912話 魔族との決闘
サラは周囲を警戒しながら疑問を口にする。
「それにしても魔族の行動が早すぎますね」
「ぐふ、確かにな。私達の居場所を知ったのは昨日のはずだ」
「ですねっ」
「たまたま近くまで来ていたか、転送陣があるのかもな」
「あるいはテン・イーを使えるものがいるかだ」とヴィヴィは心の中で呟いた。
エリアシールドは魔力を消費し続けるので持久戦はリサヴィに不利だ。
守るべきもの、ピグウがいなければ強引な行動が取れるのだが、魔族の目的が時間稼ぎであればリサヴィの足であるピグウを真っ先に狙ってくる可能性が高い。
「サラさんっ、そろそろ代わってくれませんかっ」
「そうですね……!!」
サラがそう返事した時だった。
リオ達の前に三体の魔族が姿を現した。
「向こうが痺れを切らしたようだな」
リオが無表情で呟いた。
魔族は三体とも人型だが完全な人ではない。
体が青かったり、角や牙、手首付近から鉤爪が生えているなどなど。
彼らには共通して翼が生えていた。
それでリオ達は魔族達の移動が早かった理由に気づく。
彼らの一体が話しかけて来た。
既に言葉を話す魔族を見ていたのでサラ達が驚くことはない。
「我らは魔王ンベイ様に仕えるものだ」
魔王、と口にした瞬間、リオが不機嫌な表情になったがその魔族は気づかず続ける。
「リオ、四天王の敵討ちだ。お前に決闘を申し込む」
彼らはリオが戦バカであるとの情報を得ており、それを利用することにしたのだ。
「決闘だと?」
「そうだ。当然だが我ら三人を同時に相手してもらう」
「なんかっクズみたいなこと言ってますねっ」
「自分勝手過ぎですね」
「何を言うか。我らより力ある四天王を破った者に一対一で勝てるわけがないだろう」
情けないことを口にするがリオとの力の差を十分に理解しているとも言える。
いや、ニ線級がたった三体でリオに勝てると本気で思っているのであれば十分理解しているとは言えないか。
「もちろん断っても構わない。気が変わるまでじっくり待たせてもらうだけだ」
その言葉を聞き、リオ達は彼らの真の目的が足止めであると確信した。
その間に魔王ンベイは何かを仕掛ける気なのだろう。
「いいだろう。受けてやる」
「リオ!?」
「じっとしているのに飽きた」
「ちょっと待ってください!これは罠です!パーティを分断するための!」
「だろうな」
「わかってて誘いに乗るのですか!?」
「興味あるじゃないか。下っ端が小細工でどこまで頑張れるのか」
下っ端呼ばわりされた魔族達が怒りでピクピク体を震わせるがなんとか自制に成功した。
リオが続ける。
「それにだ」
「なんですか?」
「俺がいなきゃ何も出来ないのなら、いないのと同じだ」
「リ、リオ!?」
魔族がサラ達の会話を強引に断ち切り決闘話を進める。
「話はついたようだな。ではついてこい」
彼らはリオ達に無防備に背中を晒す。
リオが不意打ちするとは微塵も思っていないようだった。
それだけリオが戦バカであるという情報を信じていたようだ。
彼らの背にリオが待ったをかけた。
「その前にそいつらはどうするんだ?」
そいつらとはサンドクリーナーのことだ。
魔族がチラリとサンドクリーナーに目をやってから言った。
「好きにしろ。決闘とは無関係だ」
「そうか。じゃあ始末は任せる」
リオがサラ達に向かって言った。
「はいっ」
真っ先に返事したのはアリスだった。
「えっ?アリス?あなたがサンドクリーナーと戦うのですか?」
「そうですよっ」
アリスは不満顔で理由を述べる。
「さっきはピグウから落っこちるってっ、とてもわたしらしくないところをっリオさんに見せてしまいましたからねっ!」
「「「……」」」
そう思っていたのはアリスだけだがそのことを口にする者はいない。
アリスが続ける。
「わたしがっ役に立つことをしっかりとっリオさんに見せないとっ」
「ぐふ、なら私も名誉挽回しないとな」
「じゃあ、サラさんっわたしがっエリアシールド解いたらピグウ達をお願いしますっ」
「……わかりました。私がピグウ達を守ります。ですが危険だと思ったら救助を優先します」
最悪の場合、ピグウを失うかもしれないがパーティメンバーの命には代えられない。
ところで、今のリオのメイン武器は魔道具ではないただの剣だ。
魔族相手には心許ない。
しかし、リオはラグナを使えるからかヴィヴィにナンバーズだけでなく魔道具のポールアックスすら要求しなかった。
いざとなれば魔族すら自殺させる強力な魔道具である洗脳の指輪も持っている。
それを使うことはないだろうとサラ達は思っていたが。
とはいえ、サラはそのまま行かせる気はなかった。
「リオ、魔法をかけさせてください」
リオはサラの願いを聞き届けて剣を抜く。
それにサラが強化魔法をかけた。
その様子を魔族達は不機嫌そうな顔で見ていたが三対一の決闘を申し込んだからか抗議の声は上げなかった。




