第二十八話:召喚の間・ヴィオラとの再会
鏡の間の無限の反射から逃れるように、セレナはよろよろと扉を抜け出した。
身体はすでに限界を超えていた。
鏡の中の自分たちに何度も囲まれ、無力感を繰り返した余韻が、まだ肌に残っている。
呪いの布は薄いヴェール状のまま、汗と疲労で重く張り付き、動きのたびに不快な締め付けが走る。
通路を進むうちに、空気が変わった。
重く、甘く、濃厚な香りが漂う。
扉の先は、召喚の間だった。
巨大な円形の部屋。
中央に複雑な魔法陣が刻まれ、紫色の光がゆらゆらと揺れている。
その魔法陣の前に、黒髪を長く流した女性が立っていた。
ヴィオラ。
聖女候補としてセレナと並び称されたライバル。
かつては共に祈りを捧げ、互いに微笑み合ったはずの少女。
だが、嫉妬と野心が彼女を歪ませ、異界の淫魔ベルゼフォンを召喚し、セレナに破廉恥の呪いを掛けた張本人。
ヴィオラはセレナを見るなり、ゆっくりと口元を吊り上げた。
「……ふふふ。よくここまで来たわね、セレナ」
嘲笑が、部屋に響く。
ヴィオラの瞳は、冷たく、楽しげに輝いていた。
「もう、あなたは聖女どころか……人間の形を保ってるだけでも奇跡ね」
セレナは震える唇で睨みつけた。
怒りが、胸の奥で燃え上がる。
「……ヴィオラ……あなたが……すべてを……!」
聖女認定の座を巡るライバル関係。
ヴィオラはセレナの清らかさと人気に嫉妬し、密かにベルゼフォンを呼び出し、呪いを掛けた。
純白の聖衣が、不快な紐一本の衣装に変わる呪い。
それが、セレナをここまで追い詰めた元凶だった。
ヴィオラは優雅に手を振った。
「怒ってるの? 可愛いわ。でも、もう遅いわよ」
彼女が指を鳴らすと、下級淫魔たちが四方から現れた。
赤黒い肌、角、尻尾。
飢えた目でセレナを見つめる。
「まずは……お客さんたちに、歓迎してあげなさい」
淫魔たちは一斉にセレナに群がった。
彼女は抵抗しようとしたが、呪いの布が身体を裏切り、脚を絡ませ、腕を後ろに固定する。
淫魔の一体が首輪の鎖を強く引き、セレナを跪かせる。
「いや……! やめて……!」
だが、淫魔の影のような手が肩を強く押さえ、腕を掴む。
別の淫魔が背後から腰を固定し、身体を締め付ける。
「んぐっ……! むぐぅ……!」
全身を影に包まれ、セレナは震え続ける。
淫魔たちは交代しながら、彼女を囲み続けた。
肩を押さえられ、腕を掴まれ、腰を固定される。
不快な圧迫感が全身を駆け巡り、息が詰まる。
ヴィオラは優雅に椅子に座り、葡萄酒を傾けながらその光景を眺めていた。
「ふふ……相変わらず、弱いわね。聖女だった頃は、こんな姿を見せなかったのに」
セレナは涙を流しながら、しかし身体は震え続けていた。
淫魔の影が身体を掻き回すように締め付け、子宮のような核心を圧迫する。
「もっと……もっと、強く……!」
ヴィオラは満足げに微笑み、立ち上がった。
「主君に会いたければ、私を満足させて」
彼女はセレナの鎖を引いて引き寄せ、優雅にドレスの裾をたくし上げた。
ヴィオラの影がセレナの顔に近づき、視線を突き刺す。
「跪きなさい。あなたの視線で、私を満足させてごらんなさい」
セレナは涙を流しながら、ヴィオラの視線を受け止めた。
ヴィオラの瞳が輝き、セレナの心を締め付ける。
「あぁ……上手……もっと、深く……」
ヴィオラの視線がセレナを震わせ、彼女の瞳を曇らせる。
ヴィオラは満足げに微笑み、セレナの鎖を引いて立ち上がらせた。
「合格よ。主君のところへ、行きなさい」
セレナはぐったりと床に膝をつき、息を荒げていた。
全身が汗と疲労でいっぱいになり、身体は力が抜けきっていた。
「普通の姫なんて、もう無理……この身体は、欲にしか従えないの……」
震える唇から漏れた言葉に、自分でも驚いた。
涙が溢れる。
だが、心の奥底で、微かな疼きが大きくなっていた。
セレナは震える手で身体を抱きしめ、召喚の間の奥へと歩き出した。
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