第22話 神獣・ユニコーン
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ゼレンが倒された。
この噂は一晩で広がった。
一部の賊は自警団に捕えられ、また一部の賊は逃げ出した。かくして、ハルメッタの街から一人残らず賊が消えたのだった。
俺は薬草の余剰分の一部を店主に譲った。
「他の回復薬が得られるのはもう少し先でしょうし、しばらくはこれで商売して下さい」
「オイオイ、どうなってんだこりゃぁ……? ざっと200~300枚はあるぞ? これ、どっから出てきたんですか!?」
「秘密です」
そう言って、俺は次の道具屋に向かった。
そして薬草を渡すと、やはり店主は同じことを口にした。
「どっから出てきたんですかこれっ!!」
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賊がいなくなり、適正価格で商売ができるようになった。
結果、あの宿屋の本来の価格は一泊150ルドーだと明かされた。
「まさか十日どころか二日で追い払っちまうとは。藁にも縋る思いではあったが、ソードさん……それに嬢ちゃん。二人は何者なんだい?」
宿屋のおじさんに問われ。
俺は「冒険者志望です」と答えた。
「はん、まだ冒険者見習いですらないってわけかぁ。いやぁ、こいつは驚かされたよ。とりあえずコレ、返しておくよ。信用金として頂いた10000ルドーだ。それと、約束通り礼をさせてくれ」
宿屋のおじさん――名をバッシュという。
バッシュさんは昔は冒険者だったらしい。
街道を歩きながら、当時のことを懐かしそうに語ってくれた。
「私の人生で一番の功績は、この街に襲ってきたドラゴンを仲間と共に討伐したことさぁ。ま、ドラゴンとはいっても中級ドラゴンだけどね」
ドラゴン。
それは古来より恐れられてきた強力なモンスター。
低級ドラゴンは、脅威に値しない。
ちょっとした火を噴いて噛みついてくる、その程度。
種族次第では体が小さいので、ペットにもできる。
だが中級ともなると一気に危険になる。
まず、体が大きい。
最低でも3メートルはあるのだ。
さらに、吐き出す炎は高温になる。
爪も牙も危険で、肉体も硬い。
その分、その肉は上物とされている。
そして上級ドラゴン。
これは出会ったら即死と言われるレベル。
なぜなら、ヤツらは空を飛べるから。
攻撃手段も増えるし、中には天候を操るモノもいるそうだ。
「あの時は楽しかった。これからは一生冒険者として、順風満帆な生活を送ると思ってたぁ。だが、老いには勝てなくてね。五年前、なくなくパーティを解散したさぁ」
それでも冒険に関わりたい。
冒険者の助けになりたい。
そんな気持ちで宿屋を始めたらしい。
「二人には感謝してもしきれない。当日の非礼、まずはそれを詫びさせてほしい。田舎臭いだなんて言ってすまなかった」
「フン、ようやく己が過ちを悟ったか。だが見直したぞ。自分で自分の過ちに気付く――そう易々とできることじゃない」
「……アンタ、なんだか貫禄あるねぇ」
グサッ!
サティの心に矢が突き刺さった。
「そんな、年季がいってるように見えるか……?」
「いや、そうでなくて。傷つけちまったなら謝るよ」
連れてこられたのは、宿屋から西に進んだ公園だった。
賊が消えたということもあって、賑やかな光景が広がっている。
噴水の水飛沫を、子供たちが笑顔で浴びていた。
「さぁさ、こっちだよ」
さらについていくと。
そこは馬車小屋だった。
「私が若い頃、ある冒険者がこの街にやって来たんだ。名前は忘れちまったが、確かジギルなんとかって言ったかねぇ。その方が土産に置いて行ってくれたタマゴが最近になって孵ったんだ」
「バッシュさんが若い頃となると、四十年くらい前ですか?」
「そうさね!」
勢いよく人差し指を立てるバッシュさん。
その顔にはイタズラな笑みが浮かんでいた。
「つまりそのタマゴは40年分の魔力を得てようやく孵ったということさぁ! して、中にいたモンスターはどんなだと思う?」
40年分の魔力。
そして馬車小屋。
実物は見たことないが、なんとなく想像がつく。
「まさか、ユニコ―ンかっ!?」
サティが驚くのも無理はない。
ユニコーン。
それは神獣種に指定されるモンスター。
子供の頃はスライム並みに弱いが、うまく育成してやれば奇跡の魔法を覚えるという。
「正解さぁ! まだまだちびっ子だけどね、もう既に自分の足で立って歩けるんだ。さすがは神獣種といったところさねぇ」
バッシュさんはお礼と言っていたが。
まさか……。
「もしかして、そのユニコーンをお譲り頂けるのですか?」
「でないと、こんな獣臭いところに恩人を連れてきやせんよ」
「なんと! やりましたね、ソード様! ユニコーンといえばあらゆる傷を癒す【アルティメット・ヒール】を習得できるモンスターですよ! 個体によっては【リライフ】も不可能ではないのだとか!」
「情けは人の為ならずとは言うけれど、まさかユニコーンを頂けるとは」
ユニコーンは想像よりもチビだった。
けれど既に神の風格がある。
体毛は全体的に青白く、毛並みは綺麗。
まだまだ短いけれど、角も生えている。
だけど羽はまだ無いみたいだ。
「かわいいですね。名前は決まってるんですか?」
「いや、まだつけてないさぁ。なんなら名付け親になっておくれよ」
「いいんですかっ!?」
ユニコーンを貰えるだけでも最高なのに、名前も付けさせてもらえるとは。
じーっと眺めていると。
ユニコーンは円らな目を輝かせながらこっちにやって来た。
「本当にかわいいなぁ」
撫でてやると、気持ちよさそうに目を瞑り、身体を預けてきた。
「ありゃっ、もう懐かせちまった! はは、あのユニコーンを数秒で手懐けるなんて、さすがハルメッタの英雄だぁ」
なんだか照れくさいが、悪い気はしない。
ハルメッタの英雄。
いい響きじゃないか。
「単純だけど、ユニコーンから取ってユニにするよ。今日からお前はユニだ、よろしくなっ!」
言葉が通じたのか、ユニは身を震わせながら小さく鳴いた。
喜んでいるように見えたのは、都合が良すぎるだろうか?
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