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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第5部 旅の終わり編

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908/915

908話 異端審問機関の密偵

 国々は不可侵条約を結んでいるが相手を完全に信用している国など一つもない。

 かつては一つの国であり、兄弟国でもあるエル聖王国とローラン公国ですらそうなのだ。

 そのため、各国は隣国その他へ密偵を送り国内情勢を調べていた。

 ジュアス教団は国ではないが教団に敵対している、あるいはする可能性のある国や組織へ密偵を放っていた。

 その一つがカルハン魔法王国である。



 ウォルティス教の神官アーヴィスは一人で村を歩いていた。

 一人で行動する建前は村人にウォルティス教の入信の勧めるためだ。

 それでパーティメンバーに不審を抱かれることなく別行動ができた。


「……ニセモノですか」


 アーヴィスは思わず呟いた言葉にはっ、として周囲を見渡すが幸い彼の独り言を聞いていた者は一人もいない。


(私としたことが……リオの言葉に思った以上に動揺しているようですね)


 アーヴィスはジュアス教団の異端審問機関がカルハン魔法王国に送り込んだ密偵の一人であった。

 だが、ウォルティス教の神官というのは嘘ではない。

 正しい手続きを経てウォルティス教に入信した。

 カルハン魔法王国と異端審問機関が戦いを起こす前の話である。

 彼は密偵であることを疑われないよう入信して三年後にウォルティス神から魔法を授かったことになっている。

 その実は六大神から授かっていた魔法をあたかもウォルティス神から授かったかのように振る舞ったのだ。

 この嘘は案外バレない。 

 かつてベルダの街でクズ集団プライドを結成したBランククズパーティにジュアス教団の神官がいた。

 彼はメイデス教に改宗していたがそれまでに六大神から授かった魔法を失うことはなかった。

 神が寛大なのか、いい加減なのか、一度与えた魔法を取り上げられないのかは不明である。

 詳しく調べようとした者がいないからだ。

 アーヴィスの当初の任務はカルハン国内で少しずつ勢力を伸ばしつつあったウォルティス教がメイデス教のような邪教かどうかの調査であった。

 上層部から問題なしとの判断が下り、彼の任務は終了して教団へ帰還する予定であったが変更を余儀なくされる事件が起きた。

 カルハン魔法王国と異端審問機関との戦いである。

 アーヴィス自身はこの戦いに参加していない。

 ウォルティス教への潜入任務中だったため静観していた。

 参戦命令もなかった。

 この戦いに異端審問機関が破れたことで帰還命令は取り消され、新たな命令が下された。

 ウォルティス教の神官として探索者となりカルハン国内の情勢を定期的に報告せよ、と言うものだ。

 アーヴィスが狩猟船ザッパー号でサラ達をさりげなくフォローしたのは同じジュアス教団だったからである。

 更にもしかしたらジュアス教団から新たな命令を持って来たかもしれないと思ってのことだった。

 サラやアリスが異端審問官である可能性は限りなくゼロに近いが、本人達が知らぬままに暗号化された伝言や命令書を預かっている可能性は否定できなかった。


(確かにウォルティス神から授かった魔法がないのですからニセモノと言われても仕方がないですね)


 リオは明言したわけではないがアーヴィスは他にニセモノと言われる心当たりがない。


(リオは未来予知をしたのでしょうか?それで私の正体を知った?)


 そうだとしてもサラやアリスの対応を見る限り話してはいないようだ。

 アーヴィスは考えても答えが出ないので頭を振って外へ追いやる。

 誰もいないことを再度確認して懐から指輪を取り出した。

 一見すると何の変哲もない指輪に見えるが小型の魔道具“こそこそくん”であった。

 密偵用に開発された魔道具でキーワードを唱え自分の魔力を送ることで通信が可能となる。

 ただし、連絡相手が誰かを避けるため一方通行だ。

 もし、発信者に伝えることがあれば別の手段を用いることになるのは先に述べた通りだ。

 アーヴィスは聞いているであろう相手に向かって定期報告をする。

 これまでのことを話し終えて最後にサラ達のことを報告する。

 アーヴィスは村人達にウォルティス教への勧誘をしながら(本気ではない)、さりげなくサラ達がどんな話をしていたか聞いていた。

 その中に興味深いものがあった。

 サラ達が助けた兄弟が魔族について話しているのを聞いたというのだ。

 更に魔族と出会ったことはないかと尋ねてたらしい。

 そのことと関係しているかは不明だが早く探索者ギルドか冒険者ギルドのある街へ行きたがっていたという。

 アーヴィスは報告を終えて皆の元へ向かった。



 アーヴィスは知らなかった。

 彼のこの報告が後にソドムラ大虐殺へと繋がることを。


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