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第28話 両片想い?

「あと......わ、私好きな人いるからその人以外とは付き合いたくないかな」


 有栖は頬を赤らめながら髪をくるくるさせて言った。

 

 それを聞いた時、凪沙は様々な感情に囚われた。そして無意識に思った。

『その相手が俺だったらな』と。


 凪沙はすぐに我に帰った。

 (え、いやいや......俺何考えてんだ。だって、そんなのまるで......)


「有栖に......好きな人?」

「なーんてね、冗談冗談。別に今はいないよ」


 有栖はそう言って発言を撤回し、ニコッと笑った。

 凪沙の胸は知らず知らずのうちにドキドキとしていた。


 凪沙は今まで自分の気持ちと向き合っていなかった。

 それはまだ咲き始めであり、憧れのような感情と一緒になってしまっていたから。

 しかし今だと言える。この感情は恋なのだと。


 (俺が有栖に恋してる......?)


「なーくんは好きな人いるの?」

「え、あ、別にいないかな」

「まあそっか。なーくん、私とか楓華ちゃん以外の女子とあんまり話さないもんね~」


 意識すればするほど鼓動は加速していく。

 凪沙はそれを静めるようにゆっくりと息を吸った。


 あくまでも平静を装わなければならない。

 凪沙が有栖のことが好きだとわかっても友達という関係性が気まずくなってしまってはいけない。


「有栖が来る前はぶっちゃけ酷かった。紡木以外の人と全く話してなかったから有栖には本当感謝してる」

「私、そんなことした?」

「うーん、まあ来てくれただけで助かった?」

「あはは、何それ」


 それから凪沙と有栖は何気ない会話をしつつ、ゲームを楽しんだ。

 気がつけば夕方となっていた。


「じゃあなーくんまた学校で」

「うん、ばいばい、お邪魔しました」


 凪沙はそう言い、帰路についた。

 道中何度も有栖のことを考えては意識してしまっていた。


 (......あの頃の初恋の続きでは少なくともない。だってあれはもう終わっている。それにお互いに成長していて関係性も変わっている。だから俺は今の有栖に恋をしている。これは断言できる)


 ***


「なーんか、お前様子変わった?」

「様子?」


 昼休み。

 

 凪沙は有栖への恋を自覚し、今まで通りと変わらない態度を取っていたものの紡木の邪眼は誤魔化せないらしい。

 紡木は怪しげな目で凪沙をじーっと見た。


「別にいつも通りだけど......」

「いや、質問を変えよう。有栖と凪沙、何かあった?」

「......なんもないっす」


 凪沙は紡木から無意識に目を逸らした。何もないと言えば嘘になってしまう。

 二人きりで、しかも有栖の家で遊んだのだから。


 紡木はジト目で凪沙を見ている。


 (言えない。事故だとは言えブラ見ちゃったなんて口が裂けても言えない......)


 凪沙が沈黙を貫いていると、紡木はそれ以上深入りしなかった。

 そしてあろうことか自己完結をさせてしまった。


「うんうん、そうだよな。可愛いし性格いいし、しかも幼馴染だし、好きになる要素しかないもんな......ってことは両想いかなあ。にしても凪沙遅かったなあ」

「おいおい、ちょっと待て。一人で自己完結させるんじゃない。俺は別に好きって訳じゃないからな!? ただ......うん」


 凪沙は有栖のことを意識してしまい頬を赤くさせた。

 

「それを好きって言うんだよ! あと野郎の赤面なんて誰も見たくない!」

「お前も妹と同じこと言うのかよ......あと両想いってどう言うことだ? 有栖は俺を友達だと思ってるだろうしそれはないだろ」


 凪沙がそう言うと紡木は呆れ顔で凪沙を見た。


「お前、それ本気で言ってんのか? 多分有栖も凪沙のこと好きだぞ。距離感前と違うし、凪沙と接しているときの表情が前と違う」

「有栖が俺のこと......?」


 たしかに思い返してみればいつもの有栖らしくない態度だったりセリフだったりが最近ある。

 しかしそれを好きに繋げて良いものなのだろうか。そもそも元の有栖の距離感が近すぎるので区別がつかない。


 有栖は少なくとも友達と思っているはず。凪沙はそう思っていた。

 少しの願望はありながらも。


「それはないと思う」

「ん......そっか」


 紡木はこれ以上の話をするのをやめて、話を切り替えた。


「ところでもうすぐ夏休み明けにやる体育祭の練習始まるな。同じチームなれるといいな」

「俺も紡木と同じチームになってほしい。だってお前足速いし」


 紡木はこの学校で1、2位を争うレベルで足が速い。

 中学校では陸上で全国大会に出たのだとか。

 おかげで陸上部からスカウトされまくっているのだが紡木曰く陸上は面倒くさいから入らないらしい。


「今回本気で練習して本気で走って女子たちキャーキャー言わせたいな。それでモテたい......ふふ、この計画が成功すれば今年のバレンタインでは下駄箱がチョコで埋まっているはず」

「そういう発言してるからモテないんだ」

「うぐっ......それを言われると傷つく」


 友達としては面白いので良いのだが、露骨にモテようとしなければ紡木は今頃彼女ができていたことだろう。

 

 


 




 





 




 


 


 

 


 

正直連載当初はここまで続けられると思っていませんでした。

ちょうど11月1日に月間1位を取らせていただいたりと本当に嬉しい限りです。ありがとうございます。

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