第11話 モテ期到来?
相変わらず幼馴染ということを有栖に言ってはいないが、数日もすれば有栖と普段通りに接せれるようになっていた。
そんなある日のことである。
「ねえねえ、凪沙くん。今週の日曜日さ、一緒に遊ばない?」
凪沙は有栖から遊びに誘われた。
「え? 俺?」
(これは......で、デート......?)
凪沙は少し勘違いをしていた。二人きりで遊ぶと思っていたのである。
しかしそんなはずはなく。
「うん、あとは紡木くんと楓華ちゃんが来るよ」
「......何故そこに俺が?」
不知火 楓華、有栖や紡木と仲の良い同クラスの女子である。
凪沙は学校の活動関係意外喋ったことがないが、かなり明るい人物だ。
「三人で遊ぶにしてもなんか盛り上がらないし、誰か誘おってなった時に凪沙くんちょうど良さそうだなって」
楓華とは同じクラスメイト程度の関係だから打ち解ける必要はあるが、遊びに誘われるのはありがたいことだ。
「なるほど、じゃあ行く」
「やった。グループチャットに追加しとくからよろしく」
凪沙は知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。
***
有栖はアイドル様などと呼ばれ、周りから一目置かれるハーフの美少女だ。
笑顔の破壊力は凄まじい上、誰でもに明るく振る舞う性格。
故にモテる。モテてしまう。
さらに少し天然で鈍感だ。だから『これもしかしたら自分に気があるんじゃ......』と思う生徒が多い。
......要するについに有栖にモテ期が来てしまったというわけだ。
放課後、凪沙は少し用事があり、学校に残っていた。
そしてそんな用事も済み、帰ろうとしていた時だ。
学校であまり使われていない階段、西階段で声が聞こえてきた。
気になったので少し近づいてチラッと覗いてみれば、告白をしているらしい。
(......有栖はやっぱりモテてるな~)
「付き合ってください......!」
「ごめんなさい!」
「なん......で......」
「あなたのこと知らないから......かな。ごめんね」
(......思ったが見てはいけないものではないか? 見なかったことにしておこう)
告白は大変勇気がいるもの。
罰ゲームとなれば失礼というか無礼なのだが、本心からの告白は本人にとって人生を賭けていると言っても過言ではない。
見なかったことにしてそろそろ立ち去ろうとした時だった。
「付き合うまでは無理でも同じ学年なんだし仲良く......」
「......」
「きゃっ......」
告白をした男子生徒が有栖の手首を掴んで有栖を壁に追いやった。
有栖は怯えた顔で震えている。
「......離して、くれる、かな?」
「俺、お前のことどうしても諦めきれない......だからさ、な?」
(有栖は友達だし、流石にこの状況を見過ごせるほどヘタレじゃないんでね。と、その前に......よし、これでいいか)
凪沙は男子生徒の元へ近づき、その生徒の手首を掴み返した。
「あのー、それ以上はやめた方がいいと思うんですけど」
「あ? な、なんだよ、お前」
「さっきやろうとしていた行動次第で人生棒に振ることになっていたかもしれないのは考えなかったんですか? 証拠ありますよ」
凪沙は撮った写真をその生徒に見せた。
それを見た瞬間、舌打ちをして有栖の手首を掴むのをやめた。
「ちっ......誰だよ、お前、邪魔すんなよ」
「邪魔も何も、助けただけです。鳳条さんが怯えていたのがあなたの目には映らなかったんですか?」
「......」
「次もし鳳条さんに何かをやったらこの画像をばら撒きます」
有栖に手を出そうとしたのは非常に不愉快だ。凪沙としても怒りを覚えていた。
(そもそも俺喧嘩とかしたことないし、やりたくもないんだよなあ。まあこれで十分抑止材料にはなるでしょ)
「......あー! くそっ!」
バンとその生徒は壁を蹴って去っていった。
「有栖、大丈夫?」
「こ、怖かった......」
有栖は安堵した様子で、一息ついた。
「手首、掴まれてたけど痛くない?」
「少し痛むけど大丈夫......助けてくれてありがと。普通に、その......かっこよかった」
「ま、まあ友達だし。困ったら助け合いだしな」
(じょ、女子にかっこいいって言ってもらっちゃった。しかも幼馴染......悔いはない)
「あんなこと今まであったのか?」
「いや、なかったよ。あれが初めて」
「......多分有栖は自分が思っている以上に可愛いし、気をつけた方がいいと思うぞ」
「そうだね......そうする」
「じゃあな、俺は帰るから」
そう言って立ち去ろうとした。
しかし有栖は凪沙の制服の裾を掴んでそれを止めた。
「有栖?」
「......ご、ごめん。まだちょっと怖い......からさ、一緒に帰ってくれない?」
ヘタレ主人公脱却?




