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聖女の呪縛 ~露出の呪いで穢され堕ちた王女の末路~  作者: 華咲 美月


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第五十話:エピローグ 黄金の姫、永遠の森にて

 数年が過ぎていた。

 大陸のどこか、深い森の奥深く。


 木漏れ日が柔らかく差し込む静かな場所に、一人の女性が佇んでいた。

 彼女はもう「セレナ・エル・リュミエール」ではなかった。


 王女の冠も、聖女の光も、もはや彼女を縛るものではなかった。

 ただ「黄金の姫」と呼ばれる存在。


 かつての清らかな輝きは、今は別の色を帯びている。


 長い黄金の髪は風に揺れ、碧い瞳には深い、言い知れぬ渇望が宿っていた。

 彼女が身に纏うのは、もはや誰かに強制された呪いの衣装ではない。


 自らの意思で選んだ、漆黒と金の装束。


 身体の線を強調し、動きに合わせて鈴が小さく鳴る。


 首元には太い装飾の首輪があり、そこには彼女自身が刻んだ「黄金」の文字。

 森の奥で、セレナはゆっくりと膝をついた。

 周囲には、かつて彼女を脅かし、追い詰めた魔物たちが静かに集まっていた。


 ゴブリン、オーク、触手の魔物、獣のような異形の者たち。

 今、彼らは敵ではない。


 彼女が自ら招き、共に在ることを望んだ存在たちだった。

「……来て。みんな」

 セレナは穏やかに微笑み、両手を広げた。


 鈴の音が、森に小さく響く。

 魔物たちは一斉に彼女の周りに集まった。


 小さな手が、大きな手が、触手が、そっと彼女に触れる。


 それはもはや暴力ではなかった。


 ただ、互いを求め、互いを満たすような、不思議な静けさの時間だった。

 セレナは目を閉じ、深く息を吐いた。


 身体の奥から湧き上がる熱。


 心の底から溢れる、抑えきれない感情。


 それが彼女を満たし、同時に解放していく。

「あ……これが、私の居場所なんだ……」

 かつて「聖女」と呼ばれた自分が、どれほど窮屈だったか。


 どれほど偽りの中に生きていたか。


 今ようやく、彼女はそれに気づいていた。

 涙が頬を伝う。


 でもそれは、悲しみの涙ではなかった。


 自分を許し、自分を受け入れた瞬間の、静かな喜びの涙だった。

 魔物たちは決して彼女を傷つけない。


 ただ、共に在り、共に感じ、共に時を過ごす。


 朝が来て、昼が過ぎ、夜が訪れても、

 セレナはそこにいた。

 黄金の髪は乱れ、装束は少しずつほつれ、身体は汗と光に濡れている。


 それでも彼女は微笑んでいた。

「もっと……ずっと、こうしていたい……」

 森の奥に響くのは、鈴の音と、彼女の穏やかな吐息だけ。

 黄金の姫の物語は、ここで終わるわけではない。


 彼女はもう、誰かのための聖女ではない。


 誰かに縛られる姫でもない。

 ただ、自分自身のために生きる存在として――

 この深い森の中で、永遠に、自由に、輝き続ける。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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