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第18話 美の苦悩

「はあ!? お前まだ言ってねえの!?」

「......はい」


 朝、登校直後に紡木から「よ、幼馴染同士での勉強は楽しかったか?」と弄られた凪沙。

 しかし、まだ明かしていないことを伝えると紡木は目をパチパチとさせて驚きの表情を見せた。


「ヘタレにも限度があるってもんだろ」

「......はい」

「まあ、うん、いつかは言えるようになるさ」


 紡木はジトーっとした目をしながら凪沙の肩をトントンと叩いた。


「で、勉強は捗ったのか?」

「......後半、俺と夏目と有栖でゲームしてた」

「おい、ヘタレ、何やってんねん」

「でも楽しかったから悔いはない」


 (結果論でもテストの点数が良ければ問題なし。......そう、良ければ問題はない)


 結果がどうなるかは未来の凪沙にかかっている。


「今回載るかな、自信ねえんだよな。得意単元じゃねえし」


 毎回、定期考査の数日後には廊下に成績優秀者上位五名が張り出される。

 凪沙はそれに載ったことはない。


「と言いつつも、紡木は大体総合5位以内入ってるよな」

「まあ、まぐれだ、まぐれ」

「まぐれでも簡単に載れるようなものじゃないんだよ」


 紡木は勉強もそこそこできて、運動もできる。

 加えてクラスの人気者。


 モテる要素しか持っていないわけなのだが、ただ一個がダメなせいで、モテていない訳なのだ。

 それは露骨にモテようと努力している点である。要はカッコつけようとしている癖に女子との接し方に慣れていないのだ。

 そのせいで『友達としては面白いやつ』と女子から見られるのだが所詮友達止まりなのだ。


 紡木に対して好意を抱いていそうな人はいない気はしないが、彼女いない歴イコール年齢という事実を見ると、可能性は低いだろう。


 (......待てよ、逆に人気者だからそれが仇となっているのでは?)


 真剣に紡木が何故モテないのか考えていると、紡木が女子に話しかけられていた。

 凪沙は少し聞き耳を立ててみることにした。


「おはよう、紡木くん」

「あっ、おっはー、あれ? 髪型変えた? 可愛いね」

「......えっと、昨日と同じだけど」

「......」

「じゃ、じゃあ、またね」


 (ああ、うん、これはモテない訳だ)


 その女子が去ったあと、凪沙は紡木に助けを求められた。


「......お前の目は節穴か。だからモテないんだよ」

「ぐはっ......」


 ***


 その日の放課後。


 有栖と帰るわけでもなく、紡木と帰るわけでもなく。

 一人で廊下を歩いて昇降口を目指していると、廊下の窓に楓華が寄りかかっていた。

 スマホに目を落としている。誰かを待っているようだ。

 

 (挨拶した方がいいかな、それともそのまま無視して通り過ぎた方がいいかな)


 またしてもヘタレ発動である。


 (ばいばい、なんて言ったら無視されないかな。無視はされないだろうけど......いやでも変じゃないよね!)


 と、凪沙が頭の中で色々と考え込んでいると、楓華が凪沙に話しかけた。


「やっほ~、凪沙。一人で帰るの~?」

「えっと、どうも。うん、一人で帰るつもり」

「ふーん、そっか」

「楓華は?」

「私は他クラスの友達待ち~」


 (コミュ力の低い俺でも話していて楓華とスムーズに話せる。さぞ、コミュ力が高くて友達が多いんだろうな)


「じゃあ、俺はこれで......」

「あ、ちょっと待って」


 凪沙が帰ろうとすると、楓華がそれを阻止した。


「そういやあんたに聞きたいことあったの忘れてた」


 楓華はそう言って凪沙を近くの階段まで引っ張った。


「な、なんでしょう......」


 楓華はスマホをしまい、少し真剣な表情をしている。


「あんたさ、ぶっちゃけ有栖のことどう思ってる?」

「うーん......大切な人? 恩人? 表現するのは難しいけど友達だとは思ってますけど」

「......」


 楓華はしばらく凪沙を無言で見つめた。

 (こ、怖いんですけど......)


 凪沙は無意識に目を逸らした。


「......そっか」

「それがどうしたの?」

「有栖ってあの容姿だしモテて男性絡みのトラブルが多いからさ。凪沙が有栖のこと好きでも別にそれは人の恋路だしいいんだけど、仲良しグループできたばっかだし、有栖とは友達みたいな関係でこのままいて欲しいなって.......ま、今のところ男子で一番有栖と仲良いの凪沙だし、有栖を守って欲しい、っていうか。そう言うとなんかちょっと変だけど.......」


 男性絡みのトラブル。つい最近でもあった。

 凪沙が助けたから良かったものの、それでも有栖に少しトラウマを植え付けることになった。

 それに有栖の性格もある。だから余計に嫉妬が増えてしまう。

 

 学校内もそうだが学校外のトラブルにもどうしても巻き込まれてしまうだろう。

 そうなった時、一段と危険度が増す。


 それを考慮して楓華は言っているのだろう。

 心の底から友達を心配しているようだ。


「もちろん。当たり前だ。有栖は大事な友達だし。困った時は助け合いって良く言うでしょ?」

「ありがと......なんか大体あんたの性格が掴めたような気がする」


 楓華が言い終えた時、楓華の友達らしき人がこちらに気づいた。


「楓華、何やってんの? もしかして告白~?」

「なっ、違うし~!」


 楓華は少し顔を赤くした。


「ま、そういうことだから~。じゃあね~、凪沙」


 ふわふわして能天気な人物だと思っていたが、内心では友人思いの懇篤な人物らしい。


 







 


 








 


 


 



 





 






 

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― 新着の感想 ―
[一言] これは良いNTRが書けそうです
[一言] 幼馴染エピソードの手札も効力ある旬なうちに切らないと…普通に誰かに利用されるか、今更言われても何てパターンも(そんな世界観では無いと思うが) 主人公の独り相撲も寂しいので、相手にも気付いて…
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