アイツ
読んで戴けたら倖せでございますう。ヾ(●´ω`●)
ボクは遥緋の意識に繋がった。
ボクの用意した遥緋の部屋で彼は目を覚ます。
ボクはベッドに腰掛け顔を覗き込んで彼を迎える。
「おかえり、遥緋」
遥緋は半開きの目でボクを見ると言った。
「お前は夢だろ? 」
「夢とはちょっと違う
ここはボク側の世界なんだ······
ボクが存在できる空間に遥緋を呼び込んでいる
遥緋が念を籠めて描いたから、ボクには意思があるんだ」
遥緋はボクの目を見詰めて瞳を震わせた。
戸惑いながら彼は言った。
「·············なるほど」
遥緋は起き上がると周りを見回した。
「現実と同じだけど··········
違うんだ·········」
「ボクが存在できる唯一の世界だよ」
「それで、お前の目的は何? 」
ボクの目的?
「目的があるのは遥緋の方だろ? 」
「オレ? 」
遥緋は目を丸くする。
「だって、悩んでいたんだろ?
マイノリティだってことを·······」
「ああ、それか·············」
遥緋は視線を落とす。
目を伏せる遥緋はまた格別に美しい。
真っ直ぐな鼻筋と綺麗な二重が美しさを一際際立たせる。
思わず見とれてしまう。
不意に上げた遥緋の目と目が合ってボクは我に返る。
慌てて言葉を繋いだ。
「その為にボクを描いたんだろ? 」
遥緋は目を伏せて言った。
「とても苦しかったから、話を聞いてくれる誰かが欲しかったんだ」
身体から力が抜けて行く感じがする。
何故ボクはこんなにも狂おしいほど遥緋に恋をしているのだろう?
ボクはまじまじと遥緋の顔を見詰めた。
ああ、やっぱり遥緋が愛おしい。
色素の薄い瞳が今は陰影に黒く輝いてボクを映す。
この瞼にキスしたいと望んでしまう。
遥緋は視線に耐えかねたようにベッドから降りて机の椅子に腰掛ける。
ベッドに座ったままボクは遥緋を目で追う。
そしてボクに残された言葉を言った。
「遥緋の為にボクは存在している」
遥緋は困惑した顔でボクと目がかち合う。
「オレの話を聞いてくれるの? 」
その一言でボクに存在価値が与えられた気がした。
ボクは微笑んだ。
「もちろん! 」
「オレがお前を好きじゃなくても? 」
無意識に笑みが消えたのが解る。
ボクは言った。
「ボクは諦めた訳じゃ無い
ときめいて貰えないなら、ときめいて貰えるように努力するさ」
そう、ボクは諦めた訳じゃ無い。
ボクが遥緋の理想であるなら、好きにさせる事は可能な筈。
今はそれよりアイツの事が気になる。
「ねえ、アイツは今日も見ていた? 」
「あいつ? 」
遥緋は問うような視線をボクに向ける。
丸くなった目の輪郭が愛くるしい。
「アイツって···········」
ボクは一瞬躊躇した。
ほんの一瞬、それを言うのは良くない予兆を招きそうな気がした。
それでも訊かないでいることもできなかった。
「いつも見てるだろ、遥緋の事·········」
遥緋は少し考える仕草をしてから言った。
「ああ、成橋のこと? 」
ボクは声のトーンを落として言った。
「そう、ソイツ············」
「何故、知ってるの? 」
遥緋は一瞬驚いた顔をして問う。
「夕べこちらの世界でアイツが遥緋を見ていたから、遥緋はそれを日常的に認識していると思ったんだ」
遥緋は椅子の背凭れに凭れかかった。
「そうゆう事か········
どうだったかな、あいついつもこっちを睨んでいるから」
「睨んでる? 」
「あれはどう見ても睨んでる
あいつは気付いているのかもしれない、オレが同性愛者だって事を····」
それが間違っている事をボクは知っている。
だから敢えて沈黙した。
否定する言葉が遥緋にとって安堵する事なのは解っている。
ボクが思っている事はおそらく間違ってはいない。
たからこそ何も言いたくは無かった。
「成橋がどうかしたのか? 」
「いや、ちょっと気になっただけ··········」
成橋のあの熱烈な視線を遥緋が誤解していることに、ボクは急に気分が軽くなった。
あの視線に遥緋は心を動かされてしまうのではないか。
別の誰かに恋をしていれば、ボクにときめかないのも納得が行く。
でもボクの心配は考え過ぎだったみたいだ。
読んで戴き有り難うございます❗m(_ _)m
裏の空き地にフキが生えてるんですよお。
うちの人たちフキ大好きで、二回もそのフキを大量に取って、晩御飯のおかずにしました。
0円生活です。笑