現実じゃない
読んで戴けたら倖せです。゜+.゜(´▽`人)゜+.゜
遥緋が深い眠りに着くとボクは意識を彼の思考に繋げた。
まさか自分の意識に誰かが繋がろうとするなんて夢にも思わないから、とても無防備で直ぐ繋がることができた。
遥緋はボクが用意した風景の通学路に突っ立って目を開く。
遥緋の意識が思い描く普段の日常がそこにある。
ボクは二三メートル後ろで彼を見ていた。
遥緋は突然自分が通学路に居る事に戸惑っているようで、辺りをきょろきょろと見回していた。
そんな可愛い様子を見ながらボクは胸を高鳴らせる。
後ろから遥緋と同じ制服姿で彼の肩に手を置いた。
「おはよう! 」
遥緋は戸惑いながら振り返り、ボクを見て酷く驚いた。
目を大きく見開いてボクの顔を穴が空くほど見詰める。
自分の理想が急に目の前に現れたのだから、このリアクションは当然だろう。
解るだろうか、恋しい人に見詰められるこの喜び!
ボクは恋しさを籠めて見詰め返し、彼が気に入るであろう笑顔で微笑んだ。
ボクは遥緋の理想から生まれたから、彼の望む総てが身に付いている。
彼が望む理想の笑い方、話し方、仕草、歩き方もボクは無意識でこなす事ができた。
遥緋が言う。
「お前、誰? 」
初めて掛けられた遥緋の声がボクの胸を騒がせる。
なんて、甘い声!
その一言だけでボクはとろけそうになる。
でもそんな胸の高鳴りを抑え込んで、ボクは吹き出して見せる。
ボクは言った。
「キミがボクを創造してのに、それを訊いちゃうの? 」
「はあ? 」
彼は今度は胡散臭そうにボクを見た。
もっと色んな表情が見たいボクには、そんな表情さえ御褒美だ。
「自分でボクを具現化したのに、もう忘れたの? 」
怪訝な顔で彼は言う。
「なんで絵の中の人がここに居んの? 」
「ここはキミの理想の中だよ、現実じゃない
だからボクはキミと居る時だけ自由にできる」
ボクはおそるおそる手を伸ばし彼の右手を取ってその指を自分の左手の指と絡めて恋人繋ぎをした。
「こんな事もできるんだよ」
遥緋は驚いてその手を直ぐに振りほどいた。
「よせよ!
こんな処、人に見られたら噂になる」
そう言って遥緋は周りの人目を気にしていた。
ボクはクスッと笑って見せる。
「だからここは現実じゃない
キミの理想の世界なんだ
総てはキミの思い通りだよ」
遥緋は眉間に皺を寄せて暫く考え込んでから言った。
「じゃあ、ここはオレの夢の中なのか? 」
「ちょっと違うけど、似たようなものかな」
彼は一瞬、瞳を震わせ腰に手を当ててボクを見ないで言った。
「オーケー、解った」
俯きながらボクを見上げる遥緋の顔が可愛い!
「じゃあ、お前は本当にオレが描いた絵の人物なんだ? 」
ボクは肩を竦めた。
「もちろん」
彼は確認するようにボクを暫く見詰め、それから街路樹が並ぶ街並みを見渡してから、通り過ぎて行く学生を目で追った。
ボクは急にしゃがみこんで地面に手をついて悶えた。
だって限界だ!
コロコロと変わる目の表情が愛おし過ぎるし、仕草の総てが胸をキュンキュンと締め付けて、酸欠を起こしそうだ。
遥緋が大好き過ぎて、どうしたらいいんだろう!
生まれたばかりで免疫の無いボクに遥緋の総てが刺激的過ぎる!
「おい、どうした? 」
遥緋の少し鼻にかかった甘い声が降ってくる。
耳が倖せ過ぎる!
風前の灯の冷静さを絞り出して立ち上がりながらボクは言った。
「いや、ちょっと眩暈がしただけだから··········」
こんな調子でボクはこの後遥緋の傍で耐えられるのだろうか······。
読んで戴き有り難うございます❗゜+.゜(´▽`人)゜+.゜
最近、「ホリック」を観ました。
ちょっとありきたりかなあと思ったのですが、面白かったです。
何よりも柴咲コウさんの衣装に凄くお金掛かってるなあとそこばかり気になりました。笑