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第26話 兄として

「あー、負けた~。やっぱりレベル上げないとダメか~......っておにい~、聞いてる? ねえ、おにい~」


 ゲームオーバーの文字が書かれたテレビ。

 凪沙と夏目はコントローラーを持ち、凪沙の部屋で協力型のゲームをしていた。


 しかし今日の凪沙は全くゲームの内容が頭に入って来ず、ほぼ無意識にゲームをしていた。

 そんな様子の凪沙を見て夏目は少し口を尖らせた。


「おにいー!」

「......!? あ、ああ、ごめん、ぼーっとしてた。そうだよな、レベリングしないとな」

「なんかずっとこんな感じじゃん。体調悪いの? それとも私とゲームやるの......嫌だった?」

「いや、別にそんなんじゃない。そんなんじゃないんだけど......」

「そんなんじゃないんだけど? ......っておにいなんか顔赤くない?」


 妹に頬を突かれて、凪沙はハッと気づいた。

 全体的にクーラーをつけているにも関わらず、体が熱いのだ。


「今日のおにいなんか変、学校でなんかあった?」

「あー、い、いや別に特に何も......」


 夏目はじっと凪沙の顔を覗き込んだ。凪沙はその視線に耐えきれず目を逸らした。


「野郎の赤面なんて誰が見たいんだか......」

「え、ひどくないっ!?」

「ツッコミのキレは健在......となれば、うーん」


 (さっきから俺ずっと有栖のことばっかり考えてんだよな。階段のこととか、突然のデレとか。脳の処理が追いついてない)


 考えれば考えるほどにまた体は熱くなっていく。変な感覚だ。体調が悪いのだろうか。

 

 (もしかしたら疲れているのかもしれないな。レベリング終わったら切り上げて寝させてもらおう)


 凪沙は机に置いてある冷たいお茶を飲み始めた。

 そのタイミングで夏目は一つの結論を出した。


「あっ、有栖さんと何かあった?」

「ぶふぉっ......げほっげほっ」

「あ、ビンゴじゃん。おにい、わかりやすっ」


 コップを置き、吹き出したお茶を拭き終わった後、横を見てみればニヤニヤしながら夏目が凪沙の方を見ていた。


 (我が妹ながら恐ろしや......)


 凪沙は今度は寒気がし、体の熱さもなくなっていた。


「ふーん、じゃあ何があったのか聞かせてもらおうか」

「いや、別に特に何もなかった」

「顔に嘘って書いてある」

「......はいはい、わかりましたよ。と言っても特にお前が期待しているようなものではない」

「そういうのはいいんだ。恋愛と違って話を焦らすやつは嫌われるぞ?」

「やかましいわ!」


 こうなっては部屋から出て行ってくれそうにもないので凪沙は渋々話すことにした。


 ***


「なるほどなるほど、階段で怪我しそうになっている有栖さんを抱き寄せて助けた......と、おにいもなかなかやりますな」


 凪沙が話をしている時、終始夏目はニヤニヤとしていた。

 なぜかとても嬉しそうである。


「いいな、私もおにいに助けられたい。おにいのかっこいいところ見たい~」

「夏目はなんやかんやあって怪我しなさそうだから多分助けない」

「え!?」

「まあそれは置いておいて......その後に一応謝ったんだよ。その......まあレディの体にボディタッチしてしまったわけですし、その後有栖が言ったんだよ......えっと、うん.......まあ」

「え、なんて言ったの?」

「......有栖がなーくんならいいかな、って言って、それでそれ思い出しちゃってゲーム中は顔赤くなってたわけです」


 凪沙は枕を手に取り顔を埋めた。

 思い出しただけで普通に胸がドキドキとしてしまう。


「いや、俺体調悪いのかもしれない。なんか今日おかしい」

「まったく......そもそも女子のデレだけで顔赤くするとかうぶすぎない? というか、それ恋してるって言うんだよ、おにい」

「俺が有栖に? ないない」


 凪沙は胸の前で手を振り、即否定をした。

 (恋か、最近あの頃みたいな感情があるような、ないような......)


 凪沙はふと脳裏に有栖の笑顔が横切り、胸がドキッとしてしまった。


 (やっぱり俺......いやいや、そんなわけないだろ。って言うか美少女にあんなこと言われたら男子全員胸ときめいちゃうだろ)


 そもそも凪沙が有栖のことを好きになったからと言って有栖にその気がないのなら何も起きない。

 何も起きないのなら変に意識するより友達の距離感でいた方が良い。


「じゃあ俺はそろそろ寝る。続きはまた明日、明日は多分とことん付き合える」

「ふふん、やったね」


 夏目は立ち上がり、部屋のドアノブに手をかけた。

 凪沙も同じく立ち上がって片付けを始めた。

 

 しかし夏目は開けることなくそこで動きは止まった。


「ん、どうした?」

「......なんかさ、最近のおにい前より笑うことが多くなったし明るいから安心した。前のおにいちょっと暗かったから、実はちょっと心配してたんだよ」

「そっか、心配してくれてありがとうな」


 (心配させてたんだな......妹に励まされたり、心配されたり、情けない兄だと自分でも思う。けど良い背中頑張って見せないとな)


 凪沙にとって夏目は大切な家族であり妹。


 凪沙は夏目の元へ行き頭を撫でた。

 若干ブラコンモードなのか撫で終わるとすぐに夏目は凪沙に抱きついた。


「......えへへ、おにいの匂い。私、おにいが私のお兄ちゃんで良かった」

「それは俺もだ」

 

 


 


 




 


 



 



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