第27話 サティとユニ
――ハルメッタの街・冒険者ギルド――
「なるほど、この御仁がこの街をお救いになられた英雄なのですね?」
目深にローブを被った一人の男。
英雄の噂を聞きつけたと、ギルドにやって来ていた。
「そうなんですよ!」
満面の笑みを咲かせながら、受付嬢が応じた。
「ソード様には感謝してもしきれません。街にも活気が戻って来て、みんな心の底から笑えるようになったんです」
「それは――さぞかし素晴らしい御仁なのでしょうね」
「はい! なんたってソード様は見返りをお求めになりませんから。恩返しをしたくてもできない……唯一の不満点があるとするならばそれくらいですかね。いやぁ、贅沢な悩みですよ」
「ははは、確かにそれは贅沢だ。――本日は素晴らしいお話を聞かせて頂きありがとうございます。素敵な土産話ができましたよ。しかし奇妙ですね。なぜソード様の名簿は……なんというかこう、お顔が歪んでいるのですか?」
聞かれた受付嬢は少し困った素振り。
奇妙というのは同感だった。
ソード様はなぜ「ワザと下手に描いてほしいんです」などと言ってきたのだろうか? その理由を考えても、答えは出なかった。
「理由は分かりません。きっとソード様なりの理由があるのでしょうね」
フフッ、と微笑むと。
フードの男は「そうですか」と一言。
深々とお辞儀をしてから、ギルドを去っていった。
#
――ジャラッダの町・某所――
冒険者名簿を手渡されたラウドは困惑していた。
「な、なんだこれ……」
「私にも、イマイチ状況が吞み込めておりません」
部下に持ってこさせた冒険者名簿。
それを目に、二人は困惑していた。
「サティという少女のほうは美麗な肖像画なのですが、ソードという少年のほうは手抜きもいいところです」
しばしの思案。
その後、ラウドは唇の端を釣り上げ、ソードの名簿を握りつぶした。
「なるほど。俺たちが探りに来ることすら念頭に置いてたってことか。ソード・ダリアス、中々に油断ならない相手のようだね」
「どうしますか? やはり見つけ出して殺害なさりましょうか?」
「俺の影魔法も万能じゃない。街全部を盗み聴きするとなると流石に魔力が枯渇して死ぬだろう。局所的に盗み聞きしても場所が特定できる保証もない。だったらもうアレを使っちゃおう。本当はもう少し眠らせておきたかったけれど仕方ない」
ハルメッタの街は広すぎて一個人の居場所の特定は不可能。
一ヵ所に留まっているという確証も持てない。
だったら本人に直接出向いてもらうしかない。
ラウドはそう考えた。
「では、私は準備を済ませて参ります」
暗殺者・レイヴンが音もなく立ち上がった。
万が一、とラウドが口を開く。
「万が一アレでもダメだった時はすぐに合図をくれ。こっちもこっちで次の対処法を考えるから」
「……委細承知」
#
「ユニ、元気か~?」
『くぅぅ~っ!』
うん、聞くまでもなさそうだ。
ユニは元気に跳ねまわり、尻尾をブンブン振って喜んでいた。
「すっかりソード様を主と認めている様子ですね。あのユニコーンがこうも心を開くとは」
「ねぇ、ユニコーンっていうのはそんなに懐きづらいモンスターなのか?」
「どちらでもない、といった感じですかね。個体にもよりますが、基本的には自由気ままで掴みどころがないというイメージです。ですが、静謐で穏やかな空間を好む傾向にあるので、このような光景はそう易々とお目にかかれないと思われます」
「確かにユニコーンといえば優雅で美麗って感じがするもんなぁ」
対するユニは正反対。
モンスターというか、もはやペットだ。
見てるだけでふにゃふにゃと脱力しちゃう。
癒し効果は絶大だな!
「んはぁ~~~、超カワイイ~! 本当にお前は愛らしいヤツだなぁ」
『くぅん! くぅう~ん!』
じゃれ合う俺たちをサティがもの言いたげに見つめていた。
「ん? どうしたんだ? もしかしてお前もユニをナデナデしたいのか? そうならそうと早くに言えばいいのに。ほら、いいぞ。次はサティの番だ」
しかしサティ、一向に動かない。
というかユニを……。
え? 睨んでる?
なんでっ!?
「お、おい。どうしたんだよ、そんな怖い顔してさ」
「……悔しい」
「え?」
「ソード様の寵愛を一身に受けられるユニが羨ましいのです!! くぅう、このやり場のない感情、どこへ向ければいいのか……」
えーと、つまり。
嫉妬ってことか?
「かくなるうえは!」
そして。
サティは擬態魔法でユニそっくりの姿になった。
さらには。
『くぅ~んにございます。さぁ、ナデナデして下さいませソード様』
などと宣う始末。
前にも思ったんだけどさ。
やっぱサティエルって変なモンスターだ。
『くぅう~!』
擬態したサティにユニが近寄る。
どうやら仲間意識を抱いたらしい。
対するサティは、
『ガルルルァア―――ッッ!!』
雄叫びを上げていた。
『くぅ……』
ああ、ユニが怯えてしまったではないか。
可哀想に。
俺はユニを撫でながら、
「大人げないぞ」
とサティを諭す。
『くぅ~ん……』
「くぅ~ん……じゃないよ。いつまでもバカなことやってないで元に戻れ」
「申し訳ありません、見苦しい姿を見せてしまいました」
「いやぁ、別にいいけどさ。ナデナデくらいなら普通にしてやるから、ユニを脅かすようなことはするなよ?」
そう言ってサティの頭をナデナデした。
「~~~~~っ!?!??」
するとサティは顔を真っ赤にして馬車小屋を飛び出していった。
まったく、いろいろと忙しいヤツだな。
でもそろそろいい時間帯かな?
名残惜しくユニと別れたあと。
俺はサティとともに再び大通りを歩いた。
店に着くと、まだ行列は続いていたがかなり短くなっていた。
「待ち時間は二十分くらいですね」
そう言われたので、店外のベンチに腰掛けた。
その間「お先にどうぞ!」と何度も言われたが流石に断った。順番を抜かして横入りするだなんて、そんな賊みたいな真似はしたくないからね。
現在執筆中の【万象の虚無化】ですが、ついにざまぁシーンの執筆に入れました。明日か明後日にはざまぁシーンまで更新します。
引き続き☆☆☆☆☆やブックマーク等で応援して頂けると嬉しいです。なにとぞよろしくお願いします!!




