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訳あり王子の守護聖女  作者: 天咲リンネ


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49:短期淑女養成計画(1)

 ふと目を覚ますと部屋の内部は暗かった。


 太陽が昇っていない時刻に目覚めたのは久しぶりのような気がする。


 私の朝は大抵、ミアやロゼッタに揺り起こされて始まるのに、今日はルカ様の帰国予定の日だから脳が興奮して眠れなかった。


 我ながらどれだけ楽しみなんだと苦笑してしまう。


 一週間も離れるのは初めてだったから仕方ない。


 胸中で誰ともなしに言い訳しつつ、私は起き上がって窓辺に歩み寄り、二重になっているカーテンをまとめて開けた。


 王宮は高い丘の上にあるため、王都の美しい街並みを見下ろすことができる。


 あと三十分もすれば空に昇った朝陽がどんな人間にも等しく一日の始まりを告げ、いまはまだ眠る街も活発に動き出すのだろう。


「失礼致します。おはようございます、ステラ様。今日はお早いお目覚めですね」


 水瓶から水を汲んで顔を洗っていると、部屋の扉がノックされてロゼッタが姿を現した。


 ロゼッタは隣の侍女部屋で寝泊まりしているのだが、私が起きた気配を察知してやってきたらしい。


 まだ早朝だというのに彼女は完璧に身支度を整え、すっかり見慣れたお仕着せを着ている。


「おはよう、ロゼッタ。……いつも不思議なのだけれど、あなた一体何時に寝て何時に起きてるの? 私、あなたが寝ているところを見たことがないわ」

「女官はそうあるべきだと思っておりますので。もうお着替えになられますか?」


「ええ。朝食の前に神殿に行くわ。ルカ様たちのご無事をお祈りしたいの」

 ルカ様は現在公務のためにラークとシエナを連れてユグレニー公国へ行っている。


 あの後ラークとシエナは略式の騎士叙勲を受け、正式にルカ様の守護騎士となった。


「かしこまりました。ではドレスの準備をして参ります」

 一礼して、ロゼッタは続きの衣装部屋へと消えた。

 優秀な女官がドレスを選んでくれている間に、化粧台の前に座って櫛で髪を梳く。


 化粧台の鏡に映る自分の瞼は少しむくんでいる。

 細切れな睡眠を繰り返していたせいだ。


 気になって指の腹で軽く瞼を揉んでると、ロゼッタがドレスを手に戻ってきた。

 慌てて手を下ろし、何もなかったふりをして立ち上がる。


「とりあえずこちらのドレスでいかがでしょうか?」

 彼女が掲げたのは金の刺繍が入った茶色の縦じま模様のドレスだ。


「本日は二度お召し物を変えて頂く予定です。ダンスレッスンの前、それと、ダンスレッスンの後。ステラ様におかれましては最高の状態でルカ様とお会いしたいでしょうから、私たちも全力を尽くさせていただきます」

「……よろしくお願いします」

 何も言わずとも私の恋心を見抜いている女官に、私は赤面しつつ頷いた。




 エレスト神殿は王宮の東側にある。

 管理者の宮中神官長に朝の挨拶をしてから、私は女神クラウディア像の前で跪いて祈りを捧げた。


 しばらくして部屋に戻り、栄養たっぷりの朝食を摂って一息ついたら今日の担当科目の教師が部屋を訪れ、授業が始まる。


 エメルナ皇国の下民だった私はろくに教育を受けていない。

 一応読み書きはできる。ただし字は下手で本を読む習慣もなかった。


 王子として一通り高等教育を受けていた――いうまでもなくノクス様の手配だ――ルカ様や伯爵家出身のラークや同じく伯爵家出身のシエナと比べると、私は立ち居振る舞いがまるでなっていない。


 この広い世の中で、ドレスの裾を踏んづけて階段から転がり落ちそうになる聖女がどこにいるというのか。


 皆で『蒼玉の宮』を訪れた後、私はノクス様に相談を持ちかけた。


 付け焼刃のマナーと乏しい知識しか持たない状態で公務を始めたルカ様の隣に立つのは不安だ、私のせいでルカ様が恥を掻くのは耐えられない。


 そう言うと、ノクス様は私のために最高の教師陣を揃え、一か月に及ぶ『短期淑女養成計画』を立ててくれた。


 歩き方、身のこなし、礼儀作法、ダンス、刺繍、音楽、アンベリスの歴史、文化。その他諸々。


 私はルカ様の守護をラークたちに任せて『柘榴の宮』にこもり、必死で学び続けている。

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