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花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第32話】

「食べちゃうぞ」

「余計、たちが悪いわ!」

「この'ハラミ'がなんともーー」

「最近、ちょっと太ったからな」

「あのさ、私ちょっと行きたいところがあるんだよねえ。付き合ってよ」

「やだ。明日も仕事・・・」

彼女は拳銃を構えていた!

「奨励してんじゃねえんだ。命令してんだよ」

いつにもなく静かな花邑杏子。

義範は、ありったけの勇気を振り絞って言った。

「いつまでもそんなもんに怯えていると、本気で思ってるのか?」

「あなたは、私の言うことを聞いていればいいの。恋愛も結婚も出産も、そしてーーお別れのときも。今回のお出掛けだって!」

「やだ。今日は『絶縁!ヤギ娘』のレベル上げに徹するんだ」

「なんですってぇ・・・」

おもむろにスーツを脱いだ花邑杏子は、拳銃を構えながら、タンスを物色している。いいものを見つけたようだ。それはあの、特効服だった。捻り鉢巻きをしているときに、拳銃を押さえてもよかったが、暴発しただけでも警察沙汰になるのに・・・

「しょうがねえなあ」

花邑杏子は何処かに電話をかけた。

「あー車回して。あと若いもん数人ーー」

「なにがあっても、俺は行かないからな!」

彼女はまだ電話をかけているーー

「よっしゃ。社会科見学に行くぞ」

「何処に?」

「着くまで内緒♪」

かくして、車と若いもん数人が到着した。

「とうとう、この日が来たか」

「お嬢も好きだからーー」

「???ーー」

義範には、これからのことが全く理解できなかった。

「ほら、あんたも行くよ」

「だから何処に?」

「いいところ。なんたって、おねえちゃんがいっぱいいるんだからーー」

「お前がそういうところで遊ぶなんて」

「あなたには見せていない顔があるのよ」

「見抜けない俺が迂闊だった」

「さーー行きましょう」

ドキドキしていた。これから起こるであろうマーベラスな展開に。おねえちゃんがいっぱい。おねえちゃんがいっぱい・・・

デレデレいていたらーー

「やい!お嬢から離れるんじゃねえぞ」

叱られてしまった・・・

かくして、一行はいつもとは明らかに違う車ーーハイエースに乗り込み、寝静まった街を疾走した。

車はすぐに街から離れ、今はある山間部を走っている。街灯も少なく、辺りは闇に包まれていた。

「あのさ、今は何処にいるのーー?」

「・・・・・・」

花邑杏子をはじめ、若いもんのひとたちも返事をしなかった。

義範以外は行き先を把握している。相手は極道だ。散々痛めつけられた挙げ句、放置ーーなんてことをするかもしれない。

もしかしたら、麻薬の取引に行くのかも!

(お嬢も好きだからーー)

あの、たぐいまれな美貌は、麻薬を吸って得られたものかもしれない!それはいくらなんでもまさか・・・精神はイカレているが安定感があるから、やっぱり当てはまらないかーー

そんな想像を繰り返す義範をよそに、車は夜道を走り抜けるーー

何時間走っただろうか。暗闇からドライブ・インが見えた。

「ちょっと、休憩な」

花邑杏子を先頭に、ラーメン屋へとなだれ込んでいく。

「私はラーメン。若いもんたちはーーチャーシュー麺大盛6人前ね」

店主は義範を一瞥すると

「あいよ~」と声を出した。

花邑杏子以下、誰も私語をしない。それが異様で仕方がない。

料理が出てきた。それといって特徴のないラーメンだった。しかし、これが絶品だった!皆、一心不乱に食べている。義範はあてがわれたチャーシュー麺大盛を残さず食べるため、必死だ。皆より少し遅れて食べ終わった。そしたら

「出発するよ」の合図がなされた。

また、無機的に待つことしかできないーー

今度の停車は15分後。なにやら、怪しげな建物が。

花邑杏子を先頭に、建物のなかを練り歩く。そう!ここはーー

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