第十五話:魔獣の平原・ケンタウロス群との疾走
闇森を抜け、セレナは広大な平原に足を踏み入れた。
朝の陽光が黄金色の草原を照らし、風が草を波のように揺らす。
遠くに山脈が見え、青い空がどこまでも広がっている。
だが、セレナの心はすでに疲弊しきっていた。
呪いの布は、平原の風に反応して再び変形した。
熱い波が全身を駆け巡り、葉を模した布が溶けるように形を変える。
騎乗用の露出ハーネスへ。
黒い革のベルトが首から腰、太ももまでを強く縛り、身体を不自然に強調する。
腰には尾のような飾り革が揺れ、身体を前に突き出すように固定される。
まるで馬に乗るための鞍のような、異様な装束だった。
「こんな……草原の真ん中で……」
セレナは両手で身体を隠そうとしたが、呪いの革が腕を後ろに固定し、動きを封じる。
風が肌を強く打ち、布が肌に食い込み、不快な締め付けが走る。
歩くたびに革のバンドが身体を圧迫し、息が乱れる。
「はぁ……あっ……だめ……」
膝がガクガクと震え、立ち止まる。
だが、その時、地面が大きく揺れた。
ドドドド……!重い蹄の音。
遠くから、巨大な影が迫ってくる。
ケンタウロスだった。
馬の胴体に人間の上半身を持つ魔獣。
筋肉が盛り上がり、長い髪を風になびかせ、赤く濁った目でセレナを見つめる。
群れは十数体。
リーダー格の黒毛のケンタウロスが、セレナに近づき、鼻を鳴らした。
「人間の雌……いい匂いがする……!」
セレナは逃げようとしたが、呪いのハーネスが脚を絡ませ、動きを封じる。
ケンタウロスたちは一斉に彼女を取り囲み、馬の背に跨がるように持ち上げた。
「いや……放して……!」
だが、抵抗は無意味だった。
リーダーのケンタウロスがセレナを自分の馬の背に跨がせ、腰を固定する。
革のハーネスが鞍のように機能し、身体を馬の背に密着させる。
馬の毛が肌を強く擦り、不快な摩擦が全身を駆け巡る。
「ひゃっ……! 痛い……!」
ケンタウロスは咆哮を上げ、馬の背を駆けさせる。
草原を全力疾走しながらの移動。
風が顔を切り、身体が激しく揺れる。
革のバンドが肌に食い込み、摩擦で不快な熱さが広がる。
馬の背に密着した身体が、絶え間なく揺さぶられる。
「あぁぁっ……! 速い……!」
風と摩擦、馬の疾走。
寒さと熱のコントラストが、セレナを圧倒する。
「もっと……もっと速く……!」
小さな声が漏れた。
セレナはもう抵抗せず、自ら身体を預けるようにしていた。
群れのケンタウロスたちは交代しながら、セレナを運び続けた。
草原を疾走しながら、次々と囲み、押さえつける。
不快な圧迫と風の冷たさが、身体を震わせ続ける。
最後のケンタウロスが止まり、セレナを馬の背から下ろす。
彼女は草原に崩れ落ち、ぐったりと横たわった。
全身が汗と疲労でいっぱいになり、身体は力が抜けきっていた。
草原に疲れ果てた跡が残る。
「……あぁ……もう、限界……」
セレナは満足げに微笑んだわけではない。
ただ、疲れ果てた表情で息を吐いた。
涙が溢れる。
だが、心の奥底で、微かな諦めが大きくなっていた。
「……ごめんなさい、父上、母上。
もう、純粋な姫君には戻れないかもしれません……」
震える手で身体を抱きしめ、セレナは平原の奥へと消えていった。
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