だという建前の元で、こんな奇妙な出来事が起きた地域を調べるように命令されて、未だに安全が確認されていない状態のままの事件現場である一帯に立ち入って、そこを詳しく調べることを強要されてしまったのだ。
現場の人間の気持ちや心中など察するのは難しくもなかったのかもしれない。
それこそ、やる気など湧いてくるはずもなかったのだろうし、さっさと手を引きたがっていたのだろうことも見て取れてしまっていたのだから。
「……騎士の誇りと意地と安月給の三つだけじゃ、命まで賭けるにゃぁ、ちと辛かったんだろうしなぁ」
恐らくは二次的な被害を防ぐためでもあったのだろう。
当時、その事件が発生した地域全体が危険域として扱われていて、立ち入りそのものを厳しく禁じられていた。
そんな中で、たった数人の捜査官で数百人分の家屋を調べて、犯人の痕跡や、姿を消した住人達の足取りや、行方の手がかりとなりそうな物を探し出せなどと言われていたのだ。
いくらなんでも無茶苦茶だと文句を言うくらいは許されるはずだったし、早々に「こんなの無理に決まってるだろ!」と音を上げて、全力でさじを投げてしまうのも当然であったのかもしれなかった。
「……狙い通りの結果を導き出すためだったのだろうとはいえ……。酷い体制だな」
当時の捜査資料を見る限りにおいては、こんな酷い捜査体制にも関わらず、当時の事件を担当していた捜査官達は、自分達に出来る事を生真面目に全力でやっていた様であったし、可能な限り精一杯、手を抜かずに踏ん張っていたように思えた。
「これで腐らずにやれていたって事は、相当指揮官が頑張ってたか人望があったか……」
まあ、どれだけ捜査員達が真面目に頑張っていたとしても、根本的に人数そのものが少なかったために、出来たことの方が圧倒的に少なかったのだろうが。
「これが原因だったのか、事件調査の担当に抜擢された奴は、捜査の終了と共に騎士団を脱退しているし、それからしばらくして、この地を後にしている、か」
恐らくは部下達からの「もっと上に人数を増やしてくれって言ってくださいよ」といった突き上げや、上からの「さっさと諦めて言われたとおりの結論を出せ」といった大小さまざまかつ、有象無象のプレッシャー。それに加えて被害の大きさに怯えた住民達からの心無い非難や中傷、苦情。もっと大人数で真面目に調べろといったクレームの処理などまで、全てを一身でこなす羽目になったのだろう。
そんな中で心身ともに追い詰められ、心を病んでしまったのではないか……。そう、十年後に「その後」の事についてまでまとめられた捜査資料に綴られていた程である。
「……ん~。こいつに話を聞いてみてぇなぁ」
クロスロード王国王宮騎士団東部方面隊所属。イーストレイク支部隊、元部隊長ヘクター・ノエル。それは、十年近く前の怪事件において、全ての責任をかぶせられて、詰め腹を切らされる形で引退に追い込まれた挙句、その数カ月後に己の生涯を捧げて仕えていた故郷からも去らざる得なくなったという男。
そんな、ある意味においては、最大の犠牲者とも呼べそうな男は、当時まだ三十になったばかりだったという。
──あれまだ十年程度しか経ってないんだ。騎士団の支部隊長まで務めていたような男が、四十かそこらで老衰なんぞで死んだりはしないだろう。……案外、探せばまだ生きてるんじゃないか……?
「探してみる価値は……。ある、よなぁ」
そうつぶやくと、おもむろにだらけていた体を起こして、勢い良くサラサラと羽ペンを動かして上申書を書き出すマークスである。
そんな時の事だった。
コンコン。
おもむろに部屋の扉がノックされていた。
「はいよぉ~」
「……私だ。少し良いか」
「ええ。鍵は開いてますよ」
そう答えた男の言葉から暫くして扉は音もなく開いていた。
その扉が開くまでの僅かな間が、訪問者の抱え込んでいる迷いの大きさを暗に示しているかのように感じられてしまっていたのかもしれない。
「おや。こんな夜遅くに何の用です、隊長?」
そう皮肉げに歪められたマークスの笑みを向けられたアレスは、無言のままに、扉の外に立ったままだった。
「……つっても、こんな夜遅くに、わざわざ隊長自らが体を運んでまで面倒臭い案件を抱えてる部下に会いに来たんだ。要件なんて、自ずと知れるってなモンですけどね」
──どーせ、上から何か言われたんでしょ? たいちょ。
言葉にせずとも伝わってしまう皮肉にまみれた言葉にわずかにアレスの表情が歪む。
「H38の取り調べは直ちに中止。今月末で釈放だ」
それは断定口調であって、既に決定済みという意味でもあったのだろう。
ちなみにH38とは、言うまでもないのだろうが、クロスのことである。
「……今月末ってことは、まだ残り時間は十分あるんじゃないですかね」
おそらくはアレスが目一杯抵抗して、粘りに粘って勝ち取った拘留期限の延長がソレだったのだろう。限界まで拘留期限を引き延ばした結果が、この決定なんだと思われた。
そして、逆に、取り調べそのものを禁じられたことが、その勝ち得た時間の代償だったのだとも理解していた。
「……まだ十分に取り調べてないと思うんですけどね」
「未だに何の容疑なのかすらも定まらないのにか? そんな宙ぶらりんな状態で、いつまでも拘留し続けておける様な相手じゃないのは、お前も分かっていたはずだ」
そう暗に、自分達の一番の泣き所であった『何の罪について調べているのか分かっていない状態である点』を突かれて、正当性が薄いと押し切られた事を示してみせる。
だが、これまで取り調べた感触としては、未だに自供らしき物は取れていないにせよ、間違いなくクロスは何かしら後ろ暗い過去を抱えていて、それを偽っているのは間違いなく、その嘘にまみれた作り物の過去の裏側で、何かしらの犯罪に深く関わっていたのは間違いないはずだと感じていた。
そして、その犯罪とは、イーストレイクで過去に発生したとされている謎の集団失踪事件におそらく何らかの形で確実に繋がっているはずだったのだ。
少なくとも、イーストレイクの抱えている大きな闇に。未だに表に出てきていない何かしらの事件に深く関与しているのだけは間違いないと考えられていたのだが……。
「……未だに何の容疑で拘留されているのかを上に報告出来ていない状態では、このまま拘留し続けて取り調べるのは無理という判断だ」
そう暗に、何時ものように真っ先に拘留してから、尋問と取調べによって容疑を固めて行けば良いとしたのは、いささか自分達の先走りすぎだったとミスを認めたアレスであったのだが、ここで上からの圧力に負ける形で釈放としてしまっては、おそらくこの件には二度と触れることが出来なくなるという確信じみた予感があったのだろう。
マークスは強い口調で否を返していた。
「俺は反対です。アイツは……。あの小僧を、解き放つべきじゃない」
「……そんなに奴は危険なのか?」
「それは、まだ分かりません。だけど、あいつの抱え込んじまってる闇は……。ちょっと説明が難しいんですがね。……あいつは、まだ救われてないんですよ。……たぶん、自分じゃどうにもできないところまで行っちまってる。もうにっちもさっちもいかねぇ、まるで全身を鎖でグルグル巻きにされてるみたいに、身動きすら出来ねぇ状態って奴になっちまってるんですよ。……だから、誰かが、あいつを仕留めてやらなきゃいけないんです。あの小僧を苦しめている心の闇を。あいつが腹の奥に抱え込んじまってる罪を暴き出して、白日の下に晒してやらなきゃ駄目なんです。……それだけが、あの小僧を助ける事ができる方法なんですよ」
それは罪を憎むという言葉ですらなく、ただ己を苦しめ苛み続ける罪悪感から開放してやりたいと願う、他者救済の願いというべき純粋な想いであり、だからこそアレスもまた無闇に却下することが出来なかったのかもしれない。
「時間はどうにか取り付けれたが、逆に取り調べは禁じられた。……どうする?」
「最終日なら取り調べても問題ないでしょう。どうせその日には釈放になるんだ。……まあ、上から文句は言われると思いますがね」
そうウィンクしながら「つーわけで、頼みますよ。たいちょー」とばかりに軽い口調で頼んでくるとんでもない言葉に、アレスの顔にも思わず笑みが浮かんでしまっていた。
「……文句を言われるのは俺なんだがな」
「俺たちの正義を成すための尊い犠牲だと思って、ひとつ、頼んますよ」
「俺たちの……? お前の正義じゃないのか? ……だが、まあ、良いだろう。やり方はいささか気に入らんが、それについては任されてやる。……だが、あの小僧を本当に落とせるだけのネタがあるのか……?」
その計画において一番肝心になる情報について事前に確認されるのは当たり前といえば当たり前の話であったのだろう。だが、男には考えらしき物があったのだ。
「この件について裏の事情まで知ってる奴を探し出して、表に出てきていない闇に葬られたネタの提供を求めてみたいと思います」
書きかけだった書類を一部斜線で訂正して、一気に書き換えながら仕上げると、それを押し付けるようにして差し出しながら、椅子から立ち上がっていた。
「今夜から月末まで、ちょっと東の方に行ってきます」
「……ヘクター殿を探しに行くつもりか?」
「おそらくは、それくらいしか手が残ってないと思いましてね」
早速今夜立ちます。そう言って背を向けた男に、アレスは僅かに迷いを浮かべていたが、それでも次の瞬間にはため息をつきながら「分かった」とだけ口にして頷いていた。
「あの小僧との決着は最終日につけますんで、釈放予定時間は日暮れでお願いします。それまでは黙ってて下さいよ。あと、釈放日についても当日、その瞬間になるまでは黙ってて下さい。……かならずネタをつかんで、あの小僧、一発でしとめて見せますよ」
それまでは焦らす気か?
そう苦笑混じりの暗の問いにマークスも質の悪い笑みで答える。
「ある程度追い詰めといたほうが、色々とやりやすいもんで。……特に今日、お前は釈放だぞって言ってやって、安心しきって油断した所に、本命のネタをぶつけてやれば、流石にボロくらいだすでしょうからねぇ」
じゃ、また、月末に。成果を期待してて下さいョ。
そう言い残しながらヒラヒラを手を振って去っていく部下に、アレスも呆れたような笑みを浮かべていたのだった。