907話 リオとアーヴィス
「シャイニングクリーナーが“餌”目当てに戻ってくるかもしれないから俺達はこの村に二、三日滞在するつもりだがお前達はどうする?」
「私達はこの後、出発するつもりです」
「そうか」
そこでサラはあることを思い出しリーダーに相談することにした。
「もし時間がありましたら村の人達に剣の稽古をつけていただけないですか?」
その後に「無償で、ですが」と付け加える。
「なに?それはどういう意味だ?」
サラはリーダーに昨日やっていたことを話す。
話を聞き終えたリーダーが呆れた顔をしながら言った。
「サラ、お前はお人好し過ぎないか?それともこれは……」
「勧誘ではありませんよ」
サラがリーダーの次の言葉を予期して声に出される前に否定する。
「先読みされたか」
リーダーが苦笑いした。
「そもそもこの村はかつて異端審問官に襲われたことがあるらしいのです」
「そうなのか」
「ええ」
リーダーは人がいいのだろう、笑顔で了承した。
魔装士がヴィヴィのそばにやって来た。
「ぐふ、ヴィヴィ」
「ぐふ?」
「ぐふ、時間を少しもらえるか?ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ぐふ、いいだろう」
魔装士は話を聞かれたくないのか店の外に出ていく。
その後をヴィヴィがついて行った。
魔装士は周囲を軽く見回して近くに人がいないことを確認してから声を落として話を始める。
「ぐふ、そのなんだ、変なことを聞くようだが、ここ最近、魔装具の調子はどうだ?何か変なことないか?」
ヴィヴィは彼が何を言いたいのかすぐに察した。
魔王メギドがリオに倒されたことによりカルハン魔法王国の領土を覆っていたバフが消えた。
その恩恵を受けていたカルハン製魔装具はもろに影響を受けて能力が下がった。
彼はそのことを言っているのだと。
ヴィヴィは何知らぬ顔で頷いた。
といってもその顔は仮面で見えないが。
「ぐふ、実は最近動きが鈍くなった」
「ぐふ!やっぱりか!実は俺もなんだ!」
彼は先のシャイニングクリーナー退治に失敗した要因が自分に“も“あることを悔しそうな顔をして話す。
とは言っても彼の顔も仮面で見えないが。
ちなみに先の絡んできた魔術士もいつもより魔法の威力が落ちており、シャイニングクリーナー討伐失敗の一因であった。
そう、あの魔術士は思う通りの魔法の効果が出なかった八つ当たりをサラ達にしていたのである!
ちなみに彼は深読みせず自分の調子が悪かっただけだと思っていた。
ヴィヴィがリムーバルバインダーを装備していない方の肩を指差す。
「ぐふ、私は気づくのが遅れてこのザマだ」
それを見て、魔装士は自分の方が異変に早く気づけたと知り不謹慎も嬉しくなった。
だが、そのことをおくびにも出さない。
と言ってもその顔は仮面で見えないのだが。
ヴィヴィが続ける。
「ぐふ、私のは中古だからどのくらい使用しているのかわからない。だから寿命が近付いているのだろうと思っていた」
「ぐふ、二人同時にとなると流石にそれは考えにくい。それにな、俺は魔法も使えるんだが、魔法の方も弱くなっているんだ」
彼のパーティの魔術士も魔法の威力が落ちていたことを付け加える。
ヴィヴィは内心「大して親しいわけでもないのに内情をペラペラ話しすぎだろ」と思ったものの口にはしない。
魔術士のことを話す時の態度からあまりいい感情を持っていないのだとわかる。
パーティを組んでいるからといって仲がいいとは限らない。
(まあ、あの性格なら納得だがな)
そんなことをヴィヴィが考えているとも知らず魔装士は首を傾げて言った。
「ぐふ、一体何が起きたんだろうな」
「ぐふ」
ヴィヴィも「全くわからない」という顔で同じように首を傾げた。
やっぱりその顔は仮面で見えなかったが。
リオは一人先にピグウ達の元に来ていた。
「リオ」
リオは背後から声をかけられ振り返った。
そこにはウォルティス教の神官アーヴィスが立っていた。
「あなたと直接話すのはこれが初めてですよね。実は最初会った時から一度あなたとは話してみたかったのです」
「……」
リオはじっとアーヴィスを見つめたまま一言も話さない。
最近、表情が豊かになったが(あまりいい表情ではないが)この時のリオはまた昔の無表情に戻っていた。
それを見てアーヴィスが不安そうな表情をする。
「あれ?もしかして、私はあなたに嫌われていますか?あなたに嫌われるようなことをした覚えはないのですが」
アーヴィスの問いにリオは表情を変えずに言った。
「俺はニセモノが嫌いだ」
リオの思いがけない言葉にアーヴィスは唖然として次の言葉がすぐに出てこなかった。
「……ニセモノ?私がですか?」
なんのことかさっぱりわからないと首を傾げるアーヴィス。
そこへアリスがやって来た。
アーヴィスと一緒にいるのに気づき、ダッシュするとリオを背後に庇うように両手を広げてアーヴィスと対峙する。
「あの……」
「させませんっ!」
「……何がでしょうか?」
アーヴィスが困った顔でアリスに尋ねる。
「あなたの魂胆はわかっていますっ」
「はい?」
「リオさんを勧誘する気ですね!ウォルティス神も勇者を誕生させることができると聞いたことがありますっ!」
「ああ」
アーヴィスは笑顔で否定する。
「確かにそうですが、私にそのつもりはありません。ただ、リオと話をしたかっただけなのです」
そこへヴィヴィとサラがやってきた。
「私の話は終わりましたのでこれで」
アーヴィスはそういうとその場から離れた。
「おーい!」
村から去るサラ達の背後から呼びかける者がいた。
振り返るとあの兄弟が立っていた。
弟は素直に両手を振っていたが、兄は複雑な表情をしながらも、手を振りながら「ありがとう」と言った。
アリスが手を振り、サラが頷く。
ヴィヴィは振り向くことはなかったが軽く腕を上げて応えた。
リオは全く無反応であった。




