第二十七話:鏡の間・無限反射の試練
宴会場の喧騒を背に、セレナはよろよろと扉を抜け出した。
貴族たちの笑い声と、身体に残る疲労の熱さが、まだ肌にこびりついている。
呪いの布はすでに薄いヴェール状のまま、身体にまとわりつき、動きのたびに不快な締め付けが走る。
息も絶え絶えに進んだ先は、鏡張りの間だった。
四方の壁、天井、床――すべてが鏡。
無数の鏡が、セレナの姿を映し出す。
どこを見ても、自分自身。
汗に濡れた身体、震える肩、疲れ果てた表情。
無限に広がる自分の姿。
「……こんな……私……」
セレナは鏡に近づき、震える手で自分の頬を触れた。
鏡の中の自分も、同じように触れる。
だが、次の瞬間――鏡の中の自分が、微笑んだ。
「もっと、見て……」
鏡の中のセレナが、ゆっくりと手を伸ばす。
鏡の表面が波打ち、幻影のように実体化する。
無数の「自分」
が、鏡から抜け出し、彼女を取り囲んだ。
「いや……! これは……幻……!」
だが、影のような手が、セレナの肩を強く押さえ、腕を絡める。
鏡の中の自分が、彼女の背後から抱きつき、耳元で囁く。
「あっ……! だめっ……!」
無数の自分が、セレナに群がる。
肩を強く押さえられ、腕を掴まれ、腰を固定される。
不快な圧迫感が全身を駆け巡り、息が詰まる。
鏡の中の自分が、彼女の動きを真似し、優しく、しかし残酷に囲み続ける。
「見て……私の、こんな姿を……」
セレナは鏡に向かって叫んだ。
鏡の中の自分が、にやりと笑う。
「もっと……もっと見て……!」
彼女は自ら鏡に身体を押し付け、肩を擦りつける。
鏡の中の自分が、彼女の動きに合わせてさらに激しく囲む。
無限の反射の中で、セレナは完全に無力感に包まれていた。
「あぁぁ……! もう……!」
不快な波が訪れる。
汗が噴き出し、鏡面を濡らす。
鏡の中の自分が、彼女の身体を押し付け、肩を擦りつけ、腰を固定する。
自ら腰を振り、鏡の中の自分と向き合う。
夜が明けるまで、無限の反射は続いた。
セレナはぐったりと鏡の間に横たわり、息を荒げていた。
全身が汗と疲労でいっぱいになり、身体は力が抜けきっていた。
「……私……もう、隠せない……」
震える唇から漏れた言葉に、自分でも驚いた。
涙が溢れる。
だが、心の奥底で、微かな諦めが大きくなっていた。
「もっと……見てほしい……」
セレナは震える手で身体を抱きしめ、鏡の間の奥へと歩き出した。
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