表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/42

第1話 属性【無し】……そして虐待の日々

 五歳。

 それは人生において大きな意味を持つ。

 この世界では人生の良し悪しは五歳で決まる。

 

 人間は五歳になると【魔法】なる力に目覚める。


 ソウ・ダクヴェルム。

 当時五歳の俺は属性鑑定の儀を受けた。


 ダクヴェルム家は由緒ある名家。

 二人の兄は光属性と影属性の魔法を獲得した。

 だから父は俺に期待していた。


「光属性と影属性。どちらも優れた魔法属性だ。お前も優秀な兄に続くんだぞ」


 そんな父の言葉を胸に。

 俺は意気揚々と街の教会へ向かった。

 そしてその帰り。

 俺は悲観に暮れた。


「なに? 魔法属性【無し】だとぉっ!? ふ、ふざけるなぁッ!!」


 帰宅早々、父に罵声を浴びせかけられる。

 殴られ蹴られ、挙句には首を絞められ、床に叩き付けられ、さらには魔法攻撃まで浴びせかけられた。


 父の魔法。

 それは闇属性。

 影属性の完全上位互換。


「うわあっ!!」


 闇の球体が左腕に触れる。

 すると、その腕は枯れ枝のようになってしまった。


「~~~~~ッ!!」


 闇魔法。

 それは相手の生命力を奪う力がある。

 あろうことか父はその力を実の息子へと向けたのだ。


「今日はこのくらいにしておいてやる。だが明日からはこれ以上の地獄が待っていると思え! 貴様は我がダクヴェルム家の面汚しだ!!」

「そ、そんな……」


#


 父――ダルヴェンディ・ダクヴェルム。

 彼は有言実行の男だった。


「今日からここがお前の部屋だ」


 連れられてきたのは地下室。

 そこは牢獄のような場所で、怖かった。


 ところどころに亀裂が生じ、天井からは水が滴っている。床には黒い物体が蠢いていたが、よく見てみるとそれは大量の虫だった。


 窮屈で黴臭く薄ら寒い。

 そんな劣悪な空間に俺は閉じ込められた。

 父は邪悪な笑みで魔法の杖を構える。


「ククク。私の闇魔法はモノを出し入れすることが可能でな。今から排出するのは【焼痛】だ。お前は焼かれる痛みを知らないだろう? お前はソレ(・・)を味わうことになるのだ」

「【焼痛】だって? どうしてそんな酷いことをするの。お願いお父さん、やめてよ。いい子にしますから。お部屋の掃除だってするしお皿洗いもする。お母さんの肩だって叩くしお父さんの言うことも聞きます。だからお願い、痛いのはやめて」

「黙れ」


 子供でも分かる侮蔑の眼差し。

 そして嫌悪に満ちた声色。


「安心しろ。これは痛みを疑似的に与える魔法であって、本当に肉体を焼くわけではない。つまり跡が残ることも無ければ皮膚組織が破壊されることもない」


 齢五歳ながらに俺は思った。

 なんて残酷な魔法なんだと。


 傷跡が残らない。

 それはつまり肉体を損壊させないということ。


 その気になれば、いくらでも拷問できる。

 それが闇魔法の真髄。

 まさしく、闇の力。


「う、あぁ」


 ジュッ!

 

 先ほどまでの発言。

 その全てが嘘偽りなんじゃないかと思うほどの苦痛が全身を襲う。


「あぎゃぁああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」

「フン、自業自得だ。このダクヴェルム家に生まれておきながら属性無し(・・・・)。ハッキリ言うが、殺されないだけ有難いと思え」


 明日は別の痛みを与えるからな。

 その言葉の後、重厚な鉄扉は閉じられた。


「あ、あ” あがががああああ、ぐぎ、ぎぃ、ぎゃああがあああああ、がはぁっ!!」


 ああああ、熱い!

 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!


 ああ、僕が何をしたの。

 なんで、どうして!

 どうしてこんな目に……。


「ぎゃが、が、あああああああああああああああああああッ!!」


 いつまで経っても絶叫が止まらない。

 まるで全身の皮膚を剥がされているみたいだ。

 焼かれるというのはこんなにも痛いのか。こんなにも苦しいのか。


「ごめ、なさ……。もう、悪いこと、しま、せんから。だか、ら、許して……」


 誰にも聞こえない。

 そうと知りつつも、謝罪の言葉を口にする。


 当時五歳。

 軟弱な俺にできたのはそれだけだった。



 翌日。

 父は俺の左腕に回復魔法をかけた。

 俺は希望の眼差しで父を見上げた。


「許してくれるんですか?」


 敬語になったのは、屈服の証。

 本能が、この男には逆らうなと警笛を鳴らしていた。


「許すはずがないだろう。だが世の中とはいつ何時なにが起こるか分からない。万が一の時に備え、傷跡は残さないほうがいいと思ったのだ。それに私の魔法は存在しない部位には【痛み】を与えられないからな。……ククク、喜べ。今日からは左腕も【痛み】を感じることができるぞ!」

「う、うぅ。ご、ごめんなさい! もうしません。もうしませんから許してください!!」


 叫びながら、俺は自分で自分が何を言っているのかよく分からなかった。


 だってそうだろう。

 悪いことなどなにもしていないのだ。

 なのに、なにを「もうしません」なのか。

 言葉に脈略がなさすぎるではないか。


「クハハッ! 誰が許すか。喜べ。今日の痛みは【刺痛】だ。剣で刺される時の苦痛を味わうことができるのだ!! 最高だろう」

「いっ、嫌だぁぁぁああ! お願いします! やめて、お父さんやめて! このとおりです、謝りますから!!」

「黙れ! この程度で済んでいることを有難く思うんだな!!」


 グサッ!!


「ひっ、ひぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!! ぃいたいいいいぃいい!! いたいよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

「何度も言うがこれはお前が招いた事態なのだ。そのことを痛みと共に魂に刻めッ!!」


 地獄は、まだまだ続く。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ