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海神別奏:大正乙女緊急指令「九十九人ノ婚約者ヲ攻略セヨ」  作者: 百合川八千花


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55「どうしてあなたは……」

「……殺しましょう」


 シュヴァリエが怒っちゃった!

 

「待て待て待て、話は続くんだ」

「長いんだ、レディ。あなたのささやきを聞くのは楽しいが……もう少し短縮できないか?」

「いや、これは私とエンゼル神父の馴れ初め話なので、絶対に端折らん!」


 馴れ初めという言葉に頬が赤くなる。

 そうだ、この後私たちは愛を誓いあう。

 

「馴れ初め、ね……。ここからどうやってうまく行くんだ?」


 シュヴァリエの疑問は当然だ。

 飽きてきたであろう彼に先にオチだけ伝えてやろう。

 

「この後――私たちはすっげえ口吸いをするんだ」


 と。


 ◇ ◇ ◇

 

「ワダツミマサルについて知るすべてを答えなさい。そうでなければ、撃ち殺します」


 目の前には海魔、後ろには狂った異端審問官。

 完全に詰んでしまった状態。私は両手を挙げて無抵抗の意思を示すことしかできなかった。


「……政府の秘匿存在というのは全て私の嘘です。彼に関して私は何も聞かされておりません」

「どうしてあなたは……ここまで来て嘘をつくんですか」

 

 だが当然、エンゼル神父は信じなかった。

 わかってはいたが心が痛む。

 琅玕隊(ろうかんたい)の隊長として彼に全てを打ち明けても、彼は受け入れてくれないのだ、と。

 

「……では、”方法”を変えるしかありません。持っているすべての武器を置いて、上の拷問部屋に移動しなさい」

「武器は折神(おりがみ)だけです。ここに置きますね」


 拷問……この男は絶対にやる。

 だが逆らえば容赦なく撃ってくるだろうことは明白なので言うことを聞くしかなかった。

 

 ――ちなみにこの場合は手を頭の後ろで組ませ、自分で武器を奪うのが一番安全だ。

 が、軍人でない彼にはわからないらしい。

 

 伝えてやる義理はないので、私はこっそり折神を一枚隠し持ちつつ、それ以外の折神を地面に置いた。

 エンゼル神父は気づくことなく、私を先に歩かせて上の拷問部屋に戻そうとする。

  

 なんか、上手いこと逃げられそうだな――


 上の拷問部屋には武器になりそうな物が散乱しているし、彼は直接戦闘は不得手そうな身のこなしだ。

 

 しかし、この時、私はエンゼル神父を舐めていた。

 

 バシュン! と音を立てて、海魔が霧散する。

 エンゼル神父の手元には私に向けられている以外の銃があり、その銃で海魔を討ったらしい。


「私が討伐しましたのに」

「ここは霊力結界の張られた特別な場所で、折神は使えません。……あなたが隠し持ってる折神も、です」

「……ばれてましたか」

 

 だが彼はシュヴァリエと共にアメリカ軍の特殊部隊・Hell Sub(地獄の予備隊)の一員だった男。

 霊力の知識と技術は日本軍にも引けを取らない。

 どんな技術で何をしてくるかは未知数だった。

 

(なめてかかるのは危険だな……)


 そう。舐めてはいけなった。

 

 ――ガタッ、ガタガタッ

  

「あの、扉が開かないんですが……」

「えっ……」


 上に開くはずの扉をどれだけ押しても開かない。

 上から相当な力で押さえつけられているかのようだった。

 

「あっ、棺桶が倒れて蓋をしてるかも……」


 ――彼が驚異的なレベルの不器用だということを。

 

「だから! 片付けろって言ったじゃないですか!」

「ちょっと片づけたんです! あれでも!」

「折神で破壊しますよ! 結界解いてください!」

「できません……結界は私の力じゃなくてこの場所の効果です……」

「そんなものを偉そうに誇示してたのか!」


 先ほどまでの一触即発の空気はどこへやら、やいのやいのと言い合いをしていると、足元に冷たい感覚が走る。

 

 ――海水だ。

 

 潮が満ちてきて、海底洞窟の水位が上がってきているのだ。

 

「……満潮時、ここにはどれくらい水が溜まりますか?」

「この空間をすべて埋め尽くすくらい……です……」


 なんてことだ。驚異的なドジのせいで訳の分からないタイミングで絶体絶命になってしまった。

 

「どうしてあなたは……そんなドジなんだ!?」


 ***

 

「くそっ、開かない!!!」

 

 一時休戦。


 私はエンゼル神父と協力して扉を開けようとする。

 だがどういうわけか、ただの鉄の塊でしかないはずの扉が壊れることはなかった。


 拳から血が出るまで殴ってもまったくの無意味。

 しかし諦めるわけにはいかない。


「織歌さん、それ以上は手が壊れます」


 血まみれの拳をエンゼル神父が包む。

 彼の手は軽く震えていて、この状況は本当に狙ってやったことではないというのが伝わってくる。

 

 「ここは、どういう場所なんですか」


 水はくるぶしまで迫ってきていた。

 いずれ腰まで水位が上がり、最後はこの空間全てを飲み込むだろう。

 エンゼル神父もそれがわかるのか、逡巡の末、意を決して答えてくれた。


「……ここは、私の父が作った場所なんです」

「父?」


 エンゼル神父は酷く暗い顔をして言いよどむ。

 彼らしくない、悩み惑う姿が、これから話す事実が彼にとって大きな傷であることを示していた。

 エンゼル神父は、暗い顔をしたまま口を開いた。

★★★

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