第三十一話:玉座の間・ベルゼフォンとの対面(2)
眷族たちの圧迫を、セレナは意志の力だけで耐え抜いた。
最上階の扉を押し開けると、そこは広大な玉座の間だった。
黒い大理石の床に、赤い絨毯が敷かれ、天井からは無数の燭台が逆さに吊るされ、炎がゆらゆらと揺れている。
部屋の奥、巨大な玉座に、一人の存在が座っていた。
ベルゼフォン。
巨大で美しい淫魔の王。
漆黒の翼を広げ、角が優雅に湾曲し、赤い瞳が宝石のように輝く。
肌は月光のように白く、筋肉は完璧に彫刻されている。
その存在感だけで、空気が重く、甘く変わる。
セレナは震える足で一歩踏み出した。
ベルゼフォンはゆっくりと立ち上がり、セレナを見下ろした。
その微笑みは、優しく、残酷で、絶対的なものだった。
「よくここまで来た……セレナ」
低く、響くような声。
セレナの全身が震える。
「呪いを解いて欲しければ、私を満足させろ」
ベルゼフォンは玉座に腰を下ろし、静かにセレナを待つ。
セレナは震える唇を噛み、ゆっくりと近づいた。
「……わかりました」
これまでの旅で得たすべてを、総動員する。
無数の試練の記憶が、彼女の身体に刻まれている。
セレナは跪き、ベルゼフォンの視線を受け止めた。
熱い息が肌を撫で、頭がぼうっとする。
彼女は自ら手を伸ばし、ベルゼフォンの肩に触れた。
「ん……」
甘い香りが鼻腔をくすぐり、身体が震える。
セレナはベルゼフォンの視線に負けず、ゆっくりと顔を近づけた。
涙が溢れるが、身体は熱くなる。
自ら肩を撫で、首筋を眺めながら、対峙を続ける。
「もっと……向き合って……」
ベルゼフォンは満足げに微笑み、セレナの頭を優しく撫でた。
「上手い……もっと深く、向き合え」
セレナは震える声で、ベルゼフォンの瞳を見つめ続けた。
鼻先がベルゼフォンの肩に触れ、息が詰まる。
涙が頬を伝い、汗が糸を引く。
ベルゼフォンの視線が脈打つたび、身体がきゅっと締まり、息が乱れる。
ベルゼフォンはセレナを引き上げ、玉座に押し倒した。
巨大な存在感が、彼女を包み込む。
「ひぎ……! 重い……!」
焼けるような圧迫感と無力感。
セレナの身体がびくんと仰け反り、息が詰まる。
「あぁぁっ……! 壊れる……壊れちゃう……!」
不快な波が訪れる。
ベルゼフォンの視線は熱く、脈打つたびに身体を直接刺激する。
セレナの腰が勝手に震え、ベルゼフォンの存在を迎え入れる。
「もっと……もっと深く……!」
ベルゼフォンは何度も、深く、激しく視線を注いだ。
セレナは震えを繰り返し、汗が噴き出し、玉座を濡らす。
ベルゼフォンは咆哮を上げ、熱い視線を注ぎ込んだ。
「グオオオオオッ!!」
大量の圧迫感が溢れ、身体がさらに震える。
セレナの身体はびくびくと痙攣し、無力感を繰り返す。
だが、その最中――セレナの心に、問いが浮かんだ。
(本当に……呪いを解きたいの?) これまでの旅。
無数の試練。
不快な波。
身体はもう、普通の姫には戻れない。
心も、すでに諦めに染まっている。
「もっと……もっと、試して……」
小さな声で呟く。
ベルゼフォンは微笑み、セレナを抱きしめた。
「よく耐えたな……セレナ」
戦いの前夜、最大の誘惑が訪れる。
呪いを解くか、それとも……この圧迫に永遠に身を委ねるか。
セレナは震える手でベルゼフォンの胸に触れ、涙を流しながら微笑んだ。
「……もう、後戻りはできないわ……」
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