2 生徒会
午後三時四十五分 海賀高校 生徒会室
「今戻った」
「キタキタ。おー今日もいい顔して寝てんねぇコレ」
「お疲れ様です成田先輩。いつもありがとうございます」
成田来夏が生徒会室に戻ると、そこには既に業務を始めている生徒会長と会計がいた。
「貴海会長こそお疲れ様。この調子だと、一通りの書類に目を通したところだろうか」
「うん。火急の案件がいくつかあったからそっちを優先して処理していたわ。今はミスがないか確認のためにリチャードさんに二重チェックをお願いしていたところよ」
「ええ、とりあえず火急の案件は優先して対応しましたが、漏れや正確性の確認のためリチャードさんに二重チェックをお願いしていたところです」
ロジェリア・貴海・アグレ生徒会長。白い肌に白く美しい髪の毛を持つその姿から、学内でも非常に目立つ存在だ。当初はその姿の異端さから白い目で見られていたようだが、それらを自らの実力のみで跳ね返し、気づけば誰よりも人望を集める存在となっていた。
実際、生徒会長の席に着いてからの彼女のその仕事の速さにはいつ見ても驚かされる。彼女が生徒会長となったのは、実際にその業務に対する姿勢を見ていれば必然だったと思わずにはいられない。
「こっちも問題ないよー」
軽そうに言いながら金髪の髪を揺らして会計の仕事と書類のチェックを同時並行でこなしている彼、リチャードはこちらを向くと、ニヤリと笑った。
リチャード・ベルヴィル。周りからはリックと呼ばれ、生徒会の会計を担当しているアメリカからの留学生だ。彼とは普段生活している寮のような場所も同じなのだが、気さくで誰とでも仲良くなれるムードメーカー的な半面、とにかく悪戯が大好きで誰彼構わず悪戯を仕掛けるのが悪い癖だ。そして何より女好きなことが祟って女子からの人気は無く、せっかくのイケメンが完全に台無しになっている。
「リック、そこの席にこれを置いていいか? 少ししたら起きると思うんだ」
「構わないぜー」
確認を取ってダニーを椅子に座らせると、ニヤニヤと笑うリチャードがこちらへと近づいてきた。こいつ、間違いなくダニーに悪戯をしてやろうと考えてるな。
「ダニー? 起きてないよなー? へっへっへ、今日は顔に文字書いてやろーっと」
ゲス笑いしながら油性ペンを持ってダニーに近づくリチャードが、ダニーの顔面に悪戯書きをしようとしたその瞬間、リチャードは動きを止めた。
どうしたのだろうかと彼の顔を覗き込むと、ダニーの目が完全に開いており、眼前のリチャードとしっかりと目が合っていた。
「おはようリック。早速聞きたいことがあるんだが、今何しようとしていた?」
「おはようダニー。今ちょうど計算結果を書こうと思ってたところなんだ」
「その割にはホワイトボードと真逆の方向に来ているようだが」
「先にトイレに行こうと思ってな」
「油性ペンを持ったままでか?」
「急に行きたくなったもんでな」
「リック」
「おう」
「今日の晩飯、奢ってくれるよな?」
「Oh……」