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エトランジェ  作者: 楓 海
3/11

恋人繋ぎ

 読んで戴けたら倖せです。゜+.゜(´▽`人)゜+.゜

 ボクは立ち上がると目を閉じたまま深呼吸を二三度繰り返した。


「大丈夫か? 」


「大丈夫」


 遥緋(はるひ)がボクを心配してくれている!

 

 なんと言う倖福感!


 落ち着け心臓。


「ねえ、遥緋」


 遥緋は問うようにボクに視線を向ける。


「ボクに名前を付けて欲しいんだ 

 キミの理想の恋人に名前を付けて」


 一瞬遥緋は戸惑った表情を浮かべた。


「理想の恋人··········? 」


 それから俯いて地面に視線を落とす。


「名前かあ··········」


 そう呟くと、スマホを取り出して何かを検索し始め、少しして(おもむろ)に言った。


「朔·········新月って意味なんだけど········」


「何故、その名前を? 」


 遥緋はボクを試すような目でボクを見て言った。


「存在していないようで存在している」


 ボクはその名前が凄くボクの事を上手く表現しているように思えて、とても満足だった。


「ありがとう、気に入ったよ」


 ボクは遥緋が安心できるように笑って見せた。


 遥緋はホッとした表情を浮かべた。


「ボクはキミの理想だから、既にキミに恋をしているんだ」


 興奮して思わず余計な事を口走ってしまった。


 遥緋は一端、目を伏せ、それから上目遣いでボクを見て目で笑いながら言った。


「凄く不思議だよ、理想が目の前に現れて告白されるのは」


 上目遣いは反則だ。


 今すぐ抱き締めてキスの雨を浴びせたい!


「本当にここはオレの理想の世界なんだよね」


 念を押すように遥緋が言う。


「そうだよ、何も心配はいらない」


「なら··········」


 遥緋は悪戯っぽい笑みを浮かべ、ボクの手を取って指を絡め恋人繋ぎにした。


 興奮のあまりボクは叫びそうになる。


 胸が高鳴って鼓動の音が煩い。


 遥緋から恋人繋ぎをしてくれるなんて!!


 堪えきれずボクは、よっしゃあ!!と声を上げる。


 遥緋は繋いだ手を引いて駆け出した。


 ボクは恋人繋ぎが嬉しくて、顔がニヤケてしまう。


 学校に近付いて来ると遥緋の表情は硬くなって行った。


 ボクにはその理由が直ぐに解った。


 恋人繋ぎを気にしての事。


 ボクは言った。


「大丈夫だよ、信じて」


 遥緋は不安そうにボクを見た。


「ああ、うん········」


 不意に遥緋は肩を叩かれる。


 同じクラスの柴野。


「相変わらずお前ら仲いいな」


 そう言いながら柴野はボク達を追い越して行った。


 そして振り返り言った。


「お前ら、そんなとこでいちゃついてると遅刻するぞ! 」


 遥緋はきょとんとした顔をボクに向ける。


「公認の仲なんだ?! 」


 ボクは不敵に笑む。


「だから言ったろ」


 遥緋はやっと安心して不安が抜けるように強ばらせていた肩を落とし笑みを溢した。


 教室に入ると、隣同士の席に着いた。


 ボクは不躾な視線に気付いて振り返る。


 誰かが遥緋を見てる。


 そいつは一番後ろの席から、粘着質な視線を遥緋に向けていた。


 そいつの名前は成橋。


 ボクが鋭く睨むと、それに気付いた成橋は遥緋から視線を外し俯いた。


 ここは遥緋の記憶が反映してできた世界。



 ここで成橋がそうした視線を向けていると云う事は現実の世界で遥緋が日常的にそれを認識していると云う事。


 現実世界ではただの一枚の絵画でしかないボクは何もできない。


 あいつはボクの見て無い処であんな熱っぽい視線で遥緋を見詰めているんだ。


 ムカつく。


 遥緋はそれを気にしている風ではないし、ボクは遥緋の理想だから負ける気はしない。


 それでもボクの知らない遥緋を見たい放題見ているのは楽しくは無い。


 それ以外は遥緋にとっては見慣れた朝の教室の風景だった。


 授業になると、ボクは夢中で教師の話に耳を傾ける。


 ボクは知識と云う物にとても興味があるようだ。


 授業をしているこの小出と云う教師は生徒の行動に小うるさくて有名だった。


 不意に手元に紙切れが飛んで来る。


 横を見ると遥緋がこっちを見て微笑んでいる。


 声を出さずに「読んで」と言ってボクの手元を指差した。


 なんて可愛い事をするのだろうとたまらなく遥緋が愛おしくなる。


 紙切れを開くと「抜け出さない?」と書いてあった。


 ボクは机の下で遥緋に見えるように親指を立てた。


 遥緋が授業に集中する振りをする。


 ボクは挙手して言った。


「すみません、具合が悪いので保健室に行ってもいいですか? 」


「僕が連れて行きます」


 遥緋が立ち上がって言った。


 教師はやれやれと言うように短い溜め息を吐いて言った。


「いつも同じ手が通用すると思うなよ

 行っておいで」


 遥緋はボクの背中を労るように手を添えて教室を出た。


 出た途端遥緋は言った。


「驚いた!

 あの小出が普通に承諾するなんてさ! 」


 ボクは慌てて言う。


「しっ!

 声が大きいよ、遥緋! 」


 小出が黒板側の戸を開けて言った。


「聞こえてるぞ」


 教室内からドッと笑う声が聞こえた。


 ボクは遥緋の手を掴むと一目散に駆け出した。


 背後から小出の声が聞こえる。


「やっぱり、仮病か! 」


 クラスメイト達がヒューヒュー言う声が続く。


 ボクは階段を駆け上がり屋上へと遥緋を連れ出した。




 読んで戴き有り難うございます❗(人´▽`*)♪


 BL映画ですが、二年前に公開になった「窮鼠はチーズの夢を見る」と云う映画のDVDを買って見たのですが、出演している成田凌くんの演技が切なくて、良かったです。

 好きな人から誕生年の干支のワインを貰った時の今にも泣きそうな表情とか、キューンと来ました。 

 本当に愛しさを籠めて見詰める目の表情がホント切なくて。

 エロシーンがやたら多いのですが、それを差し引いても成田凌くんの演技は一見の価値ありました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分の世界って、好いですよね。 公認の仲だったり、授業を抜け出すことを許されたり。 今はホンワカ楽しい気分ですけれど、このさき事件とか起きるのかな??
[一言] 同性愛が半ば公認で、冷やかされつつもそれが男女の関係と同様のもので、むしろ祝福される。つまり、この世界とシチュエーションははるひの理想、と考えると、なんだか重たい気分になってきますね…はるひ…
2023/05/15 17:48 退会済み
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