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第12話 ナイスなアイデア!

 事情は分からない。

 だが一つだけ分かることがある。

 それは、俺の命が助かったということだ。


 森のヌシは全面的な降伏を宣言。

 命さえ助けてもらえるのなら、俺の従魔になるとまで言ってきた。


 本来なら俺が命乞いする立場。

 なのに何故か逆に命乞いをされるという謎の展開にしどろもどろしつつも、俺はその提案を受けたのだった。


 理由は不明だがこの際考えないものとする。

 なにはともあれ、俺には心強い仲間ができた。

 森のヌシ――彼女は自らをサティエルと名乗った。

 その名を聞いた俺は卒倒しかけた。

 サティエルといえば、聖書に登場する邪神の名前だからだ。


 ちなみに俺は聖書を読んだことがない。

 単純に、サティエルという名は子供への脅しに使われるのだ。


「夜遅くまで起きているとサティエル様がやって来て、地獄に連れて行かれるぞ」


 こんな具合に。

 そして俺もその脅し文句を受けたことがある。

 まさかそのサティエルが森のヌシだったとは。


「ところで、どうしてサティエルは平然と森の中を歩いていたんだい? 君が目覚めるのは五年後だと聞いていたけれど」

「それは……」


 これは、試されている?

 もしも嘘を吐いて「たまたま早く起きたのです」などと口にしようものなら数瞬後には首が飛ぶかもしれない。


「俺の魔力を捕食したくせして、あまつさえそれを隠すか。死罪に値する」


 それが私が最後に聞く声になるんだわ。

 嘘は吐けない……。

 ここは正直に言わなきゃ。


「申し訳ございません。身の程知らずとは重々承知しているのですが、私はあなた様の魔力を捕食してしまったのです。久方ぶりの大量の魔力ということもあり我を忘れてしまいました。とんだ無礼を働き申し訳ございません。どうか命だけは……」


 このサティエル。

 なんでこんなに命乞いをしてくる?

 格上の存在に何度も命乞いをされるのは変な気分だ。


「頭を上げてくれ。俺は君の命を取ったりなんかしないよ」


 というかできないし。


「それよりちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「なんなりとお申し付け下さい。このサティエル、あなた様のためならばどのような無理難題でも(こな)してみせましょう」


 うーん、なんともやりづらい感じだ。

 サティエルってこんなに変なモンスターだったんだな……。


「無理難題ってわけじゃないんだけど。実は欲しいモノがあってさ」

「欲しいモノ、といいますと?」

「シイキノコっていうキノコ。実はちょっとした事情があって、最近はリゴの実ばっかり食べているんだ。でも、同じものばかり食べていても飽きるだろう?」


 そう言うと、サティエルは首を傾げた。


「人間は同じものばかりを食べると飽きてしまわれるのですか?」

「えっ? サティエルは飽きないのか?」

「飽きるというか、我々には食事が必要ありませんから。食事に近しい行為といえば魔力の補給になりますね。魔力が枯渇すると死んでしまいますから、そうならないために、定期的に魔力を補給します」

「へぇ~。森のヌシともなると凄いんだなぁ」

「滅相もございません。して、シイキノコでございますか。それでしたら、望むだけの量をご用意できます。私はこの森の全てを記憶しておりますので」

「本当か! それは助かる!」


 ん? というか、この森の全てを記憶しているだって?

 ということはもしかして……。


「あのさ、もう一つ聞いていいか?」

「なんなりと」

「人間にとって毒にならない食材をたくさん持ってくる……ってことはできるかな?」

「あなた様の命とあらばお安い御用です」


 なんということだ。

 まさかこんな奇跡みたいなことが起こるとは。

 

「ありがとうサティエル。本当に助かるよ。それと俺のことは――」


 ソウと呼んでくれ。

 そう口に出しかけてやめた。

 これから先、計画が順調に進めば俺は冒険者になる。

 その時に本名で活動するのはあまりよくないと思った。


 俺が冒険者になった。

 それを知ったダクヴェルムの連中は必ず嫌がらせをしてくるだろう。今となってはただの「ソウ」でしかないが、それだけでもアイツらにはそれが俺だと知られてしまう。


 数秒悩んだ俺は、一つの偽名を思い付いた。


「俺の名はソード・ダリアス。気軽にソードって呼んでくれ。俺のほうからも気安くサティって呼ばせてもらうよ。いいかな?」


 サティエル改めサティは瞳をうるうると揺らし始めた。

 どうやら感極まっているみたい。

 その姿は中々に可愛らしかった。


「ソード様、こんな私に愛称を与えて下さりありがとうございます。このサティ、ご恩に報いるべく、粉骨砕身の覚悟で働かせて頂きます!!」


 そして。

 サティは漆黒の双翼を広げ、バビュ―――ンッ! と飛んでいった。


「どうにも堅苦しくて生真面目なヤツだけど、噂に聞いてたのとは随分と違うな。もっとこう、破壊の権化みたいなのをイメージしてたんだけどな」


 もしかしたら長い眠りの中で改心したのかもしれない。

 知性があるモンスターなら、そういうこともあるだろう。


#


 サティが大量の食材とともに帰って来た。

 袋の類は与えていなかったはずなので「どうやって運んできたの?」と聞いてみると、魔力で浮遊させてきたとのことだった。


 サティくらいのモンスターになるとそんなことも出来てしまうらしい。


 とそこで、俺はまたまたナイスなアイデアを思い付いてしまった。


「ねぇ、サティって魔法は得意なのか?」

「上には上がいる、それを承知のうえで述べさせて頂くのであれば、得意な部類に入ると思います。こう見えても故郷では四天王の称号を与えられておりましたから」


 サティは儚げな笑みを浮かべた。

 そういえばサティはずっとこの森にいる。

 モンスターでもホームシックになることがあるのかもしれないな。


 サティエルの儚げな自嘲。

 その原因はソウにあるのだが。

 ソウがそれを知ることはおそらくない。


#


「え? 魔力操作を教えてほしい?」


 自分より圧倒的に格上の存在。

 その格上の存在に魔力操作の指南をお願いされた。


 サティエルは困惑しつつ「畏まりました」と返すほかなかった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

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