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第34話 奴隷市

「許して欲しいのん……、もうしないのん。っていうか、アンタ強すぎなのん」


 そりゃ獄界四天王の一翼だからな。

 一軍隊を滅ぼすほどの力。

 その辺の有象無象じゃ相手にならないさ。


「ならばありったけのルドーを置いていけ。それで許してや――」

「やめてよサティ。ますます治安が悪くなるだろう?」


 町歩きの途中、何度も柄の悪そうな人を見た。

 中には路上生活を送ってる人もいて、何とも言えない気持ちにさせられた。


 追放されたとはいえダクヴェルムの血は流れてる。

 ならばダクヴェルム領の民はある意味では家族と同じ。

 今はまだ無理だけど、いつの日か、この町も救わなければ。


 自分と似た境遇の人を助ける。

 その目標を達成させるためにも、現状を直視しなければならない。


「君たち四人はお金がないのか? 見たところそうは見えないけどな」


 そもそも衣服が奇麗だ。

 他の人は汚れた布切れといった感じだが、彼らは装飾品まで身に着けている。それに武器のサーベルも奇麗に磨かれていた。


「そっ、それは……」

「言葉に詰まるってことは雇われってことか。差し詰めファントムからの命令ってとこかな?」

「うげげっ! なんて恐れ知らずな! ファントム様を呼び捨てにするだなんて、命知らずなのん!」


 腕組してたサティが男の頭に足を乗せた。

 サティはスカート。

 上を見れば見えちゃうけど、幸い、男の顔面は地面に押し付けられている。……幸い?


「命知らずなのはファントムのほうだ。何をしでかしたのかは知らんが、ソード様から多大なる怨みを買っている。ソード様の怒りは私の怒り。フフッ、楽しみにしていろ。近日中にファントムの情けない面が拝めるぞ?」


 お前はどこぞの悪役令嬢だよ。

 っていうか。


「そろそろ足を退()けてあげなよ。これ以上治安が悪くなったら、道化の格好をした奴が葉巻を吹かしながら階段で小躍りを始めるかもしれないぞ?」

「……?」


 下らないジョークはさておき。


「とりあえず君たちには奴隷市とやらに案内してもらおうか」

「はぇ? もしかしてアンタら、奴隷を買いたいのん?」

「目的なんかどうでもいいだろ。嫌ならそこの女の子がもっとお仕置きしちゃうぞっ!」


 リーダー格は怯えていた。

 けれど背後の三人はまんざらでもない表情。

 ああ、何かに目覚めてしまったのかもしれない。

 なんか、いろいろとごめんね?


#


「ここが奴隷市なのん! ここにはいろいろな奴隷がいるのん。年に一度、ファントム様がご来場なさって、気に入られた奴隷はファントム様のお傍に仕える権利を貰えるのん!」

「案内ご苦労さま、もう帰っていいよ」

「へ? もういいのん?」

「いいよ。その代わり……。次に悪さしたらタダじゃおかないからな?」

「ひぃいっ! わ、分かった、分かったなのん! もう悪いことはしませんっ、このとおりなのん!!」


 男に手を振って別れた後。

 俺たちは分厚い白布に覆われた巨大な建物の中に入っていった。


「うわぁ、なんか悪そうな人がいっぱいいるよ」


 数多くのゴロツキにチンピラ。

 それに、身分の高そうな人。

 彼らは円形の建物内を歩き回りながら、檻の中を物色していた。


「ソード様はどうして奴隷市へ?」

「……少し思うことがあってね。俺には成し遂げたい目標がある。その目標のためにも、今ある現状を見ておかなきゃならないんだ」

「なるほど。流石はソード様。きっと、さぞかし高尚なお考えをお持ちなのでしょう。このサティ、どこまでもお供いたします」

「ありがとう、心強いよ」


 サティを引き連れ、檻の中を見て回る。

 当然だが奴隷の目には生気がない。

 薄布一枚に手錠と足枷。

 まるで家畜扱いだ。


「俺にはまだ権力がない。でも、いつか力を手に入れたらここの奴隷は全員解放する。ここだけじゃない。この世界にいる恵まれない人たち。その全部を救ってみせる」


 俺は自らを鼓舞するために呟いた。

 

 奴隷市をひとしきり見終えた俺は、宿屋に戻ることにした。


「ちょっと疲れたから、今日はもう戻るよ」

「畏まりました」


 疲れたというのは肉体的にではない。

 精神的にだ。


 檻の中。

 生気のない眼差し。

 それらを見てヘラヘラと笑う大人たち。

 少し昔のことを思い出してしまった。


 帰り道にも力無きもの――弱者がいた。

 弱者はどんな手を使ってでも生きようとする。

 結果として、詐欺や盗みや暴行が横行。

 治安が悪くなってしまった。

 

 そんな中、奴隷に堕ちた人々はそういう『詐欺や盗みや暴行』ができない心優しい人だったのだろうと思う。人を傷つけられず、でも現状を打破する術も力もない。その行く末が、奴隷。


「ファントムはこの町を拠点にしているらしいが、治安の悪さはそれが原因かもね」

「と言いますと?」

「これは勘だけどさ。例えば、あえて格差をつくるんだ。一定の層に金を流し、一定の層は貧困にさせる。貧困層は素行が悪くなり、悪事を働くのに抵抗がなくなる。そういう類の人間って、裏の社会に引き込みやすくなるとは思わない?」

「……とんだ悪党ですね、ファントムは。こんなやり方で組織を拡大していたと」

「確証はない。ただの勘だよ」


 けれど、この勘はあながち外れてないと思う。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

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