第四十三話:婚約者との夜・抑えきれない本性
宮殿の奥深く、セレナの私室は静かに灯りがともっていた。
聖女認定式の失敗から数日。
王都はまだ騒然としていたが、セレナは自室に閉じこもり、誰とも会おうとしなかった。
純白の寝衣を纏い、長い金髪を解いてベッドに横たわる。
表面上は、穏やかな姫の姿に戻っていた。
だが、身体の奥底では、試練の記憶が燻り続けていた。
扉が静かに開き、アルベルト王子が入ってきた。
「セレナ……」
王子は優しい声で呼び、ベッドの端に腰を下ろした。
金色の髪、穏やかな青い瞳。
かつては、セレナの心を温かく満たした存在だった。
「辛い思いをさせてしまったな……俺が、もっと早く……」
王子はセレナの手を取り、優しく唇を寄せた。
額に、頬に、そっとキスを落とす。
寝衣の襟元を優しく開き、肩に触れる。
普通の、穏やかな触れ合い。
かつての二人が交わした、清らかな時間。
だが――セレナの身体は、震えた。
「ん……」
小さな声が漏れる。
王子の指が肩を撫でるだけで、身体が熱くなり、息が乱れる。
聖衣の下で、身体が不快な熱さを覚える。
「……アルベルト……」
セレナは無意識に、王子の手を掴んだ。
そして、ゆっくりと彼を押し倒した。
「セレナ……?」
王子が驚きの声を上げる。
セレナは彼の上に跨がり、寝衣の紐を解き、肩を露出させた。
「もっと……強く……」
セレナは王子の手を自分の肩に押し付け、強く握らせる。
王子は戸惑いながらも、従う。
だが、セレナの要求は止まらない。
「首輪……つけて……私に……」
寝室の引き出しから、かつて呪いの首輪を模した飾り首輪を取り出し、自分の首に巻きつける。
鎖を握り、王子に渡す。
「外へ……連れ出して……みんなに見られて……試してほしい……」
王子は目を丸くした。
「セレナ……何を……?」
困惑と悲しみが、王子の瞳に浮かぶ。
彼はセレナの手を優しく振り払い、立ち上がった。
「……俺には、できない。君を、そんな風に扱うことなど……」
セレナはベッドに崩れ落ち、涙を流した。
「……もう……普通の愛では……満足できないの……」
初めて、自覚した。
試練に染まった身体は、もう普通の幸せを求めていなかった。
王子は悲しげにセレナを見つめ、部屋を出て行った。
セレナは一人、ベッドに横たわり、震える手で自らの肩を触った。
不快な熱さが広がり、息が乱れる。
「……私……もう、戻れない……」
涙を流しながら、彼女は微笑んだ。
試練の光を宿した瞳で、夜の闇を見つめた。
王国は救われた。
だが、セレナの心は、もう救われていなかった。
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