41話 入学式
レティシア達がまず最初に向かったのは、学校内にある大きな講堂だ。
そこにぞろぞろと集まってくるのは、今年の新入生である。
寮ごとに並んでいるため、たった四人しかいないルヴェナのレティシア達はかなり目立っていた。
しかも、四人それぞれが光持ちと闇持ちなのでなおさらだ。
デュークについては試験で教官を吹っ飛ばして首席で試験を突破しているせいか、強く印象に残っている者が多いもよう。
試験の場にいなくとも、人づてで聞いている者もたくさんいる。
そして、そんなデュークの隣に立つ、子供のようなレティシアの存在に大きな違和感を覚えることだろう。
「ソーガルドの寮長から直々に勧誘があったらしいわよ」
「あの子供はどうやって受かったんだ?」
「光と闇持ちがそろってるなんて珍しいな」
「ルヴェナに振り分けされちゃうなんてかわいそー」
などと、ひそひそと話声が聞こえてきた。
中にはあからさまに嘲笑するものまでいて、デュークの先ほどから苛立ちが抑えきれなくなってきている。
ソーガルドの寮長からの勧誘はつい先ほどだったというのに、もう噂になっているのかと驚いた。
まあ、周囲にはソーガルドの生徒もたくさんいたので、耳にした者は多かったのだろう。
そこは置いておき、レティシアふと視線を移動させると、そこにはロドニーの姿がある。
憎まれるのは仕方ない。
けれど、その後ロドニーはどのように暮らしていたのだろうか。そこが気になった。
しかも、現在ロドニーのそばにいる人の存在も、レティシアが目を外せない理由の一つだ。
「エルフ? ……にしてはちょっと違う。どの種族だろ?」
思わずエアリスに視線を向けたが、ずっと魔導書の中で眠っていたエアリスが知っているはずもなかった。
すると、またもや気の利いたジゼットが耳打ちしてくれる。
「あの方はエルフはエルフでも、ダークエルフです」
「ダークエルフ?」
なんだそれはと、レティシアは聞き馴染みのないその名前に首をかしげた。
「二百年前、闇の女神より力を授かったエルフの方々をそう呼んでいるんです」
「新たな種族まで生み出してるなんて」
レティシアは驚きを通り越して感心している。
デュークのためなだろうが、過保護だなと思う。それだけの配慮ができるなら、どうして邪竜となるために守ってくれなかったのか。
こうして、疑問だけが募っていく。
「レティ、俺様ちょっくら敵情視察に行ってくる」
「え?」
こそりとエアリスが当然そんなことを言い出した。
「あの小僧がどうやって生き残ったかしりたいんだろ?」
さすが、相棒。レティシアのことは、本人以上に知っていうる。
エアリスは止める前に、バサバサと羽ばたいていってしまった。
そうして、しばらくして帰ってきたエアリスが離してくれた内容は、嬉しいのか悲しいのか分からない感情をレティシアに与えた。
ロドニーは命からがら村か逃げ出したはいいものの、彷徨っていたところをあのダークエルフに保護。そこで魔力があることが分かり、彼の下今も学んでいるという。
「なるほどねぇ」
レティシアという自在に力を使える人間がいたから、ロドニーもまさか自分が使えると思っていなかったのだろう。
なにせ、大抵の魔導師は魔法を使う際に媒体が必要になってくる。
力のある魔導師なら媒体がなくとも魔法を使えるが、魔法の使い方すら知らない初心者には難易度が高すぎる。
それをしてしまっていたレティシアがいたからこそ、自分がまさか魔力を持っていたなんて思いもしなかったはずだ。
なんとなくだが、その後のロドニーの生活を感じることができた。




