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愛し愛され、奪い奪われ  作者: 舎人をかし
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第1話

 ゴーン ゴーン ゴーン


 祝福の鐘が鳴り響き、白いウェディングドレスを纏った新婦が一人、シルバーのタキシードを纏った新郎が一人、並んで立っている。


 幼い頃から夢見ていた結婚式。けれどそれは、私の望むところにない政略結婚である。


「ユイシャ・オーリア。汝、病めるときも健やかなるときも、常にルイアス・アルスオルトを愛し、守り、慈しみ、支えることを誓いますか?」


 お決まりのセリフ。これも昔は憧れていた。

 答えは決まっている。


「誓います」


 政略結婚に「ノー」はない。どれだけ結婚が嫌でも、私はこの結婚を拒否することができない。


「ルイアス・アルスオルト⋯⋯」


 神父は同じセリフを隣の男にも言い、彼も私と同じように「誓います」と答えた。

 それは、実に熱の無い声だった。


 政略結婚とはそういうものだと、私も分かってはいる。でも、それにしたって彼の声には熱がない。

 歩み寄ろうともさせてくれない淡々とした圧を感じる。


「それでは誓いのキスを」


 王女に転生してからは初めてのキスだ。

 私はルイアスの方に身体(からだ)を向けた。


「⋯⋯⋯」


 黒い髪に翠玉色の瞳。身体は少しほっそりとしていて、どちらかと言うと女性に近しい華奢(きゃしゃ)な身体つきをしている。


 彼は妖精族の王だ。

 二十年前、彼はそれまで不遇な扱いを受けていた妖精族の生権(せいけん)を獲得し、妖精族の国を創った。


 彼は黒髪で、妖精族の中でも突出して高い魔力を有していた。そのため、人間や他の種族は彼を恐れて侵攻を()めた。


 そして妖精族と人間の和平の橋渡しとして今回この結婚が組まれたわけだが。


「⋯⋯⋯」


 あまりにも熱がない。感情がない。

 彼も今回の結婚は形だけのものとして扱うつもりだろうが、それにしてももう少し取り繕ってもらっても良いのではないかと思ってしまう。


 私は彼に微笑みかけた。

 しかし彼はそれを無視して顔を近づけてくる。


 こちらが歩み寄ろうと努力しても、向こうは応えてくれない。まさに形だけの結婚だった。

 そうして私は、何のときめきもないキスを交わした。

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