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訳あり王子の守護聖女  作者: 天咲リンネ


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33/57

33:全速力の帰還

 ノクス様の元へ急ぎたいというのに、よりによってこんなときに王宮の『瞬きの扉』が故障した。


 不具合が起きて動力源であるオーブが機能停止したそうだが、もはや原因などどうでも良い。


 私たちは連絡を受けてから二日間、ほとんど休むことなくグリフォンを乗り継いで空を駆け、夜の闇に沈む王宮に降り立った。


 たとえ人目につきにくい夜中であったとしても、王宮の敷地内に魔物を入れるなど言語道断である。


 しかし、罰を受ける覚悟はとうにできていた。


「ルカ王子!? 王宮にグリフォンを連れ込むなど何を考えて――」


 衛兵たちの非難を無視してルカ様は私の手を掴み、『蒼玉の宮』に向かって一直線に走り出した。


 激しい振動に耐えられなくなったのか、ルカ様の外套のフードからプリムが飛び出す。


 そのまま彼女は羽根を動かし、ルカ様に寄り添うように空を飛び続けた。


 ルカ様の足が速すぎて、私はついていくのに必死だったけれど、シエナとラークは平気な顔で追いかけてきている。


 背後で二匹のグリフォンが飛び立つ羽音が聞こえた。

 無理を言って王宮まで送り届けてくれた御者には迷惑料を含めたお金を既に払っているため、留まる理由はないのだ。


 視界に『蒼玉の宮』を捉えると、シエナとラークは私たちの先に回り込み、息ぴったりな動きで左右同時に正面玄関の扉を蹴り開けた。


 走る勢いそのままに扉を蹴り開けたせいで蝶番が哀れな音を立てたけれど、ルカ様は気にせず宮中へ飛び込んだ。


「なっ、何事です!?」

「敵襲!?」

「ルカ王子!? いつの間にお帰りに――」


 玄関付近にいた侍従たちが驚愕しているが、やはり全てを無視してルカ様は廊下を疾走し、階段を上って主人の部屋へ突撃した。


 一声もかけずに扉を開け放って控えの間を通り、寝室の半ばまで進んだところでようやく足を止める。


 少し遅れてシエナとラークも部屋に入ってきた。


「――――」

 そして、二人ともが、私と同様に言葉を失って立ち尽くす。


 天蓋付きの寝台に横たわっているノクス様は、もう死んでいると言われても驚けない程に衰弱していた。


 見慣れた指輪と魔導具――角灯ランタンに似た照明器具が寝台横のチェストに置かれている。


 ガラス容器の中の魔法の光が照らすノクス様の顔には生気がなく、その色は青や白を通り越して土気色だった。


 緩やかに胸が上下しているから、かろうじて生きているのはわかるけれど、この様子ではいつ呼吸が途切れてもおかしくはない。


 寝台の前の椅子にはモニカさんが座っていた。

 驚き顔で私たちを見ていた彼女は立ち上がり、じわじわとその目に涙を浮かべた。


「ルカ様。ステラ様。よくお帰りに……そちらのお二人は? それに、ルカ様の隣にいるのは、まさか、妖精ですか?」


 モニカさんの問いかけにルカ様は答えない。

 真っ白になるほど拳を強く握り締め、チェストの上の指輪を睨んでいる。


 ルカ様がその右手に嵌めているものと対になる指輪。

 もしもノクス様がその指に嵌めていたなら、ルカ様にもっと早く生命の危機を知らせていたであろう指輪だ。


「……肝心なときに外したことを怒ったくせに……」

 怒り――あるいは悲しみに拳を震わせているルカ様に代わって、モニカさんの問いにはラークが答えた。


「あー、えーと。オレは西の神殿に所属してる騎士のラーク、こっちは同僚のシエナ、この妖精はプリムローズ。略してプリム」

「初めまして、ラークさん。モニカと申します。まさか妖精を連れて来られるとは――」

「いやプリムはオレじゃなくてルカのツレで――」


「ステラ。頼む」

 モニカさんとラークが話している間に、多少は落ち着きを取り戻したらしいルカ様が私の背中を押した。


「はい」

 予想以上のノクス様の衰弱ぶりに怯んでしまったけれど、しっかりしなければ。


 守護聖女として、私はルカ様の期待に応える義務がある。


 全力疾走のせいでまだ乱れている息をどうにか整えながら、私はノクス様に歩み寄ろうとした――けれど。

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