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【マグナギア無双】チー牛の俺、牛丼食ってボドゲしてただけで、国王と女神に崇拝される~神速の指先で戦場を支配し、気づけば英雄でした~  作者: 月神世一
本編

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EP 17

妖精キュルリンの「バグ報告」

 イケメン騎士アレンを公開処刑し、歪んだ自尊心を満たした千津ちず 牛太ぎゅうた

 今の彼に、怖いものは何もない。

「(ふっ……見たか運営。俺の実力を。そろそろ『公式アンバサダー』のオファーが来てもおかしくない頃合いだな)」

 彼はアパートの畳の上で、ふんぞり返っていた。

 その思考は、すでにプレイヤーの枠を超え、神(運営側)の領域へと片足を突っ込んでいた。

 そんな彼の元に、一匹の羽虫――ではなく、小さな来訪者が現れたのは深夜のことだった。

「おい! そこのメガネ!」

 窓から飛び込んできたのは、手のひらサイズの少女だった。

 透き通るような羽、発光する身体。そして生意気そうなツリ目。

 この世界における上位種族、妖精ピクシーのキュルリンである。

 普通なら「妖精だ!」と驚く場面だ。

 だが、牛太の反応は違った。

「(……おっ? このパーティクル表現、ポリゴン数の少なさ……さては『GMゲームマスター』のアバターだな?)」

 彼は即座に姿勢を正し、少し低い声を作った。

 運営スタッフへの対応モードである。

「やあ。やっと接触してきましたか。……待ちくたびれましたよ」

「あ? 何言ってんだお前。キモいな」

 キュルリンは素で引いていたが、構わず用件を切り出した。

「アタシが管理してるダンジョン『天魔窟』が大変なんだよ! 最近、冒険者が壁に埋まったり、トラップが誤作動したりして、クレームの嵐なんだ! お前、機械とか構造に詳しいんだろ? 直せ!」

 彼女の悩みは切実だった。

 ダンジョンとは、魔力で自動生成される迷宮だが、長年の運用で構造劣化が進み、物理的な欠陥バグが多発していたのだ。

 しかし、牛太の脳内翻訳機は今日も絶好調だった。

「(なるほど。『マップの当たり判定コリジョン』の不具合と、『スクリプトエラー』の修正依頼か。……俺をただのプレイヤーではなく、『デバッガー』として雇いたいと)」

 牛太はニヤリと笑った。

 プレイヤーにとって、運営からの直オファーは最高の名誉だ。

 だが、彼はここで「安売り」はしない。

 プロとしてのプライド(と強欲さ)を見せる場面だ。

「いいでしょう。引き受けます。……ですが」

 牛太は親指と人差指を擦り合わせた。

「報酬は弾んでもらいますよ?」

「金か? 金貨ならいくらでもやるぞ」

 キュルリンが金貨袋を出そうとする。

 だが、牛太は首を横に振った。

「金(ゲーム内通貨)なんてインフレしたら紙切れだ。俺が欲しいのは……**『石』**です」

「い、石……?」

「そう。虹色に輝く、あの石ですよ」

 彼が要求したのは、「課金ガチャ用の魔石」である。

 牛太にとって、この世界の「魔石(高純度エネルギー結晶体)」は、レアガチャを回すためのプレミアム通貨に見えていたのだ。

「(金貨は稼げば手に入る。だが『石』は運営からの配布でしか手に入らない! ここで10連……いや、天井分まで巻き上げてやる!)」

 キュルリンは困惑した。

 魔石といえば、戦略級魔法の触媒にもなる国家機密レベルの資源だ。それを「石ころ」のような感覚で要求してくるとは。

「こ、こいつ……なんて強欲な……! 分かったよ! 直ったら最高級の『賢者の石』をくれてやる!」

「交渉成立だ。……さあ、現場サーバーへ案内しろ」

 ◇

 転送された先は、薄暗いダンジョンの最下層だった。

 そこは惨状を呈していた。

 壁から半分だけ飛び出したスケルトン(埋まりバグ)。

 無限に矢を吐き出し続ける壊れた発射装置ループバグ

 足を踏み入れると亜空間へ落下する床(テクスチャ抜け)。

「うわぁ……酷いスパゲッティコード(迷宮構造)だ。これ、初期設計した奴誰ですか? 素人?」

「うるさい! 昔の魔王が作ったんだよ!」

 牛太はため息をつきながら、愛用の工具袋とマグナギアを取り出した。

「メンテナンス開始(パッチ適用)。……まずはこの『無限湧きポイント』から潰す」

 彼は理髪師のハサミを取り出し、魔法陣の線を物理的に「チョキン」と切断した。

 魔力の供給が断たれ、スケルトンが崩れ落ちる。

「次に、この『壁抜け判定』。……隙間風が入ってるな」

 彼は持参した「速乾性セメント(100均)」を塗りたくり、物理的に空間の穴を塞いだ。

「そして、このトラップの誤作動。……センサーの感度が高すぎる」

 彼はトラップの感知板に「ガムテープ」を貼り付け、反応を鈍くした。

 物理的すぎる。

 魔法的な不具合を、日曜大工と理髪技術で強引にねじ伏せていく。

 だが、効果は絶大だった。

「す、すげぇ……! バグが消えていく……!」

 キュルリンは口をあんぐりと開けていた。

 数百年、誰も直せなかった古代の呪いが、ガムテープとハサミで修復されていく光景は、もはや冒涜的ですらあった。

「ふぅ。こんなもんでしょう」

 数時間後。

 ダンジョンは見違えるように正常化(?)していた。

 牛太は額の汗を拭い、手を差し出した。

「完了しました。……さあ、報酬(石)を」

「お、おう……持ってけドロボウ!」

 キュルリンが渡したのは、拳大の虹色に輝く『賢者の石』。

 国が一つ買えるほどの超貴重アイテムだ。

 だが、牛太の反応は薄かった。

「……ちぇっ、単発(一個)かよ。まあいいか、ログインボーナスだと思えば」

 彼はそれを無造作にポケット(アイテムボックス)に放り込んだ。

 その価値を理解していないからこその暴挙。

 キュルリンは震えながら、心の中でこう誓った。

「(こいつ、ヤバい。魔王よりタチが悪い……絶対に関わらないようにしよう)」

 しかし、牛太は満足げだった。

 運営(GM)とのコネを作り、課金アイテムもゲットした。

 

「(これでまた俺のステータスが上がってしまったな。……次はどんなイベントが待っているんだ?)」

 彼が期待する「イベント」。

 それは、まさかの「女神降臨」という、彼の妄想を遥かに超える超大型アップデート(現実)として訪れることになる。

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