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43話 消えた邪竜の欠片


 こっそりと戻ったレティシア達は、しれっとした顔で戻ってきていた生徒の中にまぎれた。


 それに気がついたのはジゼットとエオンだけ。

 誰に咎められることなく、レティシア達はその日中止された授業に、周囲に合わせて喜んでみせた。


 そして、その日の他の授業を終えて寮に帰ると、サーエルゲのハンバーグに頬を緩ませた。


***


 その一方で、邪竜の欠片が盗まれたという情報はいまだ秘されていた。

 しかし、どこから漏れたのか、教官の間では噂となっており、会議の場でとうとう追及する者が現れた。

 これまで幾度となく邪竜の欠片を求め、拒否されてきたダークエルフの教官、カリヴォスだ。



「邪竜の欠片が盗まれたというのは本当なのですか!?」


「…………」



 しかし、クロノは無言を貫く。



「どうして答えないのですか! あなたには説明責任があるでしょう!」



 そこでようやくクロノが口を開いた。



「何故?」


「何故って、当然でしょう!」


「だから何故当然なんだ?」



 己の失態を追及されてもクロノの感情が揺らぐことはない。

 クロノにとっては些末なことなのだ。

 そのあまりの動揺のなさに、逆にカリヴォスの方が動じてしまう。



「な、なにをおっしゃっているのですか? ご自分がなにをしたか分かっていらっしゃるのか?」


「なにを?」


「ここまできてとぼけるのですか!?」



 この会議の中、吠えているのはカリヴォスだけである。

 他の教官はアルバートのように静かに成り行きを見守っている者か、邪竜の欠片がなくなったという情報に不安そうにしている者かに分かれる。

 しかし、カリヴォスのように、クロノに喧嘩腰に噛みつく者は一人もいなかった。


 それはこれまでクロノが成し遂げてきた功績が積み重なって、クロノへの信頼に繋がっているからだ。

 たとえ邪竜の欠片がなくなったとしても、クロノがなんとかしてくれると安心している気持ちが根底にあるからだろう。


 それに、この国にはクロノだけでなく、邪竜討伐時に大魔導師と戦った魔導師が何名もいる。

 平和ボケと言ってしまえばそれまでだが、これまでこの国を守ってきた彼らの存在が、強い安心感を与えているのは間違いない。



「お前はいったいどこで邪竜の欠片が盗まれたと聞いたんだ? 国からすら発表をされていないというのに」


「そ、それは、それほどの大事を公表したら国民を混乱させてしまうからでしょう」


「つまり、まだ未発表の情報を鵜呑みにして、お前は私の責任を追及しようとしているということか?」


「いや、それは……」



 ここにきて、ようやくカリヴォスも勢いをなくす。



「私の責任を問いたいなら、噂に踊らされず、証拠を持ってこい」



 それは決して怒鳴っているわけではなかったが、厳しさと圧倒するような威圧感が含まれており、カリヴォスに限らず誰も言葉を発せなくなった。



「これ以上の議論がないならもういいな。こちらは無意味な話をしている暇はないんだ」



 長くさらりとした輝く髪をひるがえし、クロノは颯爽と去って行った。

 残された教官達は、次の議題へと進めることにし、カリヴォスは一人わなわなと震えていた。



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