24 次なる試練
『おま……凄いな。本当に素人か……?』
ファントムとの戦いを終え、どっと力が抜けてへたり込む天多の通信機に、詩音の驚愕と期待が入り混じったような声色でそんな言葉が送られてくる。
「はは……なんとかなりました」
驚く詩音に対し、すでに限界といわんばかりの震えた声で返事をする。
「はぁ……はぁ……もう……一歩も……動けない……うぅ、頭いてえ……」
無意識の超集中状態が切れた天多は、自分が想像した以上に体力を消耗しており、前に無意識で戦った時と同様に強烈な頭痛に襲われていた。
「これで……クリアですか」
吐き出す息に何とか言葉をのせて訓練終了の確認を取る。
『お疲れ様だ、凄かったぞ。ユスティス全体でも外部入隊で初見クリアしたのはお前で3人目だ』
「やった……はは……」
『よし、少し休んで息を整えたら突破記念に——』
『第1試練突破記念にいいことを教えよう、天多君』
突如、詩音の声を遮るように割って入った声に疲れで瞑りかけた目が開く。
「その声……リーダー、今なんて言いました?」
天多と詩音の通信に割って入ったのは、藤宮副隊長だった。
なぜだろう、とんでもなく嫌な予感がする。
集中状態が切れていようとも感じられるほどの強烈な危険を察知した天多は、藤宮の次の言葉を待たず限界を超えた体に鞭を打って動きだした。
何かはわからないが、おそらくもう数秒もしないうちに何かが起こる。そう判断した時点で、残されたわずかな時間でできることを実行に移した。
即座に自分にエネルギーセルを使用する。
ここにきて初の運用、回復速度を見るに最大チャージにかかる時間は4秒ほどだろう。急速リチャージというだけあってわずかな時間で回復が可能なようだ。
『天多君、キミはどうやら僕らが想定している以上のポテンシャルを秘めてるようだね。そこでそんなキミに朗報だ』
「……!」
ッ! 間に合え!
エネルギーセルを使用してエーテルを最大までチャージすると即座に自動バリアを起動する。彼が口を閉じる頃にはそばに落ちている光剣を拾い上げて予測不能の何かに対しての備えを整えた。
『ファントムには、時々白ローブがセットで付いてくるんだ』
『……ッ、躱せ! 天多!』
ガキィン!
「……は?」
天多は、詩音の通信に合わせて瞬時に回避行動に移る。
鋭い反応速度で動いた体は、相手の攻撃に対して完璧に対処していた。
はずだった。
光剣を拾う動作のまま前方へと飛び込むように回避したとき、何かが目の前を確かに横切ったのを確認した。それの形こそ見えないが、速度や狙ってきたという点から、それが弾丸であることは想像に難くない。
天多はそれを確かに躱した。躱したはずなのだ。
しかし、回避したはずの弾丸は突如として発生したホログラムの火花のようなものと共に、天多の目の前に展開されたバリアにはじかれていた。