第十話:闇森手前・冒険者パーティとの遭遇
雪山を越え、凍てつく風に打たれながら、セレナはついに悪魔の城へと続く闇森の入り口に辿り着いた。
森の入り口は、黒々とした巨木が空を覆い、昼間でも薄暗い。
冷たい霧が立ち込め、木々の間から不気味な獣の遠吠えが響く。
セレナの身体は、雪山での過酷な試練と寒さで限界を超えていた。
呪いの衣装はさらに薄く、ほとんど肌を覆わない状態に変わっていた。
細い革紐が身体を辛うじて繋ぎ止め、冷たい風が直接肌を刺す。
鎖が肌に食い込み、歩くたびに身体を締め付ける。
「ここまで……来てしまった……」
膝が震え、力なく木に凭れかかる。
もう、歩けない。
倒れ込んでしまいたい衝動に駆られながらも、彼女は目を閉じて呟いた。
「お願い……誰か……助けて……」
その時、木々の間から人の声が聞こえた。
「おい、見ろ。あそこに女がいるぞ」
四人の冒険者パーティだった。
屈強な剣士の男二人、弓使いの男一人、そして黒髪の美しい女性魔術師。
皆、旅慣れた装備を纏い、焚き火の明かりを背にセレナを見つけた。
「助けて……ください……」
セレナは震える声で訴えた。
マントはすでに失い、異様な姿が月明かりに晒されている。
女性魔術師が最初に近づき、セレナを上から下まで冷たく見つめた。
彼女の瞳に、嫌悪と嘲りが浮かぶ。
「……みっともない格好ね」
冷たい声。
セレナは息を呑んだ。
「そんな……私は……」
「黙りなさい。この森の入り口で、こんな姿でうろついている女が、まともなわけないでしょう?」
女性魔術師は嘲るように笑い、男性メンバーたちに目配せした。
「この女、放っておくには危なすぎるわ。せっかくだから、荷物持ちとして連れて行きなさい」
男性三人が、薄く笑みを浮かべた。
セレナは後ずさろうとしたが、呪いの紐が脚を絡ませ、動きを封じる。
すぐに男たちに囲まれ、焚き火の前に引きずり出された。
「いや……お願い……放して……」
涙を流しながら懇願するが、女性魔術師は冷たく言い放つ。
「そんな格好で助けを求めるなんて、甘すぎるわ。せめて役に立ってもらいましょう」
セレナは首を振った。
だが、男の一人が鎖を強く引き、彼女を焚き火の近くに固定した。
「動くな。俺たちの言うことを聞け」
男たちはセレナを囲み、じっと見つめる。
視線は重く、逃げ場のない監視の目。
焚き火の熱で身体が少し解けていく一方、心は凍りついたままだった。
「荷物持ちとして使え。文句は言うなよ」
「夜通し見張りも頼むぜ」
屈辱的な命令が次々と浴びせられ、セレナの心は少しずつ削られていく。
最初は必死に首を振り、声を上げて抵抗した。
だが、疲労と呪いの影響で、抵抗する気力さえ薄れていった。
焚き火の前で何時間も。
嘲笑と監視、冷たい視線が混じり合い、セレナの意識を蝕む。
夜が明ける頃、セレナはぐったりと地面に座り込んでいた。
全身が汗と震えでいっぱいになり、肌は赤く染まり、力が抜けきっていた。
「……私……もう、限界……」
涙がこぼれ落ちる。
だが、心の奥底で、別の声が小さく響いていた。
(もう……逃げられない……) 震える手で身体を抱きしめ、セレナは闇森の奥へと再び足を踏み出した。
旅は、まだ終わらない。
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