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【マグナギア無双】チー牛の俺、牛丼食ってボドゲしてただけで、国王と女神に崇拝される~神速の指先で戦場を支配し、気づけば英雄でした~  作者: 月神世一
本編

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EP 16

イケメン騎士、許すまじ

 千津ちず 牛太ぎゅうたの世界は、今やバラ色に輝いていた。

 アイドル・リーザとの婚約(妄想)。

 弁護士・リベラとの愛の契約(妄想)。

 エルフ姫・ルナからの求愛(妄想)。

「(ふふふ……参ったな。俺の遺伝子が優秀すぎて、異世界の美女たちが放っておいてくれない。これが『主人公補正』ってやつか? いや、俺の日頃の行い(牛丼への感謝)が良いからだな)」

 彼は上機嫌で、王都のメインストリートを歩いていた。

 今日は、王立騎士団による『公開模擬戦』が行われる日だ。

 名誉団長(仮)のコネを断った彼だが、タロウ国王から「参加賞で高級牛肉が出るぞ」と釣られ、ノコノコとやってきたのである。

 だが。

 会場である闘技場に到着した瞬間、彼のバラ色の世界は暗転した。

「キャァァァァァッ!! アレン様ぁぁぁ!!」

「こっち向いてぇぇ! 素敵ぃぃ!」

 黄色い悲鳴。

 地響きのような歓声。

 会場の中心、スポットライトを浴びて立っていたのは、一人の青年騎士だった。

 輝くようなブロンドの髪。

 宝石のような碧眼。

 白亜の鎧に身を包み、爽やかな笑顔を振りまくその姿は、絵本から飛び出してきたような「正統派王子様」そのもの。

 彼の名はアレン。

 伝説の勇者リュウの息子にして、次世代の英雄候補。

 剣の腕は天才的、性格は誠実、家柄も完璧。

 つまり――牛太が最も憎むべき存在、『スーパーリア充』である。

「(チッ……眩しい。光害だ。目が腐る)」

 牛太は舌打ちし、忌々しげにメガネの位置を直した。

 陰キャにとって、陽キャの輝きは猛毒に等しい。

 だが、悲劇はここからだった。

「あら、アレン様。ごきげんよう」

「やあ、アレン君! 元気?」

「アレンさーん! 今日の試合、頑張ってくださいね!」

 アレンの元に、三人の美女が駆け寄った。

 リベラ、ルナ、そしてリーザだ。

 彼女たちは(社交辞令や友人として)笑顔でアレンと談笑し始めた。

「リベラさん、今日のドレスも素敵ですね」

「うふふ、お上手ですこと」

「ルナさん、迷子になりませんでしたか?」

「ええ! 今日はちゃんと地図ネギオを持ってますから!」

 爽やかな会話。

 美しい光景。

 ――しかし、牛太のフィルターを通すと、それは「地獄」に見えた。

「(……は?)」

 牛太の足が止まる。

 ドス黒いオーラが、チェックシャツの背中から立ち昇る。

「(NTR……? いや、寝取られだと? 俺という婚約者がいながら、あのチャラ男に媚びを売っているのか?)」

 完全なる被害妄想である。

 だが、彼の中の劣等感が、怒りの炎に油を注いだ。

「(許せない……。顔が良いだけでチヤホヤされやがって。中身を見ろよ中身を! 俺の『在庫管理能力』や『ハサミ捌き』のほうが上だろ!)」

 ギリリ、と歯ぎしりの音が響く。

 牛太の瞳から理性の光が消え、代わりに「嫉妬」と「殺意」の文字が浮かび上がった。

「(……分からせてやる必要があるな)」

 牛太はポケットから、愛機『シャドウ・ウォーカー』を取り出した。

 その指先が、カミソリのように鋭く尖る。

「(あのメッキが剥がれた時、あいつがどんな顔をするか見ものだ。……イケメンの顔面フェイス崩壊ショー、開演といこうか)」

 ◇

「さあ! 続いてのエントリーは、飛び入り参加枠です!」

 実況の声が響く中、アレンが爽やかに剣(マグナギア用コントローラー)を構えた。

 彼が操るのは、正統派ヒーロー機体『ブレイブ・ナイト』。

「誰でもかかってきてください! 正々堂々、良い試合をしましょう!」

 キラキラした笑顔のアレン。

 そこへ、ゆらりと影が近づいた。

「……へぇ。随分と余裕ですね、勇者の息子さん」

 マイクを通した陰湿な声。

 会場がざわつく。

 現れたのは、猫背でメガネの男。

「君は……?」

「ただの……通りすがりの理髪師バーバーです」

 牛太はニチャリと笑った。

 その笑顔は、恐怖映画の殺人鬼よりも不気味だった。

「俺が相手になりますよ。ただし――」

 牛太はグローブをはめた手で、アレンの「顔」を指差した。

「泣いてママのところに逃げ帰らないでくださいね? ……その甘いマスクごと、削ぎ落としてあげますから」

 宣戦布告。

 それは模擬戦の挨拶ではない。私怨まみれの「処刑宣告」だった。

 アレンの笑顔が引きつり、会場の空気が凍りつく。

 だが、牛太だけは恍惚としていた。

 これから始まる「ざまぁ」展開を想像し、脳汁を垂れ流しながら。

「(見てろよ、俺の女たち……。誰が本当の『オス』か、教えてやる……!)」

 最も動機が不純な、しかし最も技術力が高い戦いが、今始まろうとしていた。

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