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-ファントムレイジ- BETRAY Phantom/Rage  作者: ロニ・フィレンス
第一章 ユスティス入隊編
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3 こちら側の存在


 ダニーが来てから一時間ほどが経過し、優先して処理すべき書類が片付いたところで、いよいよ本日の本題であるミーティング始まろうとしていた。


 「よし、書類も片付いたし始めるとするか」


 「なんで一番遅かったキミがこの場を仕切ろうとしてるのかな?」


 「十分も早く起きたんだ。今回は遅刻じゃないといっても差し支えないと思わないか」


 「一ミリも思いません。全く、なんでキミはそんなにも自由なんだか」


 「褒めるな」


 「褒めてません」


 毎度遅れて来るわいつも寝てるわでいつも頭を抱えてるのに、挙句リックを椅子に括り付けて顔に悪戯書きをした後、すぐさま椅子に座ってはこの様だ。本当にいつものことながら自由人過ぎる。

 まぁ……仕事柄キミが普段から寝てるのは仕方ないかもしれないけど。


 「騙されるな貴海(たかみ)会長。ダニーは私が教室に行った時からここまでずっと寝たふりをしていたぞ」


 「なんですって?」


 前言撤回。どんな事情があれ彼には少しキツく言う必要があるようだ。


 「なんだ、気付いてたのか」


 「私のアクセサリー、床にわざと落としだだろ。私の行動によってポケットから落ちるような場面じゃないからな。どっかの誰かさんがポケットの中と外に穴でも開けない限りな」


 「流石、力を使ったことにも気づいていたか」


 「狸寝入りしてまでサボろうなんていい度胸じゃないの。っていうよりも、ダニーあなた日常ではギフトは使わないんじゃなかったの?」


 「悪かった。けど今回は何としても確認したいことがあったんだよ」


 「へえ、聞いてあげましょうか。サボり常習犯のあなたがそんな手間をかけてまで何を一体確認しようとしていたのかな?」


 目線をそらしながら謝罪の言葉を言うダニーに向かってロジェリアは怒気を孕んだ声色でそう言い返す。どんな言い訳を言い出すかと待っていると、ダニーが発言する前に成田来夏(なりたらいか)が口を開いた。


 「それなんだが、理由があることは私もすぐに理解した。あれが重要監視対象者の曽我天多(そがあまた)に対する回答ということだな」


 「まって、なんでそこで曽我(そが)君が出てくるの。今の悪戯じみた話からは到底……いえ、もしかしてアクセサリーってそういうこと……?」


 「ああ。その時ダニーがわざと床に落としたアクセサリーは貴海の想像した通り、こいつのことだ」


 そう言って来夏がポケットから取り出したのは、シンプルな装飾が施された青いブレスレットだった。


 「床に落ちたこいつを天多は拾い上げて私に手渡してきた。普通の一般人には視認できないはずのこれをな」


 目の前の机に置かれたそのアクセサリーを見て、ロジェリアの予想は確信に変わった。


 「やっぱり〈Dギア〉ね」


 Dギア。本来ならば()()()()()()()を保有していなければ認識することのできない特殊な力が込められた、彼女らの所持している小型アクセサリーだ。


 「じゃあカレはやっぱこっち側の人間だったってことでー?」


 「まだ決めつけるには早すぎるって言いたいところだけど、これ以上ないくらい確実な証拠がある以上、彼は少なくとも「これ」を認知する程度の力を保有しているでしょうね」


 「理解してもらえたようだな」


 「一応はね。けどその行動は少しリスクがあったんじゃないの? 現時点で()()()()()()()()()()()()()()()()のに、こんな場面を見られたらキミ達の正体をわざわざ自分から晒しているようなものじゃないの」


 「重々承知している。だが奴らの動きが活発化してる今、適正を持つ一般人が奴らの目に留まればそれこそ格好の的だ」


 「それもそうだけど」


 確かにもし彼が襲われてからではすでに遅いということは事実。それを踏まえれば安全を確保するためにも力が備わっているかどうかを時間をかけて見極める暇なんてない。


 「スパイに私達の正体がばれるリスクを天秤にかけたうえでも、人命を優先したということだね。であれば、今回はキミの行動には目を瞑るよ」


 コホン。


 「分かった。では後日、重要監視対象者である曽我天多君を保護するということでいいかな?」


 その場にいる全員が首を縦に振るのを確認し、ロジェリアが表情を緩めたことでその場の空気が軽くなる。


 「なあ、ところでミーティングは進めなくていーの? 既に十七時半を過ぎてるんだが」


 「ごめん、すっかり忘れていたよ。定期考査期間だから六時には締め出されちゃうし、もしみんながこの後まだ時間があるのなら場所を変えて改めてミーティングをするのはどうかな?」


 「賛成! ファミレス行こうぜファミレス! 俺腹減っちまったよー」


 そう言っていつの間にか縄をほどいていたリチャードが椅子から立ち上がる。


 「じゃあ俺は一番高いのでも頼もう。人様の金で食う飯は最高に美味いからな」


 「え゛っ」


 これ完全に忘れていたわね。だって立ったまま完全に硬直しているもの。


 「あきらめろリック。今回はどう考えてもお前が悪い。それと私もこの後の予定は特にないから構わないぞ」


 「では、商店街にあるいつものファミレスに決定としましょう」


 次の目的地を決め、彼らは生徒会室を後にする。


 「待ってくれよ! せめて顔を拭く時間だけでも! ってこれ全然取れねえじゃねえかよぉーーーー!!!」


 油性ペンの落書きが顔に刻まれた自業自得な男約一名をその場に残して。

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