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神様の育て方  作者: 無限
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プロローグ

プロローグ



神様なんて信じない。

そんな存在がいれば不幸な奴は生まれないし、人が悲しむ事も無い。

そして、神木(かみき)宗司(そうじ)が事故に遭うことだってなかった。


神木宗司七歳。

明日から小学生という晴れ舞台に浮かれ、両親と妹の四人で食事に出かけた帰り車に撥ねられた。

辺りは騒然と息を飲み、音もなく我が子を助けようと両親は走り出した。妹は死という大人にだって難しい事態を理解できないにも関わらず、宗司の異変に泣きじゃくっていた。

運転手は起きてしまった現実に思考は停止し、ただ茫然と引かれた少年を車内から眺める。時が動き出すように辺りの人間も事故にあった宗司を助ける為に、できるだけの事をしようと携帯を取り出し連絡を入れる。

両親は気丈な振る舞いで周りから掛けられる気遣いを、「大丈夫」と宗司の安否を願う声で返した。

まだ七歳という幼い年齢で意識が絶え絶えの宗司は、その光景をまるで他人の視線を借りるように記憶へと残し、

「だ…い……じょう……ぶ……だよ」

「ひっく、おに、ひく、ちゃん……」

泣きながら近づいてくる妹に声を掛けた。

目撃者達はそれだけで不安に押しつぶされそうになった。

事故は接触なんてものではない大きなものだ。宗司は撥ねられた拍子に小さな体をガードレールへとぶつけ、最後にはコンクリートへと叩きつけられている。無傷なんてことはあり得ず、小さな体にどれだけの血液が残っているのかと思わせるほど流血は止まらない。

それなのに宗司の言葉は最後まで妹を心配する。

「僕がなんとかするから」

その言葉だけは最後まで力強く言い放たれ、

――そして宗司の意識は途絶えた。


それからのことは奇跡と呼ぶに相応しい出来事だった。

宗司の体に後遺症は残らず、一年足らずで病院を退院。一年遅れではあるが小等部にも入学した。

――そんな事故から一〇年の月日が流れ現在。

仲が良かった妹から倦厭され、なるべく寝静まる時間になるまで宗司は夜の道を徘徊していた。

大人になりつつある宗司の顔は遠慮しても優しい作りとはいえず、ただ縁石に座る少年少女をちらりと見ただけで相手を怒らせた。

結果――、

「うわぁああああああっ!」

「ひぃいいいいっ!」

「悪魔ぁあああああああああ!」

暴行を加えられた少年少女達が恐怖で叫びながら逃げ出していく。その後を宗司は追い掛けたりはしない。レッテルこそ不良として見られることはあるが、別に喧嘩が好きと言うわけではないし、できる事なら無難に生活を送りたいと願っている。

「俺が喧嘩を売ったわけじゃねぇだろ」

それでも喧嘩を売られて逃げるのも、好き放題殴られるのも癪に障る。腕っぷしは体の造りから勝手に強くなった。だから、その場を自分の好きなように終わらせることができる。

「ちっ」

悪い事をしたわけでもないのに勝った方が悪者になる結果が気に入らず、誰もいない路地裏で宗司は舌打ちをした。

「イラつくのも分かるわよ。自分が悪いはずでもないのに悪魔呼ばわりされたらね」

舌打ちが召喚の合図を示すように誰もいなかったはずの空間から話しかけられた。

まだ残りがいたのか、それとも舌打ちに反応した新しい喧嘩相手が現れたものだと思いながら睨みを利かせ声がする方へと振り向いた。

いきなり殴られても対応できるように構えていた宗司だったが、その光景を見て驚きで唖然とする。

「は?」

思わず間の抜けた声と共に――。

「はーい、こんばんは神木宗司」

人の名前を呼び、そこにいたのは小柄な少女だった。

見た目はかわいいと言っていい。ふんわりとした質感で靡くブロンド髪も整った顔立ちも町中で歩いていたら人の視線を集めるだろう。

だが、宗司はそんなことで驚いたわけではなかった。

「八神位の一人、エルね。今すぐ覚えなさい」

命令口調で存在をアピールする少女は宙に浮遊していたのだ。

そして、口を開きっぱなしに動揺している中で続きがある。


「早速だけど宗司、あなた『神』になる気はない?」


事故の後遺症が今になって出てきたのだと宗司は疑わなかった。


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