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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

押しが強くて困ります

***BL***僕の好きな人は、押しが強い。年上の騎士団長に恋をした僕。でも、彼にとって、僕は彼の沢山いる子供の一人に過ぎない。ハッピーエンドです。

 初恋の人の押しが強くて困ります。そんなに、グイグイ来られたら、僕はどうしたらいいの?


 相手は騎士団長、僕よりは大分年上で、結婚もしてました。つまり、僕とは違うと言う事。

 僕の初恋は、叶う事が無い恋でした。



*****



 僕ははっきり言って、人と話すのが苦手。特に身体が大きくて、声も大きな人が苦手。


 第4王子の僕は、産まれただけでお荷物な存在だった。

 それでも、小さい頃は色も白く、サラサラの金髪だった為、第一王女から第四王女と一緒に育てられた。つまり、僕は自分を女の子だと思っていたわけ。

 価値の無い僕は、所謂男の子が好きな男の人の為に、育てられた様な物だった。


 大人になった僕は、王城から一番離れた後宮に住んでいた。侍女のいない生活も、僕にはむしろ有り難かった。人一人分の食物が取れる畑、綺麗な水、山羊と牛がいて、森に入れば果物も取れた。

 週に一度、王宮から騎士団長が来て、僕と話しをしてくれる。僕の様子を見て、足りないものが無いか聞いて、後で補充してくれる。

 この騎士団長が僕は苦手だった。カッコ良過ぎるんだ、、、。無駄にカッコ良い、、、。しかも、亡くなった奥様との間に沢山の子供がいたらしく、僕は末っ子扱いだった。

 僕の恋心なんてわからないんだろう、、、。

 小さい頃に王女ねぇさま達と一緒に育てられた為に、僕自身女の子だと思っていた。だんだん、自分だけがみんなと違う事に気付いて、僕は少しずつ内に閉じ籠る様になった。

 その僕のキツく閉じた扉を、騎士団長は無理矢理こじ開ける。

 彼は、王宮から肉と小麦粉を運び、僕に肉料理を食べさせる。鍋にたっぷりの肉と野菜を入れて、スープを煮込みながら、小麦粉で夜食べるパンの準備をする。それから馬で遠乗りに行く。僕は騎士団長の後ろに乗り、振り落とされない様にしがみつく。

 普段使わない筋肉を使うらしく、僕には辛い。

 そして、夕方には帰って来て、パンを焼く。作った晩は二人で食べる。騎士団長はちゃっかりビールも持ち込み、裏の川で冷やしている。


 僕は彼が苦手だ。

 彼と遠乗りした時の、背中の広さ、男らしい香り、太い声、僕と違う大きな手。僕が王女だったら、彼との結婚も夢では無かった。でも、僕ではダメだった。僕は男だもの、、、。

 彼はいつも一晩泊まってから帰る。後宮と言っても、僕一人だけが住んでいる為、部屋数は少ない。

 ベッドだって一つしかない。彼は、暖炉の前の揺り椅子に座り眠る。ビールを飲んで朝まで眠るのだ。

 同じ屋根の下で眠る地獄、、、。緊張して眠れる訳が無い。



*****



 その晩も眠る事が出来なかった。なかなか寝付けない僕は、静かに後宮を出て、夜の散歩をする。

 月がとても綺麗だった。月明かりが庭や畑を照らした。小さな虫の声。僕は外に出してあった椅子に座る。

「眠れませんか?」 

あんなに飲んだのに、騎士団長はシラフの様だ。

 眠れる訳無いでしょ?!

心の中で呟きながら、にっこり笑うしか無い僕。

「夜は大分冷える様になりました。星空は美しいですが、身体を冷やさない様に気を付けて下さい」

そう言って、僕の頬を触る。

「こんなに冷たい」

僕は、彼の腕を思いっきり払う。

 触らないで、、、

胸がギュッと閉まり、顔が赤くなる。俯いて彼の視線から逃げる。

「触られるのは、嫌でしたね」

ニヤっと笑う。ワザとやって、揶揄からかっているんだ。

 僕は彼を睨みつけてから、部屋に戻る。寝られないから出て来たのに、これじゃあ、もっと寝られないよ!


 布団に入ってから、彼がれた頬をさわる。女の子に産まれたら、もう少し素直になれたかな?



**********



  第四王子は、一番小さな王子だった。産まれた時、どの王子や王女よりも小さかった。その上、8番目の子供となれば、気に掛ける者もいない。

 俺の沢山の子供達よりも小さい王子は、俺の心を掴んだ。子供達は、大分大きくなっていたから、産まれたての赤ん坊が可愛くて可愛くて仕方が無い。

 一番下の王子は、やがて他の王女達と一緒に育つ様になった。まるで5番目の小さな姫だった。上の四人の王女達に可愛がられ、いつも姉達の後ろを着いて回る。姉達を見て、仕草を真似、静かな優しい子供になった。


 しかし、年頃になる前に自分が他の王女達と違う事に気が付いた。他の王女は、第四王子を今まで以上に大切にしていたが、本人はダメだった。受け入れる事が出来なかった様だ。

 第四王子は、誰も近付かない外れの外れに、小さな後宮を建てて貰い、そこに一人でひっそりと暮らす様になった。

 元々、四人の王女以外とは話しをしない方だった。一人の生活は淋しいものだっただろう。しかし、作物を育て、山羊や牛を育て、自分の食べ物を作る生活は第四王子には合っていた様で、一月もすると穏やかに生活をする様になった。

 俺は、そんな第四王子の様子を確認しては、王に報告をしていた。

 作物を作り、山羊や牛を搾乳していたが、肉やパンを食べていない。俺は週に一度、足りない物を運びながら第四王子と過ごす事にした。


 初めて王子を遠乗りに連れて行った時は、俺に掴まる手にも力が無く、馬を走らせる事も出来なかった。

 一度少し馬を走らせたら、後ろに落ちそうになった。慌てて支えて、馬を止め、片腕で抱き抱え前に乗せた。こちらを向く様な形になり、王子は耳を真っ赤にして俯いた。

 俺は、そのまま馬をゆっくり走らせた。王子は落とされない様に、俺の服を掴む。もう少し早く走らせると、アワアワしながら腰を掴む、もっと早く走らせると、俺にしがみついた。

 いちいち反応が愛らしくて、可愛らしい。王子と言う事を忘れてしまう。

 思わず、王子を抱き締めた。馬から落ちない様にと言う口実がある。ギュッと力を込めると、ピクッと反応があって、俺の口元が歪む。



**********



 明日は、週に一度の彼の訪問日だった。でも、今日は生憎の天気。夜から嵐になりそうだった。


 嵐の夜は嫌いだ。強い風で、窓がガタガタと揺れ、建物がギシギシと軋む様な気がする。後宮とは名ばかりのこの建物で、嵐の夜を過ごすのが怖い。


 深夜、嵐がピークを迎える。すぐ後ろを流れる小川を覗くと、真っ暗で何も見えない筈なのに、黒い黒い川が水嵩を増して、今にも溢れそうだった。

 雨漏りは無い、怖いのはゴウゴウと強い風が吹く音と、雨が打ちつける音。大木が風に押され、揺れている。

 暖炉に火を灯して、不安な夜を過ごす。



 扉を叩く音が聞こえる。こんな嵐の夜に一体誰が、、、。と思いながら、玄関の横にある窓から外を確認する。フードを被った背の高い男が立っていた。鍵を開けて、両手でドアの取手を掴み、用心して扉を開ける。

 びしょ濡れの騎士団長だった。

「大丈夫ですか?」

僕は、ホッとして涙が出そうだった。自分でもわからない内に不安になっていた様だった。

「中に入れて下さい」

扉を開けて、彼を招き入れる。

 大きなリュックを背中から下ろした、荷物はびしょ濡れだったけど、中身は無事だった。

「お一人で不安では無かったですか?」

そう言われた途端に涙が溢れた。

 彼は、濡れた手で僕の頭を撫でようとして躊躇した。

「待ってて下さい、今、拭く物を」

奥の部屋に行き、タオルを沢山持って来た。

 彼は頭を拭き、シャツを脱ぎ、身体を拭く。ズボンまで脱ぎ始めたので、僕は何か隠す物は無いかと、もう一度奥の部屋へ行った。

 何も思いつかないので、ベッドからシーツを剥がした。それを持って、彼の元へ行く。

 彼は上半身裸だった。もちろん、後ろ向きだったけど、僕とは全く違う身体付きに、カッコ良すぎて見惚れてしまう。

「王子?」

振り向きそうになったから、慌ててシーツを押し付け、濡れた服を集める。

 僕は緊張して、声も出ない。彼はシーツを肩から掛けると、濡れた服を僕から受け取り、洗い場に持って行った。

 簡単に洗い、よく絞ってから暖炉の前に干した。

僕は、彼がいつも座る揺り椅子を暖炉の前に移動する。

 やはり、少し寒かったのか、濡れた服を干し終わるとシーツを肩から羽織り直し、揺り椅子に座る。

 僕は昼間の残りのシチューを温めて彼に渡した。

 僕も暖炉の前に座りシチューを食べる。熱々に温めたシチューがお腹の中から温めてくれる。

 僕は彼から食べ終わったお皿を受け取った。

「一人で心細かったでしょう」

そう言って、僕の頬を撫でる。僕は、思わず身体を引いて手を避けた。

 彼はそんな僕を見て、ちょっと笑う。また揶揄からかわれた、、、。顔が赤くなったまま食器を片付けに行く。

 


 彼が此処に来た時が嵐の一番のピークだったのか、少しずつ遠のいている様だった。それでも突然風が強くなるのか、窓ガラスを激しく揺らし、雨音が強くなる。


 彼は荷物の中から、酒の入った容器を取り出し、口を付けて飲んだ。

「王子も飲みますか?温まりますよ」

と言われて、手を差し出す。

「大人の飲み物です」

馬鹿にされたみたいだった。僕はグイッと勢いに任せて飲んだ。容器を口から外し、アルコール度数の強い酒に喉が焼ける様になり、顔をしかめる。

「王子には。まだ早かったですね」

ただ悪戯っぽく笑うだけなのに、僕の心臓はバクバクしてしまう。


 僕は暖炉の温かさにウトウトして来た。さっき食べたシチューの所為か、それともキツいお酒のお陰か、身体の芯がポカポカしている。

 紅い炎が揺れるのを見ている内に、段々気持ち良くなって、瞼が下がり続けてしまう。



 気が付いたらベッドの中だった。温かい、、、。フカフカの布団、温かい、、、。温もり、、、。ん?


 ぎゃーっ!


 声の出ない悲鳴が出た!

 騎士団長が横で寝ていた、、、。


 ななななな、なんで?なんで、この人は此処で寝てるの?

 もう、僕の心臓は持ちそうも無かった。ドキドキして、バクバクして、頭がガンガンして、本当に勘弁して欲しい。

「おはよう、王子」

彼が笑いながら挨拶をする。巫山戯ふざけるのもいい加減にして欲しい。

「何やってるんですか?」

「おっ?」

彼はニヤニヤと笑う。また、僕を揶揄からかって馬鹿にするつもりなんだ。

「人の布団に入り込むなんて、どう言うつもりですか?」

 ベッドから降りながら

巫山戯ふざけ過ぎです、、、」

僕は静かに部屋を出た。


 暖炉の火は消えていた。濡れていた服もまぁまぁ乾いている。

 窓の外を見ると、嵐が通り過ぎ、空は晴れていた。僕はドアを開けて外に出る。



 彼の事は好きだけど、これ以上は無理だ、、、。僕の心が悲鳴を上げてしまう、、、。僕は、一人になりたかった。


 彼にとって僕は、きっと最後に産まれた子供みたいなものだろう。だけど僕にとって彼は、特別な存在なんだ、、、。だから、これ以上は一緒にいたく無い。


 彼は大分乾いた服を着て、僕の元に来た。

「申し訳ありません、王子。王子の反応が可愛すぎて、調子に乗りました」

「大丈夫です。ただ、、、次からは違う人を寄越して下さい」

「王子?」

「お願いします、、、」

「貴方が小さい頃から見て来ました。だから、貴方が可愛くて仕方が無い、無礼をしました」

頭を下げられた。

「本当に申し訳ありません」



*****



 これで彼に振り回される事が無くなる。そう思いながら、来週から彼に会えないと思うと悲しかった。

 頭を冷やして部屋に入ると、彼はパンを捏ねていた。肉は夜の内に火を通して、調理してあった。

 いつも通りの1日が始まりそうだ。きっと、この後、遠乗りに連れて行かれる。遠乗りには行きたく無い。馬に乗り、彼の後ろで彼の匂いを嗅ぎ、彼に触れたら、、、辛いだけだ。

 朝食を食べながら

「今日は、遠乗りに行きたくありません、、、」

そう言うと

「そうですね、土が水を含んで滑るといけません。今日はゆっくりしましょう」

と言われた。

「昨日から来て頂いているので、今日はもう帰って頂いて結構です、、、」

と言うと

「そうですか、、、」

と淋しそうに答えた。

「来週からは俺以外の者を寄越します。でも、何かあったら、いつでも俺を呼んで下さい。貴方は、俺の息子も同然ですから」

ほらね、、、。やっぱり息子だった、、、。

 僕は彼が食事をしている席に回り込む。彼は不思議そうな顔をした。


 僕なんて、彼に軽蔑されれば良い、、、。

 そう思いながら、そっと彼に口付けをした。



 さようなら。



 彼はポカンとした顔をしている。

 僕は、奥の部屋に閉じ篭った。



**********



 翌週、見知らぬ侍女が来た。彼女は、肉を焼き。パンを捏ね、肉と野菜をたっぷり入れたスープを作る。その後、パンを成型して焼く。黙々とそれを熟し、僕に足りない物が無いか確認すると、静かにお辞儀をしてから帰って行った。

 僕は別の意味で疲れた。

 いつもと違う料理は、味は美味しい筈なのに、何故か食欲が湧かなかった。


 

**********



「最近、団長は王子の所に行かないんですか?」

「ん?そうだな」

「毎週泊まりで行ってましたよね?」

「ああ」

「団長の代わりに俺が行きましょうか?」

「いや、侍女が一人、毎週行っている」

「第四王子って、あの女みたいな王子ですよね?可愛いんですか?」

「可愛いよ」

「へぇ、俺も行ってみようかな」

ギョッとした。王子は辺りに誰もいない所に一人で住んでいる。俺が今まで定期的に行っていたから、良からぬ者への抑止力になっていたのかも知れない。今、王子は一人きりだ。他に誰かいたとしても、侍女が一人位だろう。


 もし、、、。


 胸がザワザワする。



*****



 夕方、王宮に立ち寄った後、第四王子の元に通う侍女を探した。呼び出された侍女は、少し小走りで近寄って来た。

「騎士団長様、どうされたんですか?」

「最近、第四王子はどうですか?」

「最初の頃は、あまりお食事を摂られませんでした、今はしっかり食べてらっしゃいますよ」

「そうですか、久しぶりにお顔を見に行こうと思うのですが、何かお持ちする物があればと思いまして」

「それなら、調味料とお酒を」

「酒?」

王子が酒?誰と飲むんだ?

「たまにご自分で召し上がってる様です」

「王子が?。それはいつから?」

「私が彼方あちらに伺った日に、すぐ、、、」

俺は、荷物を預かるとその足で、王子の元へ行った。


 考え事をしながら、馬を走らせた。

 誰か来ている、、、。馬が一頭繋がれていた。俺は少し離れた所に馬を繋ぐ。

 馬の持ち主は、昼間のアイツだ。

 俺は扉をノックする。

 鍵が開く音がして扉が開くとアイツが顔を出した。

「お前、此処で何をしている?」

しまった。冷静にと考えていたのに、コイツから酒の匂いがプンとした途端、理性が吹っ飛んだ。

「今すぐ、帰りなさい」

冷静に冷静に、、、。心の中で呟きながら、ゆっくりと言う。

「すっ!すみません!今すぐ!」

バタバタと上着を取りに行き、慌てて出て行く。

 俺は、アイツが馬に乗り、姿が見えなくなるまで見届けた。



 取手に手を掛け、深呼吸をする。静かに扉を開き、そっと部屋に入る。王子は既に酔っているのか、テーブルに肘を付き、頬杖をしてぼんやりしている。

 一体どれだけ飲んだんだろう。

 俺が椅子を引き、隣にゆっくり座ってもぼんやりしたままだった。

 王子の目の前にあるグラスを煽る。キツイ酒だった。ため息が出る。お前にはジュースがお似合いだろ?

「キス、、、しませんか?」

王子が言った。俺はギョッとしながら王子を見る。

 王子がポロリと涙を溢した。

 相手が俺に替わった事に気付いていない。

「キス、した事ありますか?」

王子はグラスが空になっている事に気付く。酒瓶に手を伸ばしグラスに注ぐ。溢れる程注いでも慌てる事が無い。相当酔っているんだろう、、、。

「キス、しちゃったんです。大好きだったのに、、、」

俺は王子の顔を見る。

「彼にとって、僕は、彼の子供の一人だったのに、、、。知っていたのに、、、。キスをしました。もう、優しくして欲しく無かったし、嫌われたかった、、、」

王子はチビリと酒を舐めた。

 こんな姿をさっきのアイツに見せたら、この後何が起こるのか、王子にはわからないんだろう、、、。

 王女達と育ち、純粋培養された王子が心配だ、、、。

「キス、、、しちゃったんです、、、」

そう言いながら、自分の唇に触れる。フッと俺の顔を見た。俺に気付き、慌てふためくと思っていたら、フフッと笑った。

「どうして此処にいるんですか?」

「酔いすぎですよ、、、」

「夢かな、、、。ずっと会いたかったから、、、きっと、夢だな」

王子の手が伸びて来る。俺の頬を触り、立ち上がる。俺に近寄り、俺の指を触り立たせるとそっと寄り添って来た。

「すごい、、、匂いまでする、、、」

そう言いながら、俺に抱き付き見上げる。可愛い、、、。そう思った途端、王子は背伸びをした。

「キス、、、して下さい、、、」

俺は瞳を閉じた王子にキスをした。

 王子は涙をポロポロ溢し

「夢で良かった、、、愛してます」

と呟いた。



 さて、困った。王子はそのまま寝てしまった。俺はそっと抱き上げ、ベッドに連れて行く。布団に寝かせ、テーブルの上を片付け、椅子を持って来て座る。

 、、、俺が酒を飲みたい位だ。こうなったら、王子の寝顔を肴に呑んでやろう。そう思って酒を取りに行く。



 スヤスヤと眠る王子。俺がちょっかいを出すと、慌てて真っ赤になったのは、俺の事が好きだったからか、、、。


 産まれた日から知っている。小さくて可愛い子だった。いつから俺を好きだったんだろう、、、。そして、俺は何故王子にキスをしたんだろう、、、。

 いや、キスをした理由はわかっている、可愛いと思ったからだ、、、。



*****



 王子が布団の中から手を伸ばして来た。

「まだ、いたんですね、、、」

クスッと笑う。

「嬉しい、、、」

キュッと繋いだ指に力を入れる。



 俺は王子の顔を見る。

 王子は急に表情が固くなった。夢じゃ無いと気付いた様だった。

 繋いだ指をゆっくり解き、ソロソロと布団の中に隠れようとしている。

「愛してます」

俺は呟いてみた。ピクリと反応して動きが止まった。


「すごい、匂いまでする」

王子が言った言葉を真似する。

ソロリソロリと指を布団に仕舞おうとしている。


「キス、しませんか?」

バッと腕を仕舞った。頭も布団の中に仕舞い、完全に隠れた。

 俺は暫く様子を見た。きっと息苦しくなって出て来るだろう。、、、ほらね。

「何で貴方が此処にいるんですかっ!」

布団から出て来るなり、いきなり怒られた。



「いつから、俺をそう言う目で見ていたんですか?」

王子は真っ赤になって睨みつけて来た。


「俺に会えて嬉しいですか?」

睨みながら、涙を溢した。


揶揄からかって楽しいですか?」

「揶揄ってなどいません。知りたいから聞いているんです、、、」

「ずっとずっと好きでした!だから、貴方に子供扱いされるのは嫌だった!これで良いでしょ?出てって下さいっ!」

「何故?」

「何故?、、、一緒にいたく無いからです」

「愛してるのに?」

「愛してるから辛いんです!貴方は、僕を自分の子供の一人だと思ってるんでしょ?僕は違う!僕は貴方を一人の男性として好きなんだ!、、、だから、、、」

涙を拭きながら続ける。

「だから、もう此処には来ないで、、、」

俺は、王子の隣に座る。


「今日、男が来ただろう?」

「、、、はい」

「君の元に男が来たのは初めてだった。昼間。アイツが此処に来ようとしているのを聞いた時、イヤな感じがした。扉を開けて、酒臭いアイツが出て来た時、理性を失い掛けた、、、」

「、、、」

「君が産まれた時から知っている。小さくて可愛いかった。俺の子供達は大きくなっていたから、尚更愛おしかった。君の反応が可愛くて、意地悪もした、、、。自分の子供の一人と言われればそうかも知れない、、、。でも、何だか気になるんだ」


王子が俺を見る。

「会えなかった間も、君の事を考えていた。侍女に酒を呑んでいると聞いて驚いた、、、。辺りに誰も住まないこの場所で、たった一人で暮らしていて、もし何かがあったらと考えたら心配だった、、、。さっきの男が君にもし、、、」


「優しい親心ですね、、、」


俺は王子にキスをした。

「親ならキスは唇にしない」

もう一度口付けをする。

「どうして、、、」

「すまない、、、。ただ、君が心配で、愛おしくて、キスをしたくなる」


「それって、好きって事じゃ無いんですか?」 


 もう一度キスをする。


 そうか、俺は王子を好きなのかも知れない、、、。



**********



 気が付いたら、彼の荷物が増えていた。そして、一晩だけ泊まっていた彼が、二日泊まる様になり、四日泊まる様になり、一週間泊まり続ける時もある。

 えっ、、、と、、、。このままで良いのかな?と思っていたら

「結婚しよう」

と言われた。え、展開早過ぎない?

「ぼ、ぼ、僕は結婚したいけど、、、」

彼は、僕を後ろから抱き締めていた。

「君を一人にしたく無い、、、。ずっと一緒にいたい。一緒に暮らしたい、、、結婚して欲しい」

「お、お願いします」

緊張する。

「あの、、、王女ねぇさま達にも報告して良いですか?」

王女ねぇさま達には僕から話しがしたかった。彼はにっこり笑ってくれた。



*****



「まぁ!まぁ、まぁ、まぁ!騎士団長と結婚!素敵じゃない!」

「貴方は、彼をずっと好きだったものね!」

え?

「小さい頃から、彼の後ろばかり追い掛けていたし」

「私達が彼と少し、話しをするだけで怒っていたもの」

「そうですか?」

「小さ過ぎて、忘れているのね」

ウフフと笑われる。

「結婚ならば、ドレスを作らないと!」

王女ねぇさま?!」

「遠慮しないで、私達からの贈り物よ。貴方を世界一可愛くしてあげる!」

王女ねぇさま?!」

僕はあちこち採寸された。あんな事を言いながら、素敵なタキシードを作ってくれると思っていた僕が馬鹿だった、、、。

 仕上がったのは、純白のドレス。金の刺繍が細かく施されて、裾に行くほど刺繍の金色が目立つ。スカスカの胸元が映える様に、繊細な刺繍が入っていた。僕の細い身体が目立たない様に、スカート部分が綺麗なラインで広がっている。

「可愛い、、、」

「好きでしょ?こう言うの」

「大好きです。でも、彼が何て言うかな、、、男の僕がドレスなんて、、、」

「惚れ直すわよ、絶対!」

「可愛くお化粧もして上げるわ」

「爪も綺麗に整えましょう」

「他にも贈り物はあるのよ」


僕は、やっぱり王女ねぇさま達が大好きだ。



*****



 僕と彼の結婚式は身内だけで行った。第四王子で八番目の末っ子、彼も二度目の結婚式だ。

 王女ねぇさま達と彼の家族だけだった。

「綺麗ね、、、」

「本当に、私達の自慢の子だわ」

王女ねぇさま達が沢山褒めてくれた。

 

「騎士団長がお見えです」

王女ねぇさま達が静かに部屋を出て行く。

 アイヴァンがそっと入ってくる。ドレス、、、褒めてくれるかな、、、。緊張して震えて来る。

「ルシアン、、、」

涙が出そうだ。アイヴァンが僕の目の前で跪く

「綺麗だ、、、」

良かった、、、。泣いたら、化粧が崩れちゃうのに、、、。アイヴァンが僕の手を取り、唇を重ねた。

「あ、、、」

口紅が、、、。

「ルシアン、、、。すまない、化粧はやり直して貰ってくれ、、、」

え?ちょっ!待って!あっ!、、、あのっ!アイヴァン?


 アイバンが、はぁ、、、と、息をきながら唇を離す、、、。僕は、力が抜けてストンと椅子の上に座った、、、。

 アイヴァンの唇に薄っすらと僕の唇の色がうつっていた。あ、、、と思いながら見ていると

「ルシアン、、、このまま早く連れて帰りたい、、、」

アイヴァンは、切なそうに呟いた。



**********



 俺は、王女様達に散々叱られながら、ルシアンが化粧を直すのを見ていた。本当に綺麗だった。

 


 結婚式は和やかに終わった。



*****



「ルシアン、ドレスを脱がしたい、、、」

二人きりになって甘えてみる。ルシアンは真っ赤になって俯く。はいも、いいえも言えないのが可愛い。

 俺達の家は、結婚式をしている間に初夜を迎える為の部屋に準備され、ベッドの周りには花びらが沢山散りばめられていた。

「ルシアン、、、」

そっと手を引いて、ベッドルームに連れて行く。

 ルシアンがベッドの上に広げられているナイトドレスに気が付いた。

「、、、こ、、、こんなの着れない、、、無理だよ、、、」

泣きそうな顔になる。かなりセクシーで、身につけても意味のない様なスケスケのナイトドレスだった。

王女ねぇさま達、、、こんなの着てるの?」

 可愛い、、、。

「ルシアン、今日は着なくて良いから、、、」

俺はナイトドレスが傷つかない様に枕元の椅子に置いた。

「おいで、、、」

ルシアンは少しホッとした顔になる。

 いつかはあのナイトドレスを来て貰う、、、今日は、別のお楽しみがあるのだから、、、。


 背中のリボンをほどく、シュッと言う音が部屋中に響いた。

 布が擦れる音だけが響く、それがこれからの夜を想像させて、甘美な香りが漂って来る様だった。




沢山の中から選んで頂いた上に、最後まで読んで下さって有難うございます。二人がいつまでも、幸せでいられますように!

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