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第19話 変態っ!

『なーくん、なーくん、花冠似合ってるかな?』

『うん、可愛いよ』

『やったー、なーくんに可愛いって言われちゃった~』


 小さい頃の思い出。


 有栖は凪沙が作った花冠をつけてはしゃいでいる。


 自分の作ったものが朗らかな少女に喜ばれ、そしてその笑顔を見ると、少年は少し気恥ずかしくて視線を外した。


『そういえば有栖の誕生日っていつ?』

『うーんとね。七月七日。ちょうど七夕の日!』

『七月七日、今日が四日だから......ってことはもうすぐじゃん。じゃあそれあげる。誕生日プレゼント代わり』

『いいの!? なーくん』

『うん、良かったらあげる』

『ありがとう! なーくん! なーくん、大好きー!』


 有栖は満面の笑みを浮かべ、凪沙に抱きついた。

 凪沙の顔は、幼いながらも赤くなっていた。


 ***


「おーい、凪沙くーん、授業終わったよ」

「......ん」

「えい!」

「いてっ!?」


 頭に衝撃が走ったので、目を開け、横を見てみると有栖が立っていた。

 どうやら授業中にも関わらず眠ってしまっていたらしい。


 (......なんか懐かしい夢を見たような、見なかったような)


 凪沙は一度背伸びをした。


「俺、いつから寝てた?」

「割と最初の方から」

「......まじか」

「それにしてもそんな夢見てたの? 授業中に私の名前を呼んじゃうなんて」

「え! 本当に!? うそ!?」


 (俺が授業中に有栖の名前を......?)


 意識がない状態だったとはいえ、想像しただけでも非常に恥ずかしいことである。


 凪沙は顔を紅潮させた。

 

 しかし、有栖は『引っかかった~』とでも言いたげな表情で笑った。


「うん、嘘」

「......びっくりさせないでくれ」

「あはは、ごめんごめん、揶揄いたかっただけ」


 凪沙は胸を撫で下ろした。顔の赤みもだいぶ引いていた。


 しかし、冷静になってほぼ最初から寝ていたとはどういうことだろうか考えてみた。


 今、凪沙の机に置かれているのは何も書かれていない白紙のページが開かれたノート。

 前のページを見てみても昨日の分だけ書いてあり、今日の分は書かれていない。


 (......あっ)


 凪沙は顔を青くした。

 授業中に寝ていた時点でアウトなのだが、流石にこれ以上内申点を落とすわけにはいかない。


「あの、有栖さん......」

「ノート取り忘れたので写させてください、でしょ?」


 有栖は凪沙の言葉を遮り、まるで心の中が筒抜けになっているかのように次凪沙が言おうとしていた言葉をそのまま言った。


「話が早いことで、なら......」

「けどダメ。授業中に寝ている方が悪いです」

「うぐっ......」


 そう言われてはぐうの音も出ない。

 そう言いつつも、有栖は閉じたノートを広げて机に置き。友達のところへ行った。


 (あれ、これ前にもあった展開では......?)


 そう思いつつも、凪沙は有栖に心の中で感謝して、有栖のノートを写し始めた。


 すると、落書きが書かれており、よく見てみればフィンランド語の文字が並べられていた。


『勝手に見ないで、変態っ!』


 凪沙の行動を逆手にとっている。

 有栖は一瞬凪沙の方を見てニヤッと笑った。


 (おい......って言うか、これ大丈夫なのか......?)


 しかしフィンランド語で書かれているので、凪沙以外の誰も気づくことはない。


『落書きいけないんだ~』と凪沙は書いておいて、気にすることなく続けてノートを写し始めた。


 (今日の日付は......七月四日か。ん、七月四日......)


 そしてノートの一番上に日付を書いた時だった。

 先ほど見た夢の内容を思い出したのだ。それに加え、有栖の誕生日も。


 (.......あっ、すっかり忘れてた。有栖の誕生日七月七日......七夕じゃん)


 七日は金曜である。そして現在は火曜日。

 友達としてプレゼントを用意しなければならないのだろうが、あと三日で用意できるのだろうか。

 

 有栖は凪沙に自身の誕生日を明かしていない、だから祝われなくてもさほど傷はつかないだろう。

 しかし、凪沙としてはお礼も込めて渡したい。


 (ていうかなんで誕生日言ってくれないんだよ、別に言ってくれればいいのに)


 凪沙は少しモヤっとしたのでフィンランド語で『バカ』と有栖のノートに書き、罵り返しておいた。


 ***


「え、それで何~。有栖へのプレゼントについてアドバイスして欲しいと~」


 いつも通りの語尾の伸ばし方で楓華はそう言った。

 

 放課後。

 有栖のプレゼントを何にしようか授業中も考えていたわけだが、思いつかなかったので有栖以外の女子に聞いてみることにした。

 となると、話せる有栖以外の女子と言ったら楓華しかいない訳である。


「お願いできます?」

「ん~、どうしよっかな~。まあいいや、私もちょうど有栖へのプレゼント見に行く予定だったし行くか~」

「ありがとうございます!」

「貸し一つね~」


 そうして、凪沙は楓華と共に有栖へ送る誕生日プレゼントを見に行った。

 



 





 


 










 


 


 



 


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― 新着の感想 ―
[一言] 有栖が男性に絡まれた時は普通に助けたのに、たた昔遊んだ幼馴染だと言うだけなのにね。 有栖に楓華との事(今回の買い物)で誤解されたりするパターンかな。 昔一緒遊んだ公園とかで偶然出会いとかイベ…
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