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第25話 ハルメッタの鐘の音

 翌日。

 ハルメッタの街は晴天に見舞われた。


 一応今日から……というか昨日から冒険者になったわけなのだが。

 なんか実感湧かないんだよなぁ。

 やっぱりこれが悪いのか?


 俺は懐からライセンスカードなるものを取り出す。

 そこには、ワザと下手に描いてもらった肖像画があった。


 なぜ下手に描いてもらったのか。

 言うまでもなく、ダクヴェルムの連中に特定させないためだ。

 

 そして名前の欄には『ソード・ダリアス』とある。

 これが『ソウ・ダクヴェルム』だったら少しは違ったのだろうか?

 まあ、考えても意味はなさそうだ。


 対するサティは、ライセンスを眺めてニヤニヤしてる。

 納得のいく出来栄えらしく、正直羨ましい。

 ちなみにフルネームは『サティ・アーシャ』とした。

 何となく思い浮かんだからそうした。

 

「見えてきましたね」


 しばらく歩いてると、例の馬車小屋が。


「ユニ~、元気か~?」


 ユニは滅茶苦茶に元気だった。

 ところで食事はどういったものを与えているのか聞いてみたところ、ユニは草や人参を好むそうだ。意外と普通。本当は魔力草などを与えるべきだが、賊のせいで枯渇しているのでこれで我慢してもらってるらしい。


「大丈夫だからな~、怖くないからな~」


 慎重に紐を首元に括り付ける。

 その間、ユニは静かなものだった。

 ちょっぴりソワソワしてたけど。


「よーし、これで散歩の準備はバッチリだな!」

「では行きましょう!」


 こうして街観光が始まった。

 目的地は特にない。

 

 一応「ここはオススメだよ」と紹介された場所はあるので、そのあたりは見ておこうと思う。昨日見た噴水広場もハルメッタ自慢の景色の一つらしい。


 というわけで再び噴水広場へ!


 陽光に、水飛沫が煌めく。

 心地よい風が頬を撫でる。

 なんとも幸せな日常の一ページだ。


『くぅん……』


 水浴びをする子供たちを眺めてると、ユニが小さく鳴いた。


「どうした? もしかしてお前も水浴びがしたいのか?」

『くぅぅ!』

「そうかそうか!」


 まだまだちょっと大きいスライム程度の大きさ。

 力も弱いし、はしゃぎすぎて子供を怪我させるということもないだろう。


 などと思ってると。

 隣のサティ、いつの間にか水着に。


「なっ、なな、どうしたんだよその恰好!」

「私は擬態の魔法も使えます。なので衣服を瞬時に着替えることも容易なのでございます」


 しかしこれは目のやり場に困る。

 サティはあまりにもナイスバディであった。

 これでもかというくらいに強調された胸元。

 対照的にお腹はへっこんでいる。

 太ももは程よい肉付きで、膝から下はすらりと長い。

 なにより……。

 

 その姿のほうが似合ってるぞと言ったのは俺自身だ。

 つまり、サティの顔立ちや髪色・髪型は俺好みになっている。

 そんな少女が色白で健康的な肌を露出させているとなると、なんというか、理性が破壊されそうだ。


「……サティ、早く向こうへ行ってくれ」

「え?」

「急げ! 俺の理性が残っているうちにッ!!」


 まるでアンデッドになる寸前、最後の理性を振り絞って仲間を逃がす人みたいになってしまった。


「ご命令とあらば」


 そしてサティはユニと仲良く水浴びを楽しんだ。


 お次は時計台。

 賊によって破壊されたらしいのだが、街のシンボルの建物だということもあって、最優先で修復されたらしい。


 鐘の音が鳴るのは本日の十時。

 普段は正午に鳴るが、今日は少し早めらしい。

 どんな奇麗な音が街に響くのか、今から楽しみだ。


 そんなふうに鐘の音が鳴るのを待っていると。


「ああ、ここにいらっしゃいましたか」

「こんにちは、ソード様。我々を覚えてらっしゃいますか?」


 二人の男性に声を掛けられた。

 覚えているかと問われ、記憶を辿る。

 うーん、どこかで見覚えがあるような……。


「はは、分からないのも無理はありません。初めてお会いした時とは服装も顔立ちもまるで別人でしょうから」


 そう言って男性は微笑んだ。


「私はルーゴ。こっちはギーラン。どちらもこの街の兵士ですよ。今日は固定休で、他の者が門番を務めておりますがね」


 門番。

 その言葉を聞いてやっと思い出した。

 最初この街にやってきたとき、ジャラッダの町へ向かうべきだと助言してくれたあの二人組じゃないか。


「やっと思い出しました。あの時は疲れた顔立ちでしたが、随分と明るくなりましたね。良かったです」

「それもこれも全てソード様のおかげですよ」とルーゴさん。次いでギーランさんが「なんとお礼を申したらよいか……」と続く。


「お礼なら充分に頂きましたよ」


 首を傾げる二人に、噴水広場のほうを指差す。

 笑顔ではしゃぐ子供たちに、全身で水を浴びるユニ。

 ナイスバディなサティも非常に楽しそうで、その光景には幸せがギュッと濃縮されていた。


「街を歩けば誰も彼もが楽しそうに笑っているものですから、俺のほうまで嬉しくなっちゃって。お礼と言うなら、皆さんの笑顔だけでお腹いっぱいです」

「あぁ、なんという」


 いきなりルーゴさんが泣きだした。

 さらにはギーランさんまで。


「まるで英雄伝説の主人公のようだ。このルーゴ、ソード様のような方に出会えたことを光栄に思います」

「右に同じです。ああ、この街で兵士の仕事を頑張ってきて良かった。きっと私は、ソード様と出会うためにこの仕事に就く運命だったのでしょうな……」


 なんだか大袈裟で照れる。

 と思っていると。


 ゴォーン……、ゴォーン……。

 なんとも奇麗な鐘の音が街中に響き渡った。


「これがハルメッタの鐘の音か。心が洗われるような奇麗な音ですね」


 二人は「再びこの音色を聴くことが叶うとは」とまたもや涙していた。

 

 噴水広場に視線を移すと、喧騒は止んでいた。

 子供たちもサティもユニも。

 みんな、美しい鐘の音色に聴き惚れていた。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

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