11 救援
「どうしてお前が……?」
「詳しいことは後だ。今は少し休んでろ」
白ローブを睨みながらそう返すダニーは、機械刀と傘状の武器を構えなおすと、周囲を一瞥したのち舌打ちをする。
そこで俺はようやく気付いたのだが、ダニーの持つ機械刀が青白いライン上の線を走らせた姿へと変化し、さらには刀身にも青白い刃を展開させていた。そういえば、黒衣の人物が使っていたときは機械刀ではなく光の刃で、武器に走る線の模様と光の刃が赤色に発光していた。一体どういう仕組み何だろうか。
「時間稼ぎか」
「……」
白ローブはそれに対して何を返答する訳でもなく、ただ武器を構えて戦闘態勢へと入り、こちらへと対峙した。
睨み合う両者は互いに武器を構えるが、どちらも動く気配はなく、寧ろ相手の一手を待っているような状態だ。永遠にも感じられる静寂が流れる。
なぜ動かないのだろうかと、ダニーの方を見やると、どうやら相手の持つあの短剣を警戒しているようだった。対して白ローブはダニーの実力を推し量っているのか、その動きを見逃さまいとしているように見える。
「やめとけ。今のテメェじゃ勝てねえぞ」
どちらが先に仕掛けるのかと思った矢先、ここにいる誰とも違う声によって突如としてその静寂は破られた。
そいつはいつの間にそこに現れていたのか、白ローブと同じローブを纏った奴の仲間と思われる人物がそこにはいた。
「チッ」
「ハハッ、悪く思うなって。そもそもファントムが逃げる時間稼ぎが済んだらさっさと帰ってくる予定だっただろ?」
明らかにバツの悪そうな態度をとる短剣使いを尻目に、そいつは俺達の方へと向かって歩いてきた。
「そこのてめえらサマよ、うちのアホが悪かったな。目的は済んだから、俺達はそろそろお暇させてもらうぜ?」
「逃がすとでも思ってるのか。」
「ああ逃げられるぜ? 前と同じようにな。それに———」
奴の身体がほんの少しだけ動いた気がした。
そして、気付いた時には俺の目の前には拳が繰り出されており、それを間一髪のところでダニーが防いでいた。
「今のてめえサマに、そこにぶっ倒れてるボロ雑巾を守りながら俺サマに勝つなんて……百無理だろ、な?」
理解が追いつかなかった。だって、あいつとの距離はまだ30メートル近くあったんだぞ。さっきの黒衣の人物の速度ですら普通ではなかったが、その速度を一度見た後でさえ、こいつの速度はその比にならないと俺は感じていた。
「そういうわけだ。今はここで見逃してやった方が、てめえサマの為になると思うぜ?」
そういうと踵を返して仲間の方へと軽い足取りで戻ってゆくアイツを、ダニーは警戒を解かずに睨みつける。
「……次は必ず仕留める。」
「おりこうさん♪ それではてめえらの皆々サマ、御機嫌よう。」
こちらを向いて深く一礼すると、その姿が一瞬にしてどこかへと消え去る。俺達はそれをただそれを見ているしかできなかった。




