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第15話 テンション高くない?

 休日の朝は最高に気分がいい。学校がないからだ。

 故に布団の中が心地いい。抜け出せない。目は覚めているのだが、動けないのだ。


 (ふあああ、二度寝するか)


 そう思い、仰向けの体制から横向きになろうとした時だった。

 お腹の辺りが少し重たいことに気がついた。


「......?」

 

 そしてうっすら目を開けてみれば、馬乗りになった夏目がいた。


「あ、起きた。おにい、おっはよー!」


 普通に抱きついてこようとしたので、凪沙は肩を掴んでそれを阻止した。


「な、何やってんだ。重たいから離れてくれ」

「れ、レディに対して重たいとは......! これいかに......!」

「と、とりあえず離れてくれ!」


 夏目は口を少し尖らせながらベッドから降りた。

 朝から悪い目覚めである。

 (せっかく人が二度寝しようとしてたのに......)


 大体こういう時は決まっている。


「......おはよう」

「おっはよ、おにい。言いたいことわかるよね?」

「朝から俺とどこか行きたい......と」

「大正解! やっぱりおにいは私のことが大好きだね。シスコンすぎても嫌われるよ~」

「夏目に言われたくないし、そこまで重度じゃない」


 朝なのにテンションが高い夏目と朝だからテンションが低い凪沙。

 

 正直、昨日友人と遊んだので今日は一日ゆっくり過ごすつもりだったのだが、叶いそうにもない。


「.それでどこに行きたいんだ?」

「おにいと映画見に行きたい!」

「ひとりで行くという選択肢は?」

「ないかな、だって終わった後に感想共有したいもん」


 (それもそうか......)


 一人で映画を観るのもまた一興なのだが、感想が共有できないのだ。


「本当は昨日行きたかったんだけど、おにいが友達と遊びに行っちゃったからね。おにいがまず友達と遊ぶなんて珍しいから驚いたけど仕方なかったよね」

「なるほど、それで今日こそ俺と映画に行きたいと」

「そういうこと!」

「それで何の映画が観たいとかは?」

「うーん......そう言われるとない。強いて言うならホラー系、もしくは感動系」

「あー、多分だけど、夏目の好きそうな映画今やってない」

「うっそだー」


 俺はスマホで映画館でやっている映画を見せた。


「......あ、たしかに面白そうなのがない」

「といわけで俺はもう一回寝るから。おやすみ」

「ま、待って! おにい」

「ん?」

「映画じゃなくてもいいから一緒にお出かけしようよ~!」


 夏目は横たわっている凪沙の肩を揺らした。

 

「あー、わかったわかった!」

「やったー! 流石おにい!」


 ***


「次はアニメイト行こ! 新作ゲーム買いたいし」


 結果、凪沙は妹の買い物、加えて頼まれた母の買い出しをすることになった訳なのだが、完全にお荷物要員だった。


「あの、夏目......?」

「ん、どうしたの? おにい」

「もしかして最初から荷物持たせるだけのつもりだった?」


 凪沙は大量の紙袋を抱えている。ちなみに全て妹の買ったものだ。


「おにいと出かけたいのは本当だし、それに映画行きたかったのも本当だよ! でも......えっと、がんばれ! おにい」


 夏目は露骨に視線を逸らした。兄妹共に嘘が下手である。


「少しくらい持って欲しいんですけど......」

「ほら、私レディだからさ。がんばれ! おにい! あははー、新作ゲーム置いてあるかなー」


 凪沙はため息をついた。母の買い出しもあるのでもっと荷物は増えるだろう。

 頃合いを見て切り上げるように夏目に言わなければさらに荷物が増えていく。


「今こそ、貯金していたお金を使うときー」

「ここら辺でやめないとそろそろ金欠に......って」


 ちょうどその時だった。凪沙の目にに見覚えのある姿が映った。


「あ、凪沙くんー!」


 有栖だ。手を振って凪沙の元へ近づいてきている。


「昨日ぶりだね、凪沙くん。凪沙くんもお買い物?」

「ああ、うん」


 (正確に言うと買い物に『付き合わされている』のだけど)


「おにい、早くー......って、え?」


 先に行っていた夏目は少し後ろで凪沙が美少女と話しているのを見て、目をギラリと輝かせた。


「こんにちは」

「あ、こんにちは。あれ、凪沙くん一人じゃなかったんだ。もしかして、凪沙くんの彼女......」

「やっぱりそう見えます!? そう見えちゃいます!? そうなんです、実は......」

「嘘をつくな、夏目」


 凪沙は夏目の頭をチョップで叩いた。


「いてっ......」

「俺の妹で、重度のブラコン」

「あはは、凪沙くんに妹いたんだ。初めて知った。随分可愛らしい妹さんだね」

「初めまして、白鳥 夏目と申します」

「初めまして、凪沙くんの友達の鳳条 有栖です」

「おにいの友達......!?」

「うん、そうだよ」

「あ、時間だ。待ち合わせに遅れちゃう。じゃあね、凪沙くん。また学校で」

「ばいばい」


 そう言って有栖は去っていった。


 (今日も待ち合わせがあるのか。人気者だな。俺たちもそろそろ行くか)


「夏目、そろそろ行くぞ......って、どうした?」


 夏目の方を見てみれば何やらニヤニヤとしている。


「いや、そういうことかって。納得した」

「なんか邪推してない?」

「別に~。さ、ゲーム買いに行こー!」


 妹の謎の笑みに凪沙は少し鳥肌がたった。


 







 


 


 


 

兄妹で仲がいいのは正直羨ましい。ここまで仲が良くても逆に困りますけど。

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