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第30話 VSレイヴン

第31話は20~21時頃更新予定です!

「……へ?」


 な、なんだ。

 なんなのだコイツらは。

 一体全体なんだというのだっ!?


「ハルメッタの兵士……に見える格好はしてるけど、言動がおかしいですよ」

「言動? は? な、なんの話をしているんだ?」


 俺は溜息混じりに教えてやった。

 コイツの――おそらくはファントムの配下である男のおかしな挙動を。


「危険なモンスターが暴れてるって時に武器を持ってない少女を戦場に立たせる兵士がどこにいるんだよ」


 俺もサティも見た目は若い。

 英雄視されてる俺はまだしも、サティを戦場に立たせるのは兵士らしくない。


「それにこの街の住民さんや兵士さんは俺のことを「そこの君」だなんて呼び方はしない。照れくさいけど、ソードさんとかソード様とかそんなふうに呼んでくれるんだ」

「つまりお前はこの街の兵士に扮したファントムの配下。影の独立魔法と戦うフリをしてソード様を誘き寄せ、隙を見て攻撃する。そんなところだったのだろう? フン、浅はかだな」


 アサシンになってから忘れていた感情。

 レイヴンは今、ソレを思い出していた。


 そうか。

 私は……私は恐怖しているのだ。

 目の前のこの二人に。


「よくぞ、見抜いたな。だが、ならばどうする? 確かにそこの小僧の魔法は想像以上だ。だが、この街には足手纏い(・・・・)が山ほどいる。ファントム様はこの街のほとんどの住民の影に魔力を忍ばせている。つまり、この街のあらゆるが人質なのだ。冒険者や兵士のような強者ですら危ういのに、子供はどうなるかな?」


 レイヴンはしてやったり、みたいな顔で笑った。


「状況が呑み込めたか? 多少腕が経つようだが調子に乗ったな。お前たちは備えを怠った。だがファントム様は備えを怠らず、綿密に計画を練り上げていった。勝敗を分けたのはそこだ。――私はファントム様の配下。ファントム様の影のいくつかの権限は私に一任されている。つまりはいつでもハルメッタの民を殺せるのだ」

「それで?」


 聞き返すと、男は咆哮した。


「跪けッ! そして両腕を頭の後ろで組むのだ!!」

「貴様、誰に向かって口を利いている。まさか道端のゴミ風情がソード様に……」

「サティ、住民のことは任せた。君なら一人で守れるだろう」

「畏まりました。ハルメッタの民には傷一つ付けさせませんのでご安心ください」

「うん、ありがとう」


 そうしてサティは消えた。

 飛んでいったのではなく消えた。

 多分なにかしらの魔法かな。

 瞬間移動系かも?


「なっ、消えた……だと?」

「さて、始めようか」


 魔力を放出し、臨戦態勢に移る。

 目の前の男はファントムの配下。

 捕まえることができれば、ファントム――ラウド・ダクヴェルムにぐっと近づけるはずだ。


「小癪な」


 男は影を纏う。

 すると兵士の姿から真の姿になった。

 スキンヘッドにタンクトップ。

 肌は色黒で、体付きは岩石みたいにゴツい。

 ウロボロスの刺青は頭部に彫られていた。


「私の名はレイヴン。今まで数多くの人間を確実に仕留めてきた闇を生きる暗殺者。貴様のような小僧相手に、負けるわけが無いッ!!」

「そう思うなら早く来い。時間の無駄だ」

「黙れぇえええッ!!」


 ヒュッ!

 ナイフが風を切る。

 一本に見えたソレは向かってくる途中で五本に増えた。

 しかも、俺の背後には既にレイヴンの姿がある。

 攻撃手段は同じ。またもや遠距離からのナイフ投てき。


「速いな!」


 この男、かなりの強さだ。

 一発か二発のダメージは覚悟したほうがいいかもしれない。


 正面のナイフを消滅させ、即座に身を屈める。

 背後から二本のナイフが肩を掠めたがダメージはない。

 念のため傷に触れてダメージを消しておこう。

 毒でも塗られてたら厄介だからな。


「くっ、やはり消滅かッ!」

 

 攻撃の回避。

 その一瞬の隙にレイヴンは元の位置にいた。

 そして再びナイフを取り出す。

 だが、なかなか次の攻撃に移れない。

 【消滅】を直に目にしたせいで、余計なことを考えてしまう。


 まさか影か闇の属性を獲得しているのか?

 だとしたらファントム様と近しい存在?

 

 もし影か闇を獲得してると仮定して。

 消滅かと思う速度でモノを吸収するとなると……。

 その魔法精度はファントム様よりも上っ!??


「おおおおおおおおっ!!」


 不安を振り払おうと。

 現実から目を逸らそうと。

 レイヴンは必死の形相でナイフを放り投げた。


「遠距離攻撃ばかり。ビビッて近付けないのか? 好都合だな」


 吸収したモノの増減コントロール。

 それはまだ全くできない。

 もし可能になればルドーを無限に増やせるのだけど、現実は厳しい。


 そんなわけで。

 こんな具合に大量に武器を貰えるのは正直言って助かる。状況によっては売り払うことでルドーにもなるしな。


「バカなッ!! 黒も影も闇も、触れた瞬間に消し去るなどという芸当は不可能のハズ! 炎熱系統で消し炭にしているならまだしも、こんな意味不明なことが許されてたまるか!!」


 私はファントム様にお仕えする誓った!

 一生あのお方の奴隷になることを誓った!!

 魂を捧げると誓ったのだ!!!


「ファントム様以上の力など、認められるかァーーッ!!!!」


 激高し。

 そうして、やっと距離を詰めてくれた。


「お前が冷静沈着じゃなくて助かったよ」


 殴りかかってきた拳。

 そこにピトッ……と指を添える。

 そして【放出】。


 今回放出する【痛み】は【雷痛】。

 雷に打たれた痛みを痛覚のみに作用させる。

 そして、まるで断末魔を彷彿とさせる絶叫が響き渡った。


 バリバリバリバリリリッ!!


「あっ……、あぎゃぁぁああああああああッッッツツ!!!!!」


 レイヴンと名乗ったファントムの配下。

 彼は白目を剥きながら、ドサッ! と倒れた。

 しかも泡まで吹いてる。

 よっぽど痛かったんだろうな……。

 まぁ、気持ちは分かる。

 過去の俺もそうだったしな。


「とはいえ自業自得だ。罪もない人間に悪さを働いたんだからな」


 もう聞いていないであろうレイヴンに。

 俺は溜息混じりに「もう悪いことするなよ?」と呟いた。

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

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